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圧政のリスクを喚起する

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曽我 純 ;

チュニジアのベンアリ政権崩壊がドミノのようにアフリカの独裁国家を揺さぶり、強権政治に引導を渡している。リビアが石油産出国であるため、原油相場が高騰し、これによって景気の先行きに不安が生じ、株式は調整を強めつつある。

先週末、WTIは97.88ドル、前週比13.5%も上昇し、08年9月以来の高値を付けた。特に、米国の個人消費は原油高に敏感であり、これまでも原油が高騰するときには消費がダメージを受けたことが、景気の先行きを暗くした。

景気や企業業績悪化懸念から主要国の株式は売られ、国債は買われ、原油高の影響が米景気により強く働くという見通しから対円・ユーロでドルは売られた。

アフリカ独裁政権崩壊の影響がアフリカだけにとどまらず、アジアなどに波及すれば、そのインパクトは計り知れない。共産党一党独裁の中国にもすでにその兆候はあらわれており、自由を抑圧していたマグマは一気に噴出しかねないし、いずれは大爆発し、独裁体制は滅ぶだろう。

日本をはじめ世界中の企業が中国に進出してきたが、一党独裁で政治、言論に自由のない国へ進出するリスクはきわめて高いことを肝に銘じるべきだ。マルクスによれば下部構造がその他すべてを規定するが、経済よりも自由が高位にあることをわすれてはならない。政権が崩れ、新政権が樹立されれば、すべては没収されることになるだろう。目先の利益ほしさに、みんなで渡れば怖くないという浅はかな考えで、出て行いけば、最終的にすってんてんになってしまうことを覚悟しておかねばならない。

企業は中国の政治支配のようにトップの経営者が権力を握っており、支配している仕組みになっている。中小企業の多くはアフリカの軍事国家のように、すべては経営者の思うままに、経営されているのだ。そのような企業では合理性、効率性とかのものさしは通用しない。トップの顔色を窺いながら、意思決定はなされ、理不尽な意見が通るのである。大企業経営者の権力の振る舞いは強弱あるけれども、権力構造が中国のそれと似ていることが、中国へ躊躇なく進出していることと関連があるように思う。政治体制は問わず、安い労働力を利用して金儲けができればそれでよいというのが、企業の行き方なのである。独裁政権に手を貸していることなど、頭の片隅にもないのだろう。

アフリカの軍事国家が転覆しかけると、欧米諸国は軍事政権を非難するが、それまでは軍需品を供給しながら、軍事政権を支え、政権維持に手を貸してきた。特に、旧宗主国である欧米諸国はいままで軍事政権と結託し、互いに甘い汁を吸ってきたが、軍事政権の是非にはまったく無頓着であった。欧米は民主主義を唱えながらも、アフリカをその程度の扱いしかしてこなかったことを、今回の激変はあからさまにした。

経済の変化は悪くなるときは速いが、今回の政権崩壊のプロセスをみても、政権の変化は激変であり、これに的確に対応することは不可能である。1月半ばにベンアリ政権が倒れ、2月11日にムバラク大統領が辞任しても、株式市場は遠い出来事のように、気に掛けず上昇を続けていた。経済的というか金勘定だけで判断し動いたことの限界が露呈したともとれる。

■ 現行の金融政策はマイナス成長では通用しない

アフリカの圧政が倒れたのは、必需品の価格上昇による困窮を起爆剤とし、抑圧により鬱積していた精神的苦痛から解放されたいという要求が強まったからだ。物価の上昇は弱者の生活を直撃する。小麦やトウモロコシ等の価格の異常な値上がりはぎりぎりのところで生活している人たちを追い込んだ。

素原料材価格の上昇を主導したのは米国や日本の金融政策である。FRBや日銀のなんら根拠のない思い込みによる金融政策が、世界的弱者の生活を追い詰めた。日米の金融政策はまさにカネを世界にばら撒き、投機を後押ししている政策といえるだろう。新興国は金融引き締めに転じているが、経済や金融の規模に大人と子供いやそれ以上の格差があるので、新興国の金融政策では制御できず、防ぎようがないのである。ニューヨークやロンドンなどからホットマネーが津波のように押し寄せてくれば、ひとたまりもなく呑み込まれてしまう。1997年のアジア金融危機の経験はほとんど活かされていない。カネの出入りをチェックするなんらかの仕組みがなければ、小国は大海に浮かぶ小船のように大国のマネーに翻弄されるだろう。

