GRSJ HOME < ライブラリー
ISLAMIC_BANKING02

::

ISLAMIC_BANKING01

森野です。

26日に賢治の学校さまで経済における協同主義的な
各種の取り組みを報告する予定です。歴史的に、また
現在の状況において、どんな取り組みがあり、その意
味するところを報告できたらと考えています。こうし
た取り組みは他方で通貨改革のような貨幣システムに
おける変革との連携が存在しなければたんなる資本主
義のなかの非資本主義的サブシステムとして資本主義
の景気変動という攪乱的側面をかえって支える性格を
もってしまわざるをえない性格があり、そうでない場
合は資本主義の大海のなかで異質的経済構造として十
分に資本主義的経済関係と共存しうる性格をもってい
ます。
 ここらあたりをいろいろ紹介しつつ、貨幣改革との
接点になりうるオルタナティブな金融のあり方まで概
略的に報告したいと考えています。そんなわけで、い
ま各地で関心の高い、イズラーム銀行の取り組みにつ
いても言及するつもりですので、手頃な文献を、数回
にわけて事前に紹介しておきます。

........

イズラーム銀行

モハメド・アリフ(マラヤ大学)
Asian-Pacific Economic Literature
Vol. 2, No. 2 (September 1988), pp. 48-64

イズラーム銀行は多くの観察者を驚かせた新しい現象である。
銀行制度全体がイズラーム化されてきたのはイランとパキス
タンであったが、さらにおよそ30のイズラーム銀行が存在
し、他の地域で業務を展開しており、これにはジッダに本拠
を置くイズラーム開発銀行(IDB )や数多くのノンバンクの
イズラーム銀行が含まれる( Appendix 参照)。また、イズ
ラーム銀行が出現してきたスピードやその発展はこれらを系
統的に研究するに価値あるものにしている。 この論文ではイ
ズラーム銀行に関する、増え続ける文献を追跡し、イズラー
ム銀行の成長と発展を描き上げ、その重要な特徴を明らかに
しようと試みるものだ。

進化

 現代的な、最初のイズラーム銀行の実験はイズラームのイメー
ジに反することなしに、また政治体制に嫌悪されるイズラーム
原理主義の発現とみられる恐れをなくして、エジプトで着手さ
れた。この先駆者的な努力は、アーマド・ナジャールによって
指揮され、1963年に利益分かち合いに基づく貯蓄銀行の形
態でエジプトのミットガムールの町で開始された。この実験は
1967年まで続いたが、そのときまでに同国では類似の銀行
9行が設立された。
 利子を請求し、また支払いもしないこうした銀行は、直接に
か、あるいはパートナーシップの形態で、ほとんどの商工業に
投資を行い、その利益を預金者と共有した( Siddiqi l988 )。
 したがって、これらは本質的に商業銀行としてよりむしろ貯
蓄-投資機関として機能した。ナセル社会銀行は、l97l年にエ
ジプトで設立され、その約款でイズラームあるいはシャリフ(イ
ズラーム法)に言及してはいなかったが、無利子の商業銀行で
あると規定された。

ISLAMIC_BANKING02

 イスラム開発銀行(IDB)はイスラム諸国機構
(Organization of Islamic Countries)( OIC )
がl974年に設立した。これは参加諸国におけ
る開発プロジェクトへの資金提供を主たる目的
とする国際的な銀行であった。IDB は参加諸国
に対する融資サービスのコストを負担し、金融
利益配分方式で融資を実行した。IDBの業務は無
利子であり、明示的にシャリアー( Shariah )
の原則に基づいている。

 70年代に、多くのイスラム諸国で政治状況が
変化したので、イスラムの金融機関を設立するこ
とを隠し立てする必要がなくなった。多くのイス
ラム銀行が中東で設立された。例えば、ドバイイ
スラム銀行 (Dubai Islamic Bank) ( l975 )、
スーダンのフェイサル (Faisal) イスラム銀行(l977 )
エジプトのフェイサルイスラム銀行( l977 )、
バーレーンイスラム銀行 (Bahrain Islamic Bank)
( l979 )である。

 アジア太平洋地域では変化は明白なものではなかっ
た。1973年に設立されたフィリピンのアマナー銀
行 (Amanah Bank) ( PAB )は銀行の約款ではイスラ
ムに基づくことに言及していないが、特別な銀行業と
して政令に基づき設立された。これはフリピン南部に
おけるイスラム教徒の反乱に対してイスラムコミュニ
ティの特別な必要を満たすためとして認められたもの
である。

 PAB の主要な業務は南部のミンダナオやスル、パラ
ワンで住民の更生と再建を支援するものであった
( Mastura l988 )。PABは南部イスラム地域の主要
都市8か所の支店を開設した。この数字にはマカティ
(メトロ・マニラ)のそれも含まれる。本社はミンダナ
オのザンボアンガにある。しかし PAB は、厳密な意味で
イスラム銀行ではない。利子に基づく銀行業務がイスラム
タイプの金融業務と平行して扱われているからである。も
ちろん預金取引のために、PABが通常の口座とイスラムの口
座という二つの「窓口」を扱うということは魅力的なこと
である。しかしPAB を完全なイスラム銀行に変えていくた
めの努力が進行しているところである( Mastura l988 )。


