金融緩和による商品市況の高騰

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曽我 純 :

米国の長期金利は上昇しているが、短期金利の上昇力は弱く、長短金利差は拡大し、金融機関の収益環境は改善している。景気回復が確かであれば、長期金利よりも短期金利がより速く上昇するはずだ。そうならないのは、景気の足取りがあやふやであり、資金需要が弱いからだ。FRBの買いオペで銀行に資金を供給しても、そこから先へは金が流れていかない。企業は先行きの景気に自信が持てず、設備投資を積極的にしようとは思っていないからだ。金が行き着く先はマネーゲームに興じる部門である。借入コストが低いので、僅かな鞘を求めて株式や商品市場で頻繁に売買を繰り返す。8月末比、原油は27.2%、銅は25.4%も上昇しており、商品市況の高騰はいかにも実体経済から掛け離れた動きだ。日銀やFRBの金融緩和に端に発するこうした投機の過熱はいずれ経済を撹乱させることになるだろう。実体経済の拡大に繋がらない金融緩和は止めるべきだ。

7-9月期の米GDPは名目で前年比4.5%も伸びており、実体経済の成長率からみれば長期金利の3%台は低いといえる。GDP物価指数は前年比1.2%上昇しており、実質短期金利はマイナスになる。政策金利をゼロに据え置いていることの弊害が大きくなりそうだ。FRBは住宅価格下落に伴う不良資産救済の視点が強くなりすぎ、金融政策は正道を踏み外している。

■ 政府の債務拡大以外に日本経済を維持する術はない

11月の貿易統計によると、輸出は前月比1.7%と3ヵ月連続のプラスとなった。伸び率は小幅だが、輸出の減少が止ったことは、日本経済にプラスである。前年比でも9.1%上昇し、前月を1.3ポイント上回った。円高にもかかわらず、対EUが前月の前年比-1.9%から10.1%増へと改善したことが大きい。特に、一般機械や自動車の輸出が好調であった。他方、コンピューターなどの売れ行きが好ましくなく、半導体等の電気機器は5.8%減と2ヵ月連続のマイナスとなった。世界的にも半導体等電子部品は不調であり、11月の同輸出は前年比3.0%減と09年10月以来13ヵ月ぶりのマイナスになった。DRAMの価格も下げ止らず、需給のバランスは崩れたままである。

半導体等電子部品の輸出が前年比プラスからマイナスに転換したとき、株価は概ね下落している。11月末の日経平均株価は前月比8.0%上昇しており、先週末の株価も11月末よりも3.4%高く、これまでの局面とは異なる。だが、12月の半導体等電子部品の輸出動向によっては、株価に大きな変化が生じるかもしれない。


週末、政府は来年度の予算案を決めた。一般会計は総額92.4兆円、2010年度当初予算比微増である。ただ、補正後に対しては4.3兆円下回り、GDPを1%弱引き下げる。歳入の公債金は44.2兆円とほぼ前年度並みとなり、3年連続で租税・印紙収入(39.6兆円)を上回る。租税・印紙収入は前年度を1.3兆円上回る見通しだが、水準自体は低く、09年度、2010年度を除けば、1985年度以来の低い税収である。

租税・印紙収入が少ないからといって、いきなり国債発行を大幅に削減することになれば、それだけ需要が減少し、GDPは大幅に落ち込むことになる。企業収益は激減し、失業率は急上昇、需要減によりデフレはさらに強まり、日本経済は悲惨な状態に陥るだろう。

貯蓄があることが、政府の赤字を支えている。家計調査によると、09年の勤労者世帯の平均消費性向は74.6%である。月平均10.8万円の黒字であり、これが預金や保険料にむかっているのだ。金融機関は集まってくる金をなにかで運用しなければならない。貸出はマイナスであるから、国債を購入せざるを得ない。国にとっては負債だが、家計からみれば資産になる。いまは非金融法人も黒字であるので、その貯蓄も国の赤字をファイナンスしている。いずれにせよ黒字の部門から赤字の部門へと資金が流れることにより、貯蓄と投資は等しくなるのだ。必然的にそうなるので、だれも止めることはできない。だから、政府の債務残高が天文学的規模に達し、さらに拡大することが必至だけれども、国の債務の膨張を食い止め、縮小することはできないのである。他の事情がかわらずに、政府の債務拡大を止めれば、経済は直ちに麻痺状態に陥る。家計や非金融法人の貯蓄はすぐに減少することはなく、毎年、高水準の貯蓄が発生するだろう。設備投資が貯蓄の多くを吸収するほど拡大するとは考え難いことから、政府が需要を作り出す以外に経済を維持する方法はない。(次号は休みます)

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年12月26日 18:23.

日本経済を弱くする税制改革 は以前の記事です。

暴落するか否かの瀬戸際にある商品市況 は以降の記事です。

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