08年の金融危機によりさまざまな改革案が出されたけれども、巨大金融機関、投資信託、ヘッジファンド等のカネの動きを規制する改革は実行されていない。オフショアやオフバランスの勘定なども放置されたままであり、金融機関の実態は依然きわめてわかりにくい。目に見えない部分が大きすぎて、実際のバランスシートでは正体を摑むことができない。こうした正体不明の法人のカネを野放しにしていれば、社会的に好ましいところに投資され、経済が豊かになるのではなく、社会の歪みを大きくする危険性のほうが大きい。為替、株式、商品市場には日々巨額の資金が流出入しており、これらの流れを監視することなどとてもできないだろう。せいぜい取引コストを引き上げるような課税を国際的に導入することくらいの手立てしかない。

米国では6,000億ドルの国債買い取りのプログラムを実行中だが、1月の米商業銀行の商工業と不動産貸付は依然前年を下回っている。これだけ買いオペをしても金融機関から市中にはなかなかカネが出て行かないのである。市中に出回らないことは、こうした買いオペは機能していないといえる。自国経済の拡大に結びつかず、新興国の経済を危機に陥れる金融政策が平然と続けられている。

日銀の金融政策もいまの日銀政策委員のメンバーで金融政策を実施することが相応しいのか疑問であり、再度、検討する必要がある。異常な低金利を16年も続けていながら、国内需要は確りした足取りを取り戻せないことは、そのような金融政策は今の日本経済に通用しないことを証明している。抗がん剤のように、副作用が大きく、金融政策で日本経済は衰退しているといえるかもしれない。

通常の金融政策は、経済がプラス成長し、物価が上昇している状態では通用する。だが、1994年をピークにGDP物価指数が下落しているようなデフレ経済では、日銀の金融政策は無力なのである。2010年のGDP物価指数は88.8と12年連続で低下し、1981年以来29年ぶりの低い水準である。1990年代のはじめを境に日本経済はがらりと変わったが、その変化を見ようともせず、従来通りの金融政策を踏襲してきた。

株式・不動産バブル破裂の衝撃は深くて長い。放置していた不良資産の山が実体経済を蝕んでいったのである。『国民経済計算』によれば、日本の総資産から負債を差し引いた正味資産は09年末、2,712兆円、1991年のピークから819兆円減少した。不良資産処理に伴う正味資産の急激な減少により消費は低迷し、1992年でほぼ物価上昇は止り、デフレに陥った。だが、当時、政府や日銀などは日本経済をデフレとはとらえず、それまでと同じような処方箋で経済の舵取りができると思っていた。

2010年までの10年間のGDP物価指数は年率1.2%減であり、名目GDPは同0.5%のマイナスである。マイナス成長でデフレの経済状態では、国内で貨幣需要はプラスになることはなく、創出されたカネは需要不足を補うための財政赤字に用立てられるほかは、海外へ流出することになる。全国銀行勘定をみると、銀行の国債保有高は1993年の28.7兆円から2010年には146.2兆円へと増加する一方、貸出は479.9兆円から420.4兆円に減少している。国債の増加から銀行の総資産に占める有価証券の比率は16.3%から29.9%に上昇した。これからの10年間もマイナス成長は不可避であり、銀行の貸出は減少し続けるだろう。ゼロ金利と買いオペという従来の金融政策では、こうした逆境に立ち向かうことはできない。

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曽我 純 :

昨年11月、FRBは6,000億ドルの国債購入を決めたが、その1ヵ月前から、外人の日本株買いは積極的になり、2月第2週まで連続して買い越している。昨年10月以降の買い越し額は2.4兆円になる。明らかに、FRBの金融緩和措置が外人の日本株買いの契機となり、株価上昇の原動力となった。だが、6月末でFRBの国債購入は終了することから、外人買いもそろそろ最終局面に近づいているように思う。

それにしてもNYダウの上昇力は異常に強く、09年3月の底から2年経過しないうちに、1.9倍ほど値上りした。前回の上昇局面でも同程度値上りしたが、5年を要しており、今回の値上りがいかに急速であったかを物語っている。09年3月の反発要因もFRBの国債等の買い取りであり、FRBの金融緩和策を材料に株価は上がっていった。今回の国債購入は6月末までだが、いまの経済情勢では、FRBの国債購入は必要ではなく、打ち切りとなるだろう。株式買いの主力材料である国債購入が打ち切りとなれば、景気拡大のよほど強いシグナルが発せられない限り、株式上昇の持続は難しい。

