2010年12月 Archives

金融緩和による商品市況の高騰

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曽我 純 :

米国の長期金利は上昇しているが、短期金利の上昇力は弱く、長短金利差は拡大し、金融機関の収益環境は改善している。景気回復が確かであれば、長期金利よりも短期金利がより速く上昇するはずだ。そうならないのは、景気の足取りがあやふやであり、資金需要が弱いからだ。FRBの買いオペで銀行に資金を供給しても、そこから先へは金が流れていかない。企業は先行きの景気に自信が持てず、設備投資を積極的にしようとは思っていないからだ。金が行き着く先はマネーゲームに興じる部門である。借入コストが低いので、僅かな鞘を求めて株式や商品市場で頻繁に売買を繰り返す。8月末比、原油は27.2%、銅は25.4%も上昇しており、商品市況の高騰はいかにも実体経済から掛け離れた動きだ。日銀やFRBの金融緩和に端に発するこうした投機の過熱はいずれ経済を撹乱させることになるだろう。実体経済の拡大に繋がらない金融緩和は止めるべきだ。

7-9月期の米GDPは名目で前年比4.5%も伸びており、実体経済の成長率からみれば長期金利の3%台は低いといえる。GDP物価指数は前年比1.2%上昇しており、実質短期金利はマイナスになる。政策金利をゼロに据え置いていることの弊害が大きくなりそうだ。FRBは住宅価格下落に伴う不良資産救済の視点が強くなりすぎ、金融政策は正道を踏み外している。

■ 政府の債務拡大以外に日本経済を維持する術はない

11月の貿易統計によると、輸出は前月比1.7%と3ヵ月連続のプラスとなった。伸び率は小幅だが、輸出の減少が止ったことは、日本経済にプラスである。前年比でも9.1%上昇し、前月を1.3ポイント上回った。円高にもかかわらず、対EUが前月の前年比-1.9%から10.1%増へと改善したことが大きい。特に、一般機械や自動車の輸出が好調であった。他方、コンピューターなどの売れ行きが好ましくなく、半導体等の電気機器は5.8%減と2ヵ月連続のマイナスとなった。世界的にも半導体等電子部品は不調であり、11月の同輸出は前年比3.0%減と09年10月以来13ヵ月ぶりのマイナスになった。DRAMの価格も下げ止らず、需給のバランスは崩れたままである。

半導体等電子部品の輸出が前年比プラスからマイナスに転換したとき、株価は概ね下落している。11月末の日経平均株価は前月比8.0%上昇しており、先週末の株価も11月末よりも3.4%高く、これまでの局面とは異なる。だが、12月の半導体等電子部品の輸出動向によっては、株価に大きな変化が生じるかもしれない。


週末、政府は来年度の予算案を決めた。一般会計は総額92.4兆円、2010年度当初予算比微増である。ただ、補正後に対しては4.3兆円下回り、GDPを1%弱引き下げる。歳入の公債金は44.2兆円とほぼ前年度並みとなり、3年連続で租税・印紙収入(39.6兆円)を上回る。租税・印紙収入は前年度を1.3兆円上回る見通しだが、水準自体は低く、09年度、2010年度を除けば、1985年度以来の低い税収である。

租税・印紙収入が少ないからといって、いきなり国債発行を大幅に削減することになれば、それだけ需要が減少し、GDPは大幅に落ち込むことになる。企業収益は激減し、失業率は急上昇、需要減によりデフレはさらに強まり、日本経済は悲惨な状態に陥るだろう。

貯蓄があることが、政府の赤字を支えている。家計調査によると、09年の勤労者世帯の平均消費性向は74.6%である。月平均10.8万円の黒字であり、これが預金や保険料にむかっているのだ。金融機関は集まってくる金をなにかで運用しなければならない。貸出はマイナスであるから、国債を購入せざるを得ない。国にとっては負債だが、家計からみれば資産になる。いまは非金融法人も黒字であるので、その貯蓄も国の赤字をファイナンスしている。いずれにせよ黒字の部門から赤字の部門へと資金が流れることにより、貯蓄と投資は等しくなるのだ。必然的にそうなるので、だれも止めることはできない。だから、政府の債務残高が天文学的規模に達し、さらに拡大することが必至だけれども、国の債務の膨張を食い止め、縮小することはできないのである。他の事情がかわらずに、政府の債務拡大を止めれば、経済は直ちに麻痺状態に陥る。家計や非金融法人の貯蓄はすぐに減少することはなく、毎年、高水準の貯蓄が発生するだろう。設備投資が貯蓄の多くを吸収するほど拡大するとは考え難いことから、政府が需要を作り出す以外に経済を維持する方法はない。(次号は休みます)

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日本経済を弱くする税制改革

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曽我 純 : 

