FRBは不良債権を封じ込めることができるか

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曽我 純 :

NYDOWは7週連続高となり、週末比では08年6月第3週以来の高い水準に上昇した。09年3月第1週の底値から78%も上昇し、米株式は住宅バブルで高騰した高値の領域に踏み出したといえる。DOWの株価収益率は約15倍と昨年の11月初めに比べると1ポイント上昇しており、利益よりも期待で値上りしていることがわかる。信用の行過ぎた緩和が株式をファンダメンタルズから離れさせようとしている。

鉱工業生産指数は昨年12月、前月比0.8%伸び、08年8月以来の生産水準を回復し、小売売上高も0.6%上昇するなど、実体経済が回復傾向にあることも、株価を後押ししている。しかも、12月の消費者物価指数のコアは前月比0.1%、前年比でも0.8%ときわめて安定しており、理想的な物価環境にある。

実体経済が好調に推移しているともいえる状況下において、FRBがマネーを金融機関にばら撒かざるを得ないのは、金融部門に依然大きな穴があいた状態にあるからだ。米商業銀行の商工業貸付は12月、前年比5.5%減と09年5月以降20ヵ月連続の前年割れだし、不動産貸付も4.5%減と15ヵ月連続のマイナスとなり回復の兆しはみえない。FRBは金融機関に湯水のように資金供給しているにもかかわらず、主要な貸出はプラスにならないのである。それは商業銀行の総貸付に占める不動産貸付の割合が12月、53.4%とピークからは低下したとはいえ長期の水準からみれば異常に高いことに関係している。金額でも3.61兆ドルとピークの09年5月(3.87兆ドル)から6.7%しか減少していない。このことは、商業銀行の不動産貸付が不良化しており、まだ多くの不良債権を抱えたままだということを示唆している。資金需要が乏しいところに、銀行が多額の焦げ付き債権を保有していることも、貸付が伸びない要因である。

国の管理下にあるファニーメイ、フレディマックがいつまで爆弾を抱え込んだままでいられるのだろうか。これら政府支援企業の資産は09年末の3.01兆ドルから2010年3月末には6.88兆ドルに急拡大、9月末でも6.65兆ドルと巨額である。資産の大半を占めるモーゲージ(9月末5.03兆ドル)は恐らくかなりの部分が不良化しているはずだ。

ファニーメイ、フレディマックは昨年7月、上場廃止(NYSE)となり、政府丸抱えになった。政府はなんとしても、不良モーゲージを封じ込め、長期戦略で少しずつ悪いところを処理していこうという方針のようだ。

政府支援企業は支援企業債を発行して資金調達しているが、その規模は9月末、6.44兆ドルである。支援企業モーゲージプール等を入れると企業支援債は総額7.59兆ドルとなる。支援債の保有者としては商業銀行(1.31兆ドル)、FRB(1.23兆ドル)、海外(1.2兆ドル)、投資信託(0.75兆ドル)といったところが大所だ。これだけの債務を抱えている支援企業が行き詰まると、そのショックは南欧などの比ではない。いま政府支援企業の問題は表立ってはいないが、地価の一段の下落などをきっかけにいつ爆発するとも限らない。

政府支援企業を支えるために、FRBはゼロ金利に加え6,000億ドルの買いオペを実施しているが、FRBの総資産の半分以上を支援企業債で占めていることは、いかにも異常だ。ベースマネーが増加するといっても、マネーは政府支援企業に行くだけである。そこから先に回るマネーは僅かなものだと思う。いうなればマネーをブラックボックスに注ぎ込んでいるようなものである。

経済指標の改善も一時的なものに終わるかもしれない。米国経済は不動産バブル崩壊の傷を深く負ったままの状態にあるからだ。政府支援企業を中心にした金融機関の不良債権が概ね処理されるまでは、米国経済の本格回復は期待できない。

米国経済が爆弾を抱えていることが、対ドルで円を強い水準に釘付けにしているようにも思える。米国同様、欧州も住宅バブル崩壊から立ち直るには程遠い状況にあり、そのことがユーロの上昇を阻んでいる。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2011年1月16日 18:38.

暴落するか否かの瀬戸際にある商品市況 は以前の記事です。

遊戯場と化してしまった日本の株式市場 は以降の記事です。

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