FRBは今年の実質経済成長率見通しを昨年11月の3.0%~3.6%から3.4%~3.9%へ上方修正した。上方修正したことは景気の先行きに自信を深めていることであり、これほどの成長を想定していることは、国債購入だけでなく、ゼロ金利政策の変更もあり得る。さらに、足元、名目で4.2%も伸びていながら、ゼロ金利や国債購入を継続する異常な金融政策によって、株式や素材だけでなく物価も反応してきた。1月の米消費者物価指数(コア)は前年比1.0%と前月よりも0.2ポイント高く、昨年5月以来の伸び率となった。2月以降もじわじわ上がるようだと、早い段階でFRBは利上げに踏み切らざるをえない。実質金利がマイナスの異常な状態を断たなければ、株式や商品のバブルは膨れ、08年以降の金融恐慌に耐えた試練や経験が水泡に帰すことになる。

■ 家計は痩せ企業は太る日本社会

GDP統計によると、昨年10-12月期の経済成長率は名目前期比0.6%減と2四半期ぶりのマイナスとなった。マイナス自体めずらしいことではなく、過去10年を振り返れば、しばしばみられる光景であった。消費支出が前期比1.0%減と09年1-3月期以来の減少となったことや公的部門さらに外需までもマイナスになったことが響いた。
自動車販売やたばこの駆け込み需要の反動減が消費を引き下げたことは事実だが、11月までは薄型テレビが急増していたことなどを考え合わせれば、消費の基調は弱いと言わざるを得ない。7-9月期でさえも消費支出は0.3%伸びたにすぎず、駆け込み需要の効果はたかが知れている。減税の恩恵を受けるものは買うけれども、それ以外の消費は削るという姿勢である。

民間部門で寄与度がもっとも高かったのは民間在庫品増加であり、2四半期連続のプラスだ。自動車やたばこの売上減は予想できたことだが、それでも在庫が増加していることは、企業の予想よりも需要は弱いということを示している。

10-12月期の消費を自動車やタバコのせいにし、今年1-3月期以降、成長率は回復するような見方が報じられているが、1月の新車販売は引き続き大幅な前年割れとなるなど、消費不況から抜け出すことは難しいのではないか。それは消費を決定付ける所得が減少しているからだ。10-12月期の雇用者報酬は前期比0.3%減と2四半期連続のマイナスとなり、これが家計の消費マインドを冷やしている最大の原因だ。デフレーターは3四半期連続の前期比マイナスとなり、デフレが和らぐ兆しはみえない。デフレでは消費や設備投資が活発になることは考えられない。デフレ経済では貨幣価値は上がり、ものの価値は下がるので貨幣を貯めることが、もっとも有利な選択になるからだ。しかもいま指摘したように報酬が減少しているので、財布の紐はことさらきつくなる。

10-12月期の名目GDPは金融危機以降の最低(09年1-3月期)を上回っているが、消費支出はそれを下回り、1996年1-3月期以来、約15年ぶりの低い水準に落ち込んだ。国内家計最終消費支出は2008年1-3月期をピークに減少しているが、その間、耐久消費財は5.2%減とサービス(4.0%減)より悪いが、半耐久財(14.3%減)や非耐久財(7.9%減)に比べると、減少率は緩やかである。

暦年のGDPをみると、2009年までの2年間で名目GDPは激減したが、2010年は1.8%の増加にとどまり、回復力は弱い。名目GDPは479.2兆円と昨年より8.3兆円増加したが、2009年を除けば、水準は1991年以来ということになる。さまざまな政策支援があったにもかかわらず昨年の消費支出は前年比1兆円も増加しなかった。これが回復力が弱くなった最大の原因である。民間部門では在庫増加の寄与度が高く、民間設備投資は微増にとどまった。最大の牽引者は外需であり、これだけでGDPを0.9%引き上げた。消費がこれほど弱いのは雇用者報酬が昨年、0.8%しか増えず、悪化する前の2008年を9.2兆円も下回っており、1992年のレベルにとどまっているからだ。

