暴落するか否かの瀬戸際にある商品市況

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曽我 純:

OECD景気先行指数が夏以降頭打ちになり、世界経済の回復力が弱くなっているときに、商品市況が急騰することは、あきらかにバブルが発生していることを示している。先行指数そのものも高水準にあり、現状以上に伸びる可能性は低い。株価が反発する前の08年12月に原油や銅の市況は底を打ち、いままでほぼ右肩上がりできた。この間の値上り率は銅で3.3倍、原油は2.6倍に達している。09年3月を底に反発したNYDOWの75%を大幅に上回っており、投機資金が商品市場に雪崩れ込んでいることがわかる。

商品価格の上昇は原材料価格を引き上げ、企業収益に影響してくる。日米とも生産財価格が消費財価格の上昇率を上回っており、企業利益を圧迫している様子が窺える。さらに上昇すると、インフレに繋がることになり、金融当局は金融引き締めに踏み出さざるを得なくなる。そうなれば短期金利は急上昇し、資金コストが増加、設備投資マインドは冷やされ、景気は後退するだろう。

米国や日本はGDP成長率がプラスでありながら、ゼロ金利を続けていることが、商品相場を高騰に導いているのだ。自然災害ではなく人災なのである。実需が伴わないのに巨額の買いオペを実施し、金融機関に資金供給していることも、投機を助長している。ゼロ金利が長引き、商品相場がさらに高騰すれば、短期金利上昇懸念から長期金利もいままで以上に上昇することになる。そのような過程で、商品相場も腰折れとなり、一気に値が崩れることになるかもしれない。

商品市況の暴落は資産価値の激減となり、負債との齟齬が生じることになる。住宅価格崩落のような規模ではないが、それでも景気にある程度のインパクトはあるはずだし、景気の撹乱要因になることは間違いない。商品市況急落が株式市場へと波及する恐れもあり、そのような事態になれば景気に及ぼす影響はさらに大きくなる。

米国のように住宅市場がいまだ病んでいる状態では、商品投機の破綻は信用の問題を再燃させることになる。信用不安が出てくれば、資金の流通は途絶えがちになり、当然ものの動きも悪くなる。商品市況が暴落すれば、デフレにある日本経済はデフレが一段深刻になり、家計も企業も支出をさらに絞るだろう。

ゼロ金利の恩恵を最も受けているのは金融セクターである。金融危機を引き起こした張本人が気づいてみれば、最大の利益享受者になっているのだ。米国などは長短金利差が3%もあるので、金融機関の収益は大幅に拡大するはずだ。非金融セクターは被害者だが、ゼロ金利による直接的な便益はない。

日本のようにデフレではマネーは自動的に増価するので、家計も企業も現・預金等の流動資産を厚くすることでデフレに対処している。逆に、借金は重くなるので、極力減らす。借金を返済し、現・預金を増やすことがデフレ経済を乗り切る最良の方法なので、日本経済はこのような資金の動きが今年も続くことになる。


米非農業部門雇用者数は12月まで3ヵ月連続の前月比増だが、春頃のような増勢ではなく、回復は緩やかである。米鉱工業生産指数を四半期でみると、7-9月期の前期比1.5%から10月、11月の平均は0.1%の微増にとどまっており、09年7-9月期以降の回復過程で10-12月期の伸びは最低になりそうだ。10-12月期の全産業設備稼働率は75.0%と前期比1.1ポイント上昇したが、ハイテク産業は73.2%、0.7ポイント低下した。PMIの非製造業は春の数値を越えたけれども、製造業は依然したまわっており、景気が全体的に良くなっているわけではない。

『短観』(12月調査)によると、日本の大企業経常利益は今年度下期、前年比-1.0%の減益になる見通しだ。前回調査から下方修正されており、収益は企業の思い通りに進んでいない。機械セクターの利益は大幅増益を維持しているけれども、電気や輸送は2桁減益になりそうである。しかも前回の9月調査から大幅な下方修正となり、予想以上に業績は悪化している。
11月の鉱工業生産指数は前月比1.0%と6ヵ月ぶりのプラスになり、12月、1月は大幅に伸びると予測されている(新車販売が前年を約3割下回り、薄型テレビなどの家電の売上が激減していながら鉱工業生産が伸びるほど他の分野が強いとは考え難い)。12月が予測通りに伸びても、10-12月期の鉱工業生産は前期比1.5%減少する。製造業の総実労働時間も10月、11月では7-9月期比1.0%減、全産業でも0.8%減少している。10-12月期の業績は製造業だけでなく、全産業で減益になるかもしれない。浮かれている株式は収益を直視せざるを得なくなる。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2011年1月 9日 21:02.

金融緩和による商品市況の高騰 は以前の記事です。

FRBは不良債権を封じ込めることができるか は以降の記事です。

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