今年度の企業(全規模、短観)の経常利益は前年比28.2%もの大幅増が見込まれる。懐が暖かい企業の税金を軽減する半面、給与が伸びていない家計の負担を増やすような税制改正が本当に日本経済を強くするのだろうか。日本経済の構造的な問題は、GDPに占める個人消費支出比率が低く、設備投資や輸出に過度に依存していることである。消費支出を増やすことが先決問題であり、消費が拡大すれば自然に設備投資は拡大する。今回の措置では消費支出は削減され、設備投資は冷え込むことになるだろう。高額所得者の給与控除額に上限を設けたが、それだけでは所得格差を縮小することはならず、今後累進税率を強める一方、500万円以下の給与所得者(給与所得者の73.8%を占める)の所得税を引き下げなければならない。

企業は内部にカネを溜め込むばかりで、支出する意欲はない。先行き消費環境は改善されず、期待収益率は高くならないと予想しているからだ。今年度の設備投資額(ソフトウェアを含む、土地除く、短観)は前年比2.3%と2年連続で大幅に落ち込んでいたが、回復力は極めて弱く、これでは日本経済は強くならない。政府による消費刺激策がほぼ終了したことから、今後、消費が伸びると期待することはできない。9月まで改善していた企業の業況(「良い」-「悪い」、全規模、短観)は12月、-11%と前期比1ポイント悪化し、来年3月には-18%へと一層低下する見通しである。景況の悪化に伴い、企業は設備投資計画を見直すかもしれない。

政府のもうひとつの失敗は証券優遇税制の2年延長である。株式の譲渡所得や配当について、10%の軽減税率を13年末まで適用するという。「貯蓄から投資へ」という謳い文句で、2003年4月に10%の優遇税制は導入され、すでに7年経過したが、株式はもとより経済への効果もほとんどみることができない。家計の貯蓄が減少し、有価証券保有が増加したわけでもなく、単に、超短期売買の投機家が増えただけで、株式市場は博打場といってよい市場に成り下がってしまった。

10月までの月平均売買高回転率(株数)は137%と昨年に比べれば低下しているが、それでも異常に高い値であることは間違いない。優遇税制の導入と株価の回復などから売買回転率は03年以降急上昇し、04年以降は80年代後半のバブル期を上回った状態が続いており、売買高からみれば日本の株式はバブル化している。優遇税制に加えゼロ金利の長期化は株式の活況を招いたが、実体経済の沈滞脱却には繋がらなかった。政府は株式のバブルを継続したいようだが、このような異常な売買を断ち切り、株式市場を正常な姿に戻さなければ、実体経済に再び悪影響することになりかねない。

■ 米連邦政府の債務急増

先週、日経平均株価の終値の高安は23円にすぎず、株式は完全に膠着状態にある。3月までの業況の悪化や今年度下期の経常利益減益予想などがでれば、ここからさらに買い上がるわけにも行くまい。日本株を主導している米株式も頭が重くなってきていることも、外人の買い増し余力の低下となっている。米減税法案が成立したことから、米株式を押し上げる力は弱まり、これまでの上昇の反動があらわれてくるだろう。

11月の米商業銀行の不動産貸付は前年比4.9%減と09年10月以降の前年割れで最大のマイナス幅となった。遡ることができる1948年以降でもマイナスになったのは09年10月がはじめてであり、米国で不動産貸付がマイナスになること事態、異常であり記録的といえる。ゼロ金利を導入してから2年経過したけれども、米不動産部門は回復といえるような状況ではないことが貸付からあきらかとなった。

FRBによると、米家計の住宅金融残高は9月末、10.1兆ドル、前年比2.6%減にとどまっている。ピークの08年3月末比でも5,000億ドル、4.7%減と家計の借金の処理は進んでいない。これでは住宅部門の回復は望むべくもない。11月の米住宅着工件数は55.5万戸と2ヵ月連続で前月を上回ったが、依然、水準は低く底這い状態であり、先行きの動向を示す許可件数は53.0万戸と前月を下回り、米住宅市場の回復は予想がつかない。

米国内非金融部門の債務残高は9月末、35.85兆ドル、前年比3.7%増である。家計部門は13.42兆ドル、1.8%減、企業部門は10.95兆ドルの横ばいに対して、連邦政府は19.6%増の9.05兆ドルだ。リーマンショック以前の08年6月末の連邦政府債務(5.43兆ドル)と比較すると3.62兆ドルも増加しており、これが金融部門の債務の肩代りに該当する。金融部門の債務は9月末、14.44兆ドルとピークから2.67兆ドル減少しており、金融部門は身軽になる代わりに、政府部門が重荷を背負ったことになる。金融部門の悪い部分は政府やFRBに移転しているだけで、それらを清算してしまっているわけではない。FRBはなおも資金供給し、金融部門を支援しようとしているのだから、清算はいつになることやら。向こう何年間も米国経済の本格回復は見込めそうもない。

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曽我 純:

