輸出頼みの生産と支出を切詰める家計

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曽我 純 :

昨年12月の鉱工業生産指数は前月比+3.1%と2ヵ月連続で増加した。出荷は1.1%増にとどまったため、在庫は1.4%増加した。生産がプラスに転じたのは、輸出が昨年8月を底に4ヵ月連続して前月を上回っているからだ。このまま輸出が伸びていけば、生産はさらに上向き、製造業の収益も拡大することになるだろう。ただ、1月上旬の輸出は前年比-6.9%と09年11月以来のマイナスになり、輸出の伸びが持続するかどうか不透明である。企業収益と株式は、輸出の伸びが持続するかどうかに依存しているので、輸出動向から目を離すことができない。

12月の生産に寄与したのは情報通信、電子部品・デバイス、輸送機械などだが、生産は伸びたものの、在庫も増加しており、生産調整も考えられる。薄型テレビの影響で昨年11月まで7ヵ月連続のプラスだった情報通信の出荷は12月、前月比6.6%減少する半面、在庫は14.0%増加した。電子部品・デバイスは出荷も2ヵ月連続のプラスだが、在庫は5ヵ月連続増となり、過剰生産が続いている。輸送機械の在庫は2ヵ月連続増だが、在庫率は4ヵ月連続のプラスとなり、意図せざる在庫増の局面にあるのではないか。財別では耐久消費財と生産財の生産が伸びたが、在庫はいずれも増加し、特に、耐久消費財の動向には注意を要する。

1月の鉱工業生産は前月比5.7%の大幅増、2月は1.2%の低下が予想されている。1月は一般機械や輸送が大幅に拡大する見通しになっているが、はたして予想通りに伸びるだろうか。国内新車販売台数は1月、前年比21.5%減と引き続き大幅なマイナスになっており、この傾向は8月頃まで続くだろう。一般機械は半導体製造装置のウエイトが高く、これによって大きく変動する。12月の半導体製造装置の生産は前月比7.7%減少し、一般機械も1.0%減少したが、1月は拡大するのだろう。前年比で半導体製造装置は99.4%も増加したため、一般機械の生産は32.8%伸びた。鉱工業生産指数は前年比4.6%増加したが、一般機械だけで4.3%引き上げており、半導体製造装置の鉱工業生産への影響は極めて大きい。半導体製造装置と鉱工業生産の前年比伸び率はほぼパラレルであり、鉱工業生産が変化率の大きい半導体製造装置に追随している。

『家計調査』によると、昨年12月の1世帯当たりの消費支出(2人以上の世帯)は前年比3.2%減と4ヵ月連続のマイナスとなり、しかも減少率は09年7月以来、1年5ヵ月ぶりの大幅減となった。エコポイントによって引き上げられていた耐久消費財が落ち込んだことが主な要因だが、それだけとは言い切れない。ウエイトの大きいサービスが9ヵ月、食品は11ヵ月それぞれ連続減となっており、家計の支出抑制の姿勢は強い。

勤労者世帯に限れば、消費支出は昨年11月まで5ヵ月連続の前年比プラスであったが、12月は2.7%減少した。09年、08年の12月も前年割れのため、12月は3年連続減となり、07年12月比7.9%も減少している。消費減の最大の要因は可処分所得の減少である。09年12月は6.4%もの大幅減となったが、昨年12月も1.3%減少し、2年連続のマイナスとなり、12月としては過去10年で最低となった。企業業績は回復しているが、先行き不透明などと理由をつけ、雇用者報酬を上げようとはしない。企業みずから消費を冷やす根源を作り出しており、これでは消費拡大は望むべくもない。

報酬を下げれば企業は雇用を増やすわけでもない。雇用者報酬が減少すれば、消費は控えられ、企業が生産した商品は売れなくなる。雇用者報酬減少分よりも消費減少分が大きいことがますます経済を悪化させる。悪化を食い止めているのが財政赤字と超過輸出であり、支払った税金をはるかに超える額を政府は支出・購入し、海外への支払を受取が上回ることで経済の落ち込み防いでいる状況である。

昨年12月の失業率は4.9%と前月よりも0.2ポイント低下したが、就職を諦め失業者の分類に入らない非労働力人口が増加していることも、失業率の低下につながっている。逆に言えば、労働力人口比率(労働力人口を15歳以上の人口で割った数値、ただし労働力人口は就業者に失業者を加えたもの)は低下し続けており、昨年12月は前年比0.1ポイント低下の59.1%である。2010年は59.6%と3年連続の低下で、10年前と比べれば2.8ポイントも低下してしまった。昨年の就業者数は6,256万人と3年連続の減少となり、10年前に比べれば190万人も減少してしまった。

昨年12月の非農林雇用者数は前年比9万人増と6ヵ月連続のプラスだが、9、10月に比べれば、増加の勢いは衰えてきた。男女別では男の14万人減に対して、女は23万人増加しており、しかも男は減少し続けているが、女は6ヵ月連続で増加している。

米国の失業率は1月、9.0%と前月比0.4ポイントの大幅な低下だ。米国は10代の失業率が25.7%と依然高いため、25歳以上に限れば7.6%に低下する。さらに学歴別では大卒以上は4.2%だが、高卒は9.4%、高校を卒業していない層は14.2%と跳ね上がり、米国は学歴が物を言う社会であることが見て取れる。

失業期間が27週以上の長期失業者は1月、前月比3.6%減少し、雇用環境は徐々に改善しつつある。ただ、失業率の改善は、日本と同じように、非労働力人口に分類される人の増加が寄与しており、手放しで喜べる状況ではない。非労働力人口は前月比0.4%、前年比では2.4%も上昇しており、労働力人口比率は64.2%、前年比0.6ポイント低下した。

日本の昨年12月と比較すると、労働力人口比率は日本が米国よりも5.1ポイント低い。米国並みに労働力人口比率が上昇すれば、現状よりも労働力人口は568万人増加することになる。日本は人口が減少しているので、労働力人口比率を米国以上に引き上げる必要がある。

失業率は改善したが、非農業部門雇用者数は前月比3.6万人増と前月の増加数(12.1万人)を下回った。製造業は4.9万人増と3ヵ月連続のプラスとなったが、サービス部門が3.2万人の増加にとどまったため、民間部門も5.0万人と前月より大幅に増加数は減少した。建設部門は依然減少しており、1月は545.5万人と1996年4月以来、約15年ぶりの低い水準となり、ピーク(2006年4月)からは227万人も減少してしまった。因みに、日本の建設業の就業者数は12月、507万人と減少しているが、名目GDPが米国の約4割の規模にしてはまだ多いように思う。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2011年2月 6日 18:12.

長期の米株式値上り率、名目GDPを下回る は以前の記事です。

FRBの資産拡大と財政赤字 は以降の記事です。

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