今年度の企業収益は大幅に改善するようだが、これは報酬を低い水準に据え置いているからで、売上の伸びと同程度に給与を引き上げれば、このような増益にはならないはずだ。このような給与抑制と雇用削減を続けることは、同時に需要を削減していることでもある。企業は収益を拡大し太るけれども、家計の取り分は少なくなり痩せていくのでは経済は縮小していくだけである。

昨年4月~12月の上場企業の売上高は前年比7%を超え、経常利益は8割も増えているけれども、同期間の現金給与総額の伸び率は1%にも満たないのである。所定内給与に限ればわずかだがマイナスという酷い状態である。企業は儲けを溜め込み、財務内容は良くなるが、製造した商品が売れなくなるという有効需要の不足を企業自ら演出している。売上高の伸びに比例した分配をしなければ、経済はうまく行かない。不公平な分配から生じた有効需要の喪失は、政府部門の大幅な赤字でもってしても、補えない規模に達している。企業は少なくても、売上高の伸び率に準じた給与を支払わなければならない。そうしなければ、昨年、1%しか伸びなかった設備投資は、深刻な消費需要不足により再びマイナスになり、内需はますます萎んでいくだろう。内需欠乏の墓穴を掘り、外需に頼らざるを得なくなったのは、企業自ら蒔いた種なのである。

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FRBの資産拡大と財政赤字

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曽我 純 :

昨年11月、FRBは6,000億ドルの国債買い入れを発表し、その後、着々と購入しているが、国債価格は下落し、利回りは上昇しつつある。国債利回りは昨年10月末比、約1%も上昇してしまった。消費者物価指数(コア)は昨年12月、前年比0.8%の上昇にとどまり、物価はきわめて安定しているが、昨年10-12月期の名目GDPは前年比4.2%も伸びており、景気は回復軌道に乗っているからだ。

国債利回りは名目経済成長率に近づいていくだろう。2010年までの10年間の年平均経済成長率が4.0%であったことから、国債利回りはその当たりのレベルが妥当な水準ではないかと思う。

4%を上回る経済成長に達しながら、なおもFRBは買いオペを続行し、マネーを供給している。長期金利を下げるのではなく上げる役割を演じているのだ。政策金利をゼロに置いているので、長短金利差は3.3%に拡大し、金融機関の収益拡大を後押ししている。一方、非金融機関は資金コストが上昇し、設備投資意欲が削がれることになる。

FRBのしていることは、マネーを供給すれば、自動的に経済は良くなるとの考えに基づいている。ただ、経済がすでに巡航速度に回復している状態で、なおかつ貨幣を供給すれば、住宅バブルが発生したように、新たなバブルが膨らむことになる。おそらく、株式や商品などは、FRBの資金供給によって、バブル化しつつある。

FRBは非金融部門に直接に貨幣を供給できないので、本当に必要なところに資金がとどくかどうかはわからない。供給した貨幣の大部分は金融部門に滞留しており、良からぬところに向っているのだろう。連邦政府の支出は09年度、3.0兆ドルと前年比0.5兆ドルも増加し、財政赤字は08年度の0.64兆ドルから1.54兆ドルに拡大した。だが、GDP統計をみると、09年の政府支出は前年比360億ドル(1.3%増)増加しているにすぎない。財政支出の大半は金融部門の不良債権処理に使われたのだろう。

買いオペの拡大によって、FRBは先週水曜日時点で1.16兆ドルの国債を保有している。11月以降、0.33兆ドル増加しており、すでに目標の半分以上を消化したことになる。買いオペにより、FRBの総資産は過去最大の2.5兆ドルに拡大し、マネタリーベースも2.1兆ドルに膨れた。マネータリーベースのうち1.16兆ドルは準備預金であり、その大半(1.09兆ドル)は超過準備である。超過準備は本来ならば金融機関が貸出等に回す資金だが、FRBがそれを元手に各種証券を購入しているのだ。

金融危機の影響により、09年の米国経済はマイナス成長になったが、名目では1.7%減少しただけである。因みに、日本はマイナス6.6%と金融危機の震源地よりも酷い落ち込みとなった。1.7%の減少では、それほど大騒ぎする必要はなく、FRBによる大規模な金融支援もどれだけ実体経済に必要であったか疑問である。

