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自由土地論から

:: Morino,Eiichi

自由土地論については、ゲゼルに始まるフェミニズムと密接な関係があり、もっと取り組まれるべきだと考えています。土地の価値、土地地代が成立するのは、ひとがそこに集まり、母と子がはぐくまれ、社会が持続維持されるからこそで、であれば、土地の保有自体から生まれる地代はすべて、母と子の持続維持にあてられるべきで、それを具体的に推進するムッターシャフト、母親同盟、より抽象的には母性体が使用すべきだというのです。

もちろん、地代ばかりでなく、社会経済の活動の結果、保有していた土地が増加するような場合も、例えば交通が便利になって土地の価値があがったような場合には、その増価分は所有者の無為に報いられるべきではなく、これまた母親同盟に収納されるべきなんです。

ひとが集まり経済活動が行われる限り、優良地からだれも利用しようとしない土地まで、土地に差が生まれます。誰も見向きもしない土地は限界地ですが、これを基準に、優良な土地はその程度に応じて地代が成立していきます。しかし、人間とその社会が存在しなければ、そーした土地の間の差別など存在しないわけですから、経済社会を根本からなりたたしめている母子にこそ地代に対する権利があるといえるわけです。

理解されにくかったこと

貨幣の購買力と貨幣の通貨単位における減価(消滅貨幣)との関係ですが、消滅貨幣で、100円の通貨が10%減価して90円になるとしても、しかし100円で買えるものは100円で購入でき、90円で購入できるものは90円で購入できるんです。財やサービスの価格に変化はないわけです。

ポイントは貨幣に持ち越し費用をかけることと、貨幣の購買力の安定とは矛盾しないということなんですが...

一見すると、インフレで100円が90円の購買力しかないほどに減価してしまった、そして、消滅貨幣では持ち越し費用で90円になった、両方とも、90円の購買力しかなくなったと、貨幣の保有者のサイドでは感じるわけです

そして実際に保有者はいずれの貨幣を使用する場合でも90円のものしか購入できないわけです(でも、インフレの場合はあいかわらず額面100円のままの通貨で90円の買い物をしているのに、消滅貨幣の場合は10円のスタンプを負担したわけで、いわば、100−10=90円の額面価額の通貨で90円の買い物をするわけです)。

これが同じに見えてしまうのは貨幣保有者の眼からみているからそうなわけです。財やサービスで尺度した貨幣の価値をみてみると、インフレの場合は、貨幣の価格は100円から90円に低下しているのに、消滅貨幣の場合は100円は100円なのです。持ち越し費用をスタンプを貼付することで負担した貨幣保有者は所有する貨幣額を減らしただけで、貨幣一単位あたりで購入しうる財やサービスの価格に変化は発生していないわけです

つまり、消滅貨幣をすみやかに使ってしまって、持ち越し費用を回避しようが、スタンプ代を負担してまで貨幣を保有し続けようが財やサービスの価格に変化を及ぼさないということです。

反対にインフレは貨幣価値に対する財やサービスの全般的高騰を意味します。そこでひとはインフレ耐性のある資産へと保有貨幣を振り向けるようになります。そして、インフレはインフレ利得を、資産保有者などの社会の特定の階級や国家にもたらします。それはより資産を持たない者から持つ者への富の不当な移転を促進します。富者には棚ぼた利益を、貧者にはいっそうの貧困を、というのがインフレの帰結です。したがって勤労による所得で生きる者には通貨の、つまり貨幣購買力の安定がどうしても必要です。

インフレから逃れるのは貧者ほど困難です。富者はインフレを利得の機会とします。消滅貨幣から逃れる(つまりスタンプを貼付しなければならない期日以前に貨幣を使ってしまう)のは貧者ほど容易です。富者は消滅貨幣を貸付や投資に振り向けることで(つまり投資先に持ち越し費用を負担させる)回避することができますが、消滅貨幣は金利水準を格別に引き下げる効果がありますから、純粋に、富(貨幣)の所有に由来する利益をあげる機会を減らすことになります。

貨幣購買力の安定は取引における貨幣価値変動のリスクを減少させますから、貨幣需要者により低廉なコストでの貨幣供給をもたらし、これに貨幣課税(消滅貨幣)の手法が加われば貨幣保有者の特権としての利子要求額はゼロから、例えば、貨幣に課される持ち越し費用額の比率が4%であれば、−4%を下限とする範囲に突っ込む可能性すら与えられます。

貨幣使用を遅らせれば遅らせるほど、貨幣の価値が上がる(貨幣購買力が増える)デフレの時期は、消滅貨幣の手法が強まる貨幣保有に水を浴びせ、貨幣購買力の安定(財やサービスの価格の下落の阻止)をも実現します。したがって、強力なリフレーション効果を発揮しますが、単なる紙幣増発などのリフレーション政策と異なるのは、消滅貨幣は資産格差を拡大するようなインフレ策ではないという点にあります。

ところで、貨幣購買力の安定はいわゆる「労働全収益権」の必要不可欠な条件なのですが、別の機会にお知らせします。

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