ISLAMIC_BANKING03

 マレーシアではイスラム銀行はl983年に、なにも先例
がないところで設立された。マレーシア最初のイスラムの
金融機関はメッカとメディナへの巡礼資金を人々が貯蓄す
るのを援助するためにイスラム巡礼者預金会社 (Muslim
Pilgrims Savings Corporation)として1963年に設立さ
れた。l969年に、この組織体は、巡礼者資金管理評議会
に発展し、タブン・ハジとしても知られている。タブン・
ハジ(Tabung Haji)はメッカ巡礼をしたイスラム教徒を意
味するが、シャリアーに従って巡礼志望者の預金を投資する
金融会社の役割を務めていたが、その役割は、ノンバンク金
融機関に限定されていた。しかし、このタブン・ハジの成功
が、マレーシアで完全なイスラムの商業銀行であるイスラム
銀行マレーシア・ベルハド (Bank Islam Malaysia Berhad)
( BIMB )の設立に刺激となった。

 タブン・ハジもBIMB設立時、当初資本金の12.5%にあた
る80百万マレーシアドルを負担した。BIMB は同国のいくつか
の地域で14か所支店を有している。1年に6か所支店を開設し、
l990年までにはBIMB の支店ネットワークを33か所にする計
画が進行中である。また、イスラム教徒が少数派の諸国で設立さ
れたイスラムの金融機関にも注意が払われるべきである。

 70年代に、インドに無利子の貯金・貸付機関の拡散がみられ
た( Siddiqi l988 )。

 1978年には、ルクセンブルクに西欧世界における最初のイス
ラム銀行の試みであるイスラム銀行システム(現在イスラム金融ハ
ウスと呼ばれている)が設立された。同じくデンマークのコペンハー
ゲンには、イスラム銀行インターナショナルがあり、またイスラム
投資会社 (Islamic Investment Company)がオーストラリアのメルボ
ルンで設立されている。


ISLAMIC_BANKING04

原理

イスラムの銀行業務の本質的な特徴はそれが無利子で
あるということである。しばしば主張されるのは、イ
スラム銀行は所得と富のいっそう公正な分配に貢献し、
経済への公正な参加の機会を増大させるということで
あるが( Chapra l982 )、しかし、このことは、
イスラムの秩序においては利子に占めるべき場所がな
いという特別な原理から派生してきている。

 イスラム教はイスラム教徒が利子(リバー)取ったり、
支払ったりすることを、貸付の目的に関わらず、また課
される利子率の程度にかかわらず、禁止している。

 もちろん、高利と利子、消費のための貸付と生産のた
めの貸付を区別しようとする試みは存在した。リバーが
吝嗇な貨幣提供者による高利を指し、近代的な銀行によっ
て請求される利子ではないこと、利子が生産目的の融資
に課されるときリバーは存在しないということが議論さ
れもしてきた。しかしこうした議論は受け入れられるこ
とはなかった。

 少数の反対意見を別として、イスラム教の学者の間で
一般的な合意をみているのはリバーと利子との間にいか
なる相違もないということである。下記に述べるように、
これらの2つの概念は交換可能なものとして使用されて
いる。

 リバーの禁止はコーランの啓示の4か所で言及されて
いる。

 まず、最初の啓示は利子が富から神の祝福を奪うこと
を強調している。 二つ目の啓示は他人に属する所有物の不正な横領と並
べて利子を非難している。

 3番目の啓示はイスラム教徒に自分たちの幸福のため
に利子から離れているように命じている。

 4番目の啓示は利子と取引や強要との間の区別を明確
にするよう命じている。

ISLAMIC_BANKING05

イスラム教徒はただ元本のみを受け取り、
借り手が返済できない場合はこの金額さ
えあきらめる。コーランではさらに、利
子の禁止を無視する者たちは神とその預
言者たちとの戦いに入ると宣言されてい
る。利子の禁止はまたハディス(予言者
の言葉)のなかでも明確に引き合いに出
されている。預言者は利子をとる人たち
だけではなく、利子を支払う者、取引を
記録したり目撃したりする者もすべて同
様に非難し、全員が有罪であると宣告し
た。コーランに先立つ教典でも、類似の禁
止令が述べられているかもしれない。

 イスラム教が成功裏に、利子の確立を目
指し合法化しようとする試みから身をかわ
してきたことは驚くべきである。学者によっ
てはイスラム教がなぜ利子を禁止するか説
明するために経済上の理由を上げた。

 例えば、生産のコストを事前に決定する利
子は完全雇用を妨げる傾向があると議論された
(Khan)1968, Ahmad n.d., Mannan 1970)。
同様の文脈で、国際通貨危機が利子の仕組み
に原因していることも主張されてきた(Khan,
n.d )。また貿易サイクルが利子現象に相当程
度制約されることも指摘されてきた(Ahmad,
1952, Su'ud n.d)

 しかしこれらの研究はいずれも、利子と、雇
用及び貿易サイクルの間の関連を明確にすること
に成功しなかった。利子に対するイスラムの見解
を正当化することを切望していた別の人間たちは、
利子が資本主義経済においてさえ通貨政策の手段
としてそれほど効率的なものではないことを議論
し、貯蓄と投資の決定因としての利子率の効率性
を問題にした(Ariff,1982)。

こうしたどの議論を通しても共通に出てくる議
論は、論者によってはイスラム教で合法的である
利潤が同じく搾取的であり得ることを指摘したけ
れども、利子の搾取的な性格である。これに対す
る1つの回答は利潤と暴利をむさぼることとは区
別されねばならず、イスラム教は後者を禁止して
いるというものであった。

GRSJ HOME < ライブラリー

2002 Gesell Research Society Japan: All Rights Reserved