米国経済はもともと不況に強い構造になっている。2009年の名目GDPは消費、設備投資、住宅がそれぞれ減少、総額2,500億ドル減となったが、なかでも輸入は大幅に減少し、輸入超過額の減少が消費や設備投資などのマイナスを半分以上消してしまった。輸入に頼る体質が不況下ではそれが緩衝装置となり、経済の落ち込みを緩やかにしたのである。さらに不況でも大きく落ち込まない個人消費のウエイトが高く、変動の激しい設備投資の比率が低いことも、成長率の振幅を小さくしている。

米国と正反対なのが日本であり、外需依存度が高く、個人消費のウエイトが低い一方、設備投資のウエイトが高いという経済構造が振幅を激しくしている。こうした仕組みにより、日本経済は、米国をはるかに上回る規模で収縮し、いまだに名目経済成長率は2%程度にとどまっている。

2010年の米経済成長率は名目3.8%に回復したが、在庫の寄与度が約3割を占め、設備投資の回復力はなお弱く、08年の水準を15%も下回っている。輸入超過額は再び拡大しているため、企業利益の回復は財政赤字に依存したものといえる。

2010年までの10年間に米名目GDPは1.47倍に拡大した。部門別の伸びを比較すると、もっとも拡大したのは政府部門の1.73倍であり、1.51倍の個人消費がそれに続き、設備投資は1.11倍にとどまった。政府支出のなかでは国防が2.2倍、非国防は1.61倍となり、2010年の国防支出は8,178億ドル、GDPの5.6%を占めており、米国経済は軍需産業という浪費で保たれているといえる。米国は市場経済の国であるといいながら、政府部門は2010年、20.5%と10年間で3.1ポイント上昇した。

住宅バブル期のような個人消費の伸びの再来はなく、設備投資も高い伸びが期待できなければ、結局、成長は政府部門に頼らざるを得ない。FRBもいつまでも買いオペを続けるわけにもいくまい。異常に膨れたFRBの資産を元の状態に戻すことは容易ではない。政府部門のウエイトを下げることも、長期的な課題として取り組むことになるだろう。米株式市場は浮かれているけれども、米国経済の中身について手放しで喜べるような内容ではないことは明らかである。米株式に追随している日本の株式はさらに危ういのではないだろうか。

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輸出頼みの生産と支出を切詰める家計

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曽我 純 :

昨年12月の鉱工業生産指数は前月比+3.1%と2ヵ月連続で増加した。出荷は1.1%増にとどまったため、在庫は1.4%増加した。生産がプラスに転じたのは、輸出が昨年8月を底に4ヵ月連続して前月を上回っているからだ。このまま輸出が伸びていけば、生産はさらに上向き、製造業の収益も拡大することになるだろう。ただ、1月上旬の輸出は前年比-6.9%と09年11月以来のマイナスになり、輸出の伸びが持続するかどうか不透明である。企業収益と株式は、輸出の伸びが持続するかどうかに依存しているので、輸出動向から目を離すことができない。

12月の生産に寄与したのは情報通信、電子部品・デバイス、輸送機械などだが、生産は伸びたものの、在庫も増加しており、生産調整も考えられる。薄型テレビの影響で昨年11月まで7ヵ月連続のプラスだった情報通信の出荷は12月、前月比6.6%減少する半面、在庫は14.0%増加した。電子部品・デバイスは出荷も2ヵ月連続のプラスだが、在庫は5ヵ月連続増となり、過剰生産が続いている。輸送機械の在庫は2ヵ月連続増だが、在庫率は4ヵ月連続のプラスとなり、意図せざる在庫増の局面にあるのではないか。財別では耐久消費財と生産財の生産が伸びたが、在庫はいずれも増加し、特に、耐久消費財の動向には注意を要する。

1月の鉱工業生産は前月比5.7%の大幅増、2月は1.2%の低下が予想されている。1月は一般機械や輸送が大幅に拡大する見通しになっているが、はたして予想通りに伸びるだろうか。国内新車販売台数は1月、前年比21.5%減と引き続き大幅なマイナスになっており、この傾向は8月頃まで続くだろう。一般機械は半導体製造装置のウエイトが高く、これによって大きく変動する。12月の半導体製造装置の生産は前月比7.7%減少し、一般機械も1.0%減少したが、1月は拡大するのだろう。前年比で半導体製造装置は99.4%も増加したため、一般機械の生産は32.8%伸びた。鉱工業生産指数は前年比4.6%増加したが、一般機械だけで4.3%引き上げており、半導体製造装置の鉱工業生産への影響は極めて大きい。半導体製造装置と鉱工業生産の前年比伸び率はほぼパラレルであり、鉱工業生産が変化率の大きい半導体製造装置に追随している。

