FRBの国債購入による株高はいつまで続くか

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曽我 純 :

昨年11月、FRBは6,000億ドルの国債購入を決めたが、その1ヵ月前から、外人の日本株買いは積極的になり、2月第2週まで連続して買い越している。昨年10月以降の買い越し額は2.4兆円になる。明らかに、FRBの金融緩和措置が外人の日本株買いの契機となり、株価上昇の原動力となった。だが、6月末でFRBの国債購入は終了することから、外人買いもそろそろ最終局面に近づいているように思う。

それにしてもNYダウの上昇力は異常に強く、09年3月の底から2年経過しないうちに、1.9倍ほど値上りした。前回の上昇局面でも同程度値上りしたが、5年を要しており、今回の値上りがいかに急速であったかを物語っている。09年3月の反発要因もFRBの国債等の買い取りであり、FRBの金融緩和策を材料に株価は上がっていった。今回の国債購入は6月末までだが、いまの経済情勢では、FRBの国債購入は必要ではなく、打ち切りとなるだろう。株式買いの主力材料である国債購入が打ち切りとなれば、景気拡大のよほど強いシグナルが発せられない限り、株式上昇の持続は難しい。

FRBは今年の実質経済成長率見通しを昨年11月の3.0%~3.6%から3.4%~3.9%へ上方修正した。上方修正したことは景気の先行きに自信を深めていることであり、これほどの成長を想定していることは、国債購入だけでなく、ゼロ金利政策の変更もあり得る。さらに、足元、名目で4.2%も伸びていながら、ゼロ金利や国債購入を継続する異常な金融政策によって、株式や素材だけでなく物価も反応してきた。1月の米消費者物価指数(コア)は前年比1.0%と前月よりも0.2ポイント高く、昨年5月以来の伸び率となった。2月以降もじわじわ上がるようだと、早い段階でFRBは利上げに踏み切らざるをえない。実質金利がマイナスの異常な状態を断たなければ、株式や商品のバブルは膨れ、08年以降の金融恐慌に耐えた試練や経験が水泡に帰すことになる。

■ 家計は痩せ企業は太る日本社会

GDP統計によると、昨年10-12月期の経済成長率は名目前期比0.6%減と2四半期ぶりのマイナスとなった。マイナス自体めずらしいことではなく、過去10年を振り返れば、しばしばみられる光景であった。消費支出が前期比1.0%減と09年1-3月期以来の減少となったことや公的部門さらに外需までもマイナスになったことが響いた。
自動車販売やたばこの駆け込み需要の反動減が消費を引き下げたことは事実だが、11月までは薄型テレビが急増していたことなどを考え合わせれば、消費の基調は弱いと言わざるを得ない。7-9月期でさえも消費支出は0.3%伸びたにすぎず、駆け込み需要の効果はたかが知れている。減税の恩恵を受けるものは買うけれども、それ以外の消費は削るという姿勢である。

民間部門で寄与度がもっとも高かったのは民間在庫品増加であり、2四半期連続のプラスだ。自動車やたばこの売上減は予想できたことだが、それでも在庫が増加していることは、企業の予想よりも需要は弱いということを示している。

10-12月期の消費を自動車やタバコのせいにし、今年1-3月期以降、成長率は回復するような見方が報じられているが、1月の新車販売は引き続き大幅な前年割れとなるなど、消費不況から抜け出すことは難しいのではないか。それは消費を決定付ける所得が減少しているからだ。10-12月期の雇用者報酬は前期比0.3%減と2四半期連続のマイナスとなり、これが家計の消費マインドを冷やしている最大の原因だ。デフレーターは3四半期連続の前期比マイナスとなり、デフレが和らぐ兆しはみえない。デフレでは消費や設備投資が活発になることは考えられない。デフレ経済では貨幣価値は上がり、ものの価値は下がるので貨幣を貯めることが、もっとも有利な選択になるからだ。しかもいま指摘したように報酬が減少しているので、財布の紐はことさらきつくなる。

10-12月期の名目GDPは金融危機以降の最低(09年1-3月期)を上回っているが、消費支出はそれを下回り、1996年1-3月期以来、約15年ぶりの低い水準に落ち込んだ。国内家計最終消費支出は2008年1-3月期をピークに減少しているが、その間、耐久消費財は5.2%減とサービス(4.0%減)より悪いが、半耐久財(14.3%減)や非耐久財(7.9%減)に比べると、減少率は緩やかである。

暦年のGDPをみると、2009年までの2年間で名目GDPは激減したが、2010年は1.8%の増加にとどまり、回復力は弱い。名目GDPは479.2兆円と昨年より8.3兆円増加したが、2009年を除けば、水準は1991年以来ということになる。さまざまな政策支援があったにもかかわらず昨年の消費支出は前年比1兆円も増加しなかった。これが回復力が弱くなった最大の原因である。民間部門では在庫増加の寄与度が高く、民間設備投資は微増にとどまった。最大の牽引者は外需であり、これだけでGDPを0.9%引き上げた。消費がこれほど弱いのは雇用者報酬が昨年、0.8%しか増えず、悪化する前の2008年を9.2兆円も下回っており、1992年のレベルにとどまっているからだ。

今年度の企業収益は大幅に改善するようだが、これは報酬を低い水準に据え置いているからで、売上の伸びと同程度に給与を引き上げれば、このような増益にはならないはずだ。このような給与抑制と雇用削減を続けることは、同時に需要を削減していることでもある。企業は収益を拡大し太るけれども、家計の取り分は少なくなり痩せていくのでは経済は縮小していくだけである。

昨年4月~12月の上場企業の売上高は前年比7%を超え、経常利益は8割も増えているけれども、同期間の現金給与総額の伸び率は1%にも満たないのである。所定内給与に限ればわずかだがマイナスという酷い状態である。企業は儲けを溜め込み、財務内容は良くなるが、製造した商品が売れなくなるという有効需要の不足を企業自ら演出している。売上高の伸びに比例した分配をしなければ、経済はうまく行かない。不公平な分配から生じた有効需要の喪失は、政府部門の大幅な赤字でもってしても、補えない規模に達している。企業は少なくても、売上高の伸び率に準じた給与を支払わなければならない。そうしなければ、昨年、1%しか伸びなかった設備投資は、深刻な消費需要不足により再びマイナスになり、内需はますます萎んでいくだろう。内需欠乏の墓穴を掘り、外需に頼らざるを得なくなったのは、企業自ら蒔いた種なのである。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2011年2月20日 19:23.

FRBの資産拡大と財政赤字 は以前の記事です。

圧政のリスクを喚起する は以降の記事です。

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