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自由土地と母性社会−−フェミニズムの目指すもの−−」 いのちの祭りに寄せて 

:: Morino,Eiichi

「女性は男性から経済的に自立しなければならない。そのことで頼りにする代わりに選ぶことができる。愛情の促すところ、そして隠してきた願望とそれへの衝動に従うことができる。それは人間の自然によい結果をもたらすし、彼女らにふさわしいことを成就させるのだ。人類の本質はこうした方法で発現しうるのである。そうして初めて我々は本当の人間たちをみることができるであろう。(シルビオ・ゲゼル)」

 人はその本来の自然な人間性を社会関係のなかで実現できているでしょうか。私たちは肉体的にも、精神的にも、心理的にも、とても長い期間、病に犯され続けているようです。

父権的な支配システムは女性性と男性性からなる人類を「数千年にもわたって受け継いできた誤った規律で」うち砕いてきているように見えます。  また、人の生きるその土地は、それがもたらすあらゆる豊かさとともに「人類の胎盤」です。しかしこの、人をはぐくむ場所は、地球市民の誰でもが自由に渡り歩き、その出自や宗教や政治信条、肌の色を問わず、どこにでも住居を構えることができる場所ではありませんでした。それが保証されてこそ人間は大地との有機的な結合を達成できるはずなのに。土地は私有され、投機対象の商品ですらあるのです。土地は私的なものから公的なものに変わるべきでしょう。しかし、土地の私有が担ってきた文化的な価値を考えれば、それを一気に収用してしまうことは無理です。

 もちろん私たちには平和的な仕方で納得の得られる公有化の手法があります。土地は、その所有者にして望むならば、国家がこれを買い上げ、その際、土地証券を代わりに支払います。この証券には十分な金利も保証します。ただしその償還は、貨幣保有者がカネの権力を行使できるこれまでの貨幣とは違って、貨幣を保有し続けると課税される減価する貨幣によって行われます。これは痛みなく土地を社会に返却させる方法です。

 貨幣も土地も、現在のシステムでは所有するものに、貸し付けたさいに貨幣利子や土地地代を要求できるようになっています。人は金貨を抱え、土地を背中にしょって母親から生まれ落ちたのではありません。しかし人はただカネや土地を純粋に所有しているという事実だけによって利子や地代という本人の能力にも勤労にも由来しない請求権を社会に要求できるシステムのなかにいます。

 貨幣に権力が生まれる理由は誰もが欲しがるからです。なぜ欲しがるかはそれが常に希少な状態におかれているからです。貨幣が空気のように多量に存在すれば誰も貨幣をかき集めた者に力を認めないでしょう。土地はなぜ値打ちがあるのでしょう。理由は簡単です。他に人がたくさんいるからです。どれほどすばらしい土地でも、人がいなければ無価値です。土地の所有者が貸し付けることで賃貸料を請求するとすれば、それはその所有者に帰属すべきではないはずです。賃貸料収入はただ人口密度に依存しているだけだからです。人口密度を決めているのは、つまるところ子を産み養育する女性です。女性は子を産み、家事労働に従事しているのです。それが土地の値打ちを作りだしているのです。しかし、女性のそうした働きに社会は報酬を支払っていません。土地は人が集まることで、その集合がもたらす利益を土地の値段というかたちで成立させています。これはその発生原因となった者に帰属しなければなりません。それは母親です。 そして成人していくことで土地の値打ちを維持していくであろう子です。土地が公有化されている場合は賃貸料が、いまだ私有のもとにある場合は土地に関係するあらゆる税が、母子に支払われねばなりません。それは母親年金、子供年金のかたちで支給されてもよいでしょう。母親は父親から経済的に自立できます。それは家族の養育のために過剰な労働を強いられる父親をも解放するでしょう。  土地が公有化されていくと、土地には賃貸料の高いところから賃貸料がゼロの限界地(自由土地)まで、用益権を入手するさいに価格の違いが成立するでしょう。母親年金で経済的自立を得た女性は子の養育に専念したければ、賃貸料の安い自由土地に移住できます。仕事と両立を望む場合は若干の地代負担が発生する土地を選ぶことができます。過密と過疎は解消されることでしょう。

 この地球が経済的に自立した自由な女性をみるとき自由な男性もそこにいることでしょう。男女の経済的平等が達成されることで、人は誰かの手段ではなく、目的としての自己を実現する条件に立ちます。社会が母性体として自らを現すとき、本当の人間の自然性が現れ、人はグレート・マザーとしての地球環境に育まれていることを平和な社会のなかで知ることになるでしょう。

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