『家計調査』によると、昨年12月の1世帯当たりの消費支出(2人以上の世帯)は前年比3.2%減と4ヵ月連続のマイナスとなり、しかも減少率は09年7月以来、1年5ヵ月ぶりの大幅減となった。エコポイントによって引き上げられていた耐久消費財が落ち込んだことが主な要因だが、それだけとは言い切れない。ウエイトの大きいサービスが9ヵ月、食品は11ヵ月それぞれ連続減となっており、家計の支出抑制の姿勢は強い。

勤労者世帯に限れば、消費支出は昨年11月まで5ヵ月連続の前年比プラスであったが、12月は2.7%減少した。09年、08年の12月も前年割れのため、12月は3年連続減となり、07年12月比7.9%も減少している。消費減の最大の要因は可処分所得の減少である。09年12月は6.4%もの大幅減となったが、昨年12月も1.3%減少し、2年連続のマイナスとなり、12月としては過去10年で最低となった。企業業績は回復しているが、先行き不透明などと理由をつけ、雇用者報酬を上げようとはしない。企業みずから消費を冷やす根源を作り出しており、これでは消費拡大は望むべくもない。

報酬を下げれば企業は雇用を増やすわけでもない。雇用者報酬が減少すれば、消費は控えられ、企業が生産した商品は売れなくなる。雇用者報酬減少分よりも消費減少分が大きいことがますます経済を悪化させる。悪化を食い止めているのが財政赤字と超過輸出であり、支払った税金をはるかに超える額を政府は支出・購入し、海外への支払を受取が上回ることで経済の落ち込み防いでいる状況である。

昨年12月の失業率は4.9%と前月よりも0.2ポイント低下したが、就職を諦め失業者の分類に入らない非労働力人口が増加していることも、失業率の低下につながっている。逆に言えば、労働力人口比率(労働力人口を15歳以上の人口で割った数値、ただし労働力人口は就業者に失業者を加えたもの)は低下し続けており、昨年12月は前年比0.1ポイント低下の59.1%である。2010年は59.6%と3年連続の低下で、10年前と比べれば2.8ポイントも低下してしまった。昨年の就業者数は6,256万人と3年連続の減少となり、10年前に比べれば190万人も減少してしまった。

昨年12月の非農林雇用者数は前年比9万人増と6ヵ月連続のプラスだが、9、10月に比べれば、増加の勢いは衰えてきた。男女別では男の14万人減に対して、女は23万人増加しており、しかも男は減少し続けているが、女は6ヵ月連続で増加している。

米国の失業率は1月、9.0%と前月比0.4ポイントの大幅な低下だ。米国は10代の失業率が25.7%と依然高いため、25歳以上に限れば7.6%に低下する。さらに学歴別では大卒以上は4.2%だが、高卒は9.4%、高校を卒業していない層は14.2%と跳ね上がり、米国は学歴が物を言う社会であることが見て取れる。

失業期間が27週以上の長期失業者は1月、前月比3.6%減少し、雇用環境は徐々に改善しつつある。ただ、失業率の改善は、日本と同じように、非労働力人口に分類される人の増加が寄与しており、手放しで喜べる状況ではない。非労働力人口は前月比0.4%、前年比では2.4%も上昇しており、労働力人口比率は64.2%、前年比0.6ポイント低下した。

日本の昨年12月と比較すると、労働力人口比率は日本が米国よりも5.1ポイント低い。米国並みに労働力人口比率が上昇すれば、現状よりも労働力人口は568万人増加することになる。日本は人口が減少しているので、労働力人口比率を米国以上に引き上げる必要がある。

失業率は改善したが、非農業部門雇用者数は前月比3.6万人増と前月の増加数(12.1万人)を下回った。製造業は4.9万人増と3ヵ月連続のプラスとなったが、サービス部門が3.2万人の増加にとどまったため、民間部門も5.0万人と前月より大幅に増加数は減少した。建設部門は依然減少しており、1月は545.5万人と1996年4月以来、約15年ぶりの低い水準となり、ピーク(2006年4月)からは227万人も減少してしまった。因みに、日本の建設業の就業者数は12月、507万人と減少しているが、名目GDPが米国の約4割の規模にしてはまだ多いように思う。

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