景気を悪化させる法人税率の引き下げ

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曽我 純:

日経平均株価は6週連続で値上りし、5月第2週以来の高い水準に上昇した。外人が大幅に買い越しているからである。FRBが追加金融緩和策を発表した11月第1週以降、外人は6週連続、日本株を買い越し、12月第1週までの累計額は7,306億円に達し、年初以来の買い越し規模になっている。12月第1週の東証1部売買代金(委託)に占める外人比率は66.4%と引き続き高く、日本株は外人主導で引き上げられている。

経済指標など脇において、買えば上がる、上がるから買うといった調子で株価は、糸の切れた凧のように上がっている。なにかをきっかけに外人買いが途切れることになれば、日本株は一気に崩れるだろう。椅子取りゲームは最終場面に近づいている。

10月の『景気動向指数』が発表されたが、一致指数は前月比-1.4%と2ヵ月連続のマイナスとなり、景気は8月をピークに明らかに失速している。先行指数は4ヵ月連続の低下となり、しかもピークは4月である。ディフュージョン・インデックス(DI)も一致は33.3%と景気の分れ目である50.0%を09年4月以来18ヵ月ぶりに下回った。今年3月まで3ヵ月連続して100%を付けたが、その後、景気の良い部分は少なくなり、10月はついに50.0%を下回ってしまった。DIの先行指数は6月以降5ヵ月連続の50.0%割れとなり、10月は20.0%まで低下した。

『法人企業景気予測調査』によると、大企業製造業の売上高は今年度上期の前年比13.4%から下期は1.9%に鈍化する見通しである。下期の売上高は前回調査(1.5%減)を上回ったが、経常利益は前回の4.7%から今回は12.2%減の減益予想となり、大幅な下方修正となった。大企業非製造業の下期の売上高、経常利益はともに前回よりも下方修正され、特に、経常利益は15.4%と伸び率は前回調査の半分に低下するようだ。

大企業製造業の「貴社の景況判断BSI」(前期と比べて「上昇」-「下降」社数構成比)は10-12月期、-8.0%と09年4-6月期以来6四半期ぶりのマイナスとなった。前回予想(0.0%)を下回り、これで2四半期連続の下方修正だ。大企業製造業BSIの改善は7-9月期までの2四半期で止った。大企業非製造業のBSIも10-12月期、-3.4%と前回を下回り、3四半期ぶりのマイナスになった。プラスに浮上していた期間は2四半期にすぎず、非製造業の景況は再び悪化しつつある。09年4-6月期以降、今年の4-6月期を除き、非製造業のBSIが前回予想を下回っている点を鑑みるならば、来年1-3月期の見通しは-1.2%だが、10-12月期よりも悪くなるのではないか。

『法人企業統計』でも企業業績のピークアウトがみられる。7-9月期の大企業売上高は前年比5.7%と伸び率は2四半期連続で低下し、営業利益も前期の152.8%から61.8%へと大幅に低下した。伸び率は低下したとはいえ、依然、営業利益は前年を大幅に上回っており、好調を持続しているようにも読み取れる。営業利益が高い伸びを維持しているのは、売上原価や販管費を抑えているからだ。売上原価は前年比4.5%、販管費は2.3%といずれも売上高の伸びを下回り、企業の支出抑制姿勢は強い。コストの主要部分を占める人件費は前年よりわずか0.6%高いだけで、売上高の伸び率との格差は大きい。だが、企業はこうした売上高と支出の伸び率の乖離した状態をいつまでも続けられるわけではない。企業の支出の抑制は家計の支出を阻み、他企業の収入にも悪影響することになり、早晩、企業の売上高に跳ね返ってくる。

企業は利益を溜め込んでいる。自己資本比率は上昇し続けており、7-9月期には42.8%と前年を1.1ポイント上回り、3四半期連続で過去最高を更新している。資産に目を向けると、9月末、「現・預金」は前年比6.7%増の37.9兆円、「投資その他の資産」は1.9%増加し225.1兆円と資金は有り余っている。

これほどカネが企業に滞っており、しかも政府は来年度の予算編成で四苦八苦している状況下にもかかわらず、マスコミの意見に押されて法人税率を引き下げようとしている。下げたいなら法人税率ではなく所得税率を下げるべきである。法人税率を引き下げれば、企業が手にするカネは増えるが、給与は増やさず、設備投資の拡大にも取り組まなければ、社内にカネは溜まる一方だ。企業が設備投資を拡大するとは考え難く、結局、国が国債発行により、余剰資金を吸い上げるという方法で貯蓄・投資のバランスが保たれるのである。

名目GDPがマイナスを続けるような経済では、設備投資の伸びは見込めず、法人税率を引き下げても、それによって入手したカネを企業は使い切ることができないのだ。法人税率などの議論に時間を浪費するのではなく、欠損法人(特に金融機関等)から税を取り立て、サラリーマンに偏っている不公平な徴税を改め、有価証券取引税の再導入を図ることが必要ではないか。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年12月12日 18:19.

中央銀行演出の危うい相場 は以前の記事です。

日本経済を弱くする税制改革 は以降の記事です。

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