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急かされるということについて

:: Morino,Eiichi

[gesell2759]急かされるということについて
急かされるということについて森野です。
地域通貨はゼロ利子のシステムで運営されているところが多いようです。
マイナス利子ではかえって支出を急き立てられることになるのではないかという意見もあります。
そこで、ゼロ利子とマイナス利子について、そして急かされるということについて考えてみます。
特殊な例外を除いて、この世のものはすべて減価します。
人間を例にとってみます。
ひとは歳をとり、つまるところ死にます。
もし人間がゼロ利子の存在であるとすると今日の美貌は明日の美貌でもあります。
化粧の必要もありません。
しかし老化します。
そこで、人間にはプラスの利子が成り立つかのごとく、化粧にはげみます。
しかし10代の肌にはかないません。
ゼロ利子がなりたつのであれば、もう化粧の必要はありません。
数千年後も同じ美貌なのですから。
ひとはなぜものごとをなそうとし、成就しようと望むのでしょうか。
死ぬからだと思います。
しかし、もし、今日しようとすることが千年後にしても二千年後にしても同じであれば、人はおそらくなにもしないかもしれません。
そこには永遠のアンニュィがあるのかもしれません。
ゼロ利子は永久に待たせ、待つことができる世界です。
これはお金だけに成立します。
実はゼロ利子は現金が成立させている世界です。
現行のお金のシステムではこのゼロ点を底にして、プラスの金利の世界が広がっています。
永遠の素肌に満足できず、厚化粧を求める世界です。
そしてある人の厚化粧は誰かの肌の削り取られていることも意味する世界です。
この削り取りは、ゼロ利子の現金が潤沢に存在しないことによっています。
現在の金融システムのなかで、貨幣需要にはプラスのコストがかかる貨幣供給が対応し、貨幣供給の希少性の代価が成立しています。
これは利子の二階部分でした(IイコールLプラスRのRの部分)。
つまり貨幣供給には水道の蛇口があってそれを開けたり締めたりする資本主義のシステムが存在するわけです。
この部分は、地域通貨をやると、解決されることがわかります。
お金は取引に密着していて、取引のさいに取引者によって生み出すことができるからです。
そのことによって地域通貨は、会員たちが化粧せずとも若さをたもちうるゆとりを提供します。
しかし、地域通貨のプラス残は通貨以外は皮膚に皺がきざまれていくのに皺とは無縁です。
会員誰でもが取引しようと思えば取引に必要な通貨が生み出せるのですから、現行のお金のように取引動機に基づいて貨幣を保有しておこうという意味での保有は消滅します。
ただ予備的、また投機的動機は存続し続けます。
なぜなら、地域通貨で残を持ち続けることには優位性があるからです。
ただそれは通常の通貨に比べれば比べものにならないくらい軽微なものでしょう。
他のメンバーは貨幣需要が自動的に貨幣供給を生み出すリングのなかにいるからです。
しかし、永遠の若さは、ある代償のうえに成立しています。
待つ余裕は他のメンバーとリング全体に負荷をかけることで成立するからです。
なぜなら、永遠の若さはリングが成立し、その会員であることによって成立するからです。
待つ余裕は待たせる余裕でもあります。
そしてプラス残で持ち続けることは、会員が幾ばくかリング全体という「協同の倉庫」への貢献を相互に促し合う契機を否定することで成立しがちです。
誰でも永遠に死にたくないと思うかもしれないからです。
マイナス利子は待たせる余裕を共同への貢献に変えると思います。
そして永遠の若さは存在しないと知ることで、時の経過に関連した減価を受けるものが協同の文化的遺産として実質的な豊かさとして存在するのだと認識されることになると思います。
実は利子の零点の底を割らないと、ゼロ利子で始まる地域通貨の意義も見えてこないのではないかと考えています。
マイナスの利子分は共同の倉に入ります。
それは個々の会員のものであると同時にリング全体のものでもあります。
それはプラス残をもたないものに無償で給付され、支給された「若さ」は使われることによって、全体への貢献となるはずです。
[gesell2763]急かされるということについて(2)
森野です。
急かされるということについて(2)利子の二階部分はプルードンのいう信用の相互性、ないし無償信用、つまり相互に自己の取引手段に利子を課さないか、あるいは相殺することで除去されます。
しかし一階部分、つまり基礎利子ないし流動性プレミアムは消滅しません。
取引相手はゼロコストの支払手段を交換リングの会員であることで都合がつけられます。
しかし実際に取引が成立するまでは、歳をとるものと歳をとらぬものを持つ会員間で不平等が存在するのです。
流動性プレミアムはいまよりもゼロに近づくでしょうがゼロにはならないのです。
これが、交換リングで「本部」からの会員の地域通貨の借入がなぜ必要になるのかの、_ひ_と_つ_の理由です。
もう一つの理由は取引者たちが、各自のマイナス残をチェックしあうことで、その人間の実質的な信用をチェックしあうからです。
このプレミアムは地域通貨という輪が提供している「若さ」です。
リングは「老い」のシステムでこの「若さ」(地域通貨の基礎利子部分)を収納し、あるいは会員に持ち寄らせ(梅園のいう余資の持ち寄り)、共同の倉を作ります。
つまり待ち、待たせる余裕は私的にではなく協同のなかで成立することになります。
地域通貨のもたらす余裕がそこに出現することになります。
ゼロ利子だけでは、現金取引の関係がもたらす世界とどこが違うのかという問いに十分答えることはできないと考えています。

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