日経平均株価は6週連続で値上りし、5月第2週以来の高い水準に上昇した。外人が大幅に買い越しているからである。FRBが追加金融緩和策を発表した11月第1週以降、外人は6週連続、日本株を買い越し、12月第1週までの累計額は7,306億円に達し、年初以来の買い越し規模になっている。12月第1週の東証1部売買代金(委託)に占める外人比率は66.4%と引き続き高く、日本株は外人主導で引き上げられている。

経済指標など脇において、買えば上がる、上がるから買うといった調子で株価は、糸の切れた凧のように上がっている。なにかをきっかけに外人買いが途切れることになれば、日本株は一気に崩れるだろう。椅子取りゲームは最終場面に近づいている。

10月の『景気動向指数』が発表されたが、一致指数は前月比-1.4%と2ヵ月連続のマイナスとなり、景気は8月をピークに明らかに失速している。先行指数は4ヵ月連続の低下となり、しかもピークは4月である。ディフュージョン・インデックス(DI)も一致は33.3%と景気の分れ目である50.0%を09年4月以来18ヵ月ぶりに下回った。今年3月まで3ヵ月連続して100%を付けたが、その後、景気の良い部分は少なくなり、10月はついに50.0%を下回ってしまった。DIの先行指数は6月以降5ヵ月連続の50.0%割れとなり、10月は20.0%まで低下した。

『法人企業景気予測調査』によると、大企業製造業の売上高は今年度上期の前年比13.4%から下期は1.9%に鈍化する見通しである。下期の売上高は前回調査(1.5%減)を上回ったが、経常利益は前回の4.7%から今回は12.2%減の減益予想となり、大幅な下方修正となった。大企業非製造業の下期の売上高、経常利益はともに前回よりも下方修正され、特に、経常利益は15.4%と伸び率は前回調査の半分に低下するようだ。

大企業製造業の「貴社の景況判断BSI」(前期と比べて「上昇」-「下降」社数構成比)は10-12月期、-8.0%と09年4-6月期以来6四半期ぶりのマイナスとなった。前回予想(0.0%)を下回り、これで2四半期連続の下方修正だ。大企業製造業BSIの改善は7-9月期までの2四半期で止った。大企業非製造業のBSIも10-12月期、-3.4%と前回を下回り、3四半期ぶりのマイナスになった。プラスに浮上していた期間は2四半期にすぎず、非製造業の景況は再び悪化しつつある。09年4-6月期以降、今年の4-6月期を除き、非製造業のBSIが前回予想を下回っている点を鑑みるならば、来年1-3月期の見通しは-1.2%だが、10-12月期よりも悪くなるのではないか。

『法人企業統計』でも企業業績のピークアウトがみられる。7-9月期の大企業売上高は前年比5.7%と伸び率は2四半期連続で低下し、営業利益も前期の152.8%から61.8%へと大幅に低下した。伸び率は低下したとはいえ、依然、営業利益は前年を大幅に上回っており、好調を持続しているようにも読み取れる。営業利益が高い伸びを維持しているのは、売上原価や販管費を抑えているからだ。売上原価は前年比4.5%、販管費は2.3%といずれも売上高の伸びを下回り、企業の支出抑制姿勢は強い。コストの主要部分を占める人件費は前年よりわずか0.6%高いだけで、売上高の伸び率との格差は大きい。だが、企業はこうした売上高と支出の伸び率の乖離した状態をいつまでも続けられるわけではない。企業の支出の抑制は家計の支出を阻み、他企業の収入にも悪影響することになり、早晩、企業の売上高に跳ね返ってくる。

企業は利益を溜め込んでいる。自己資本比率は上昇し続けており、7-9月期には42.8%と前年を1.1ポイント上回り、3四半期連続で過去最高を更新している。資産に目を向けると、9月末、「現・預金」は前年比6.7%増の37.9兆円、「投資その他の資産」は1.9%増加し225.1兆円と資金は有り余っている。

これほどカネが企業に滞っており、しかも政府は来年度の予算編成で四苦八苦している状況下にもかかわらず、マスコミの意見に押されて法人税率を引き下げようとしている。下げたいなら法人税率ではなく所得税率を下げるべきである。法人税率を引き下げれば、企業が手にするカネは増えるが、給与は増やさず、設備投資の拡大にも取り組まなければ、社内にカネは溜まる一方だ。企業が設備投資を拡大するとは考え難く、結局、国が国債発行により、余剰資金を吸い上げるという方法で貯蓄・投資のバランスが保たれるのである。

名目GDPがマイナスを続けるような経済では、設備投資の伸びは見込めず、法人税率を引き下げても、それによって入手したカネを企業は使い切ることができないのだ。法人税率などの議論に時間を浪費するのではなく、欠損法人(特に金融機関等)から税を取り立て、サラリーマンに偏っている不公平な徴税を改め、有価証券取引税の再導入を図ることが必要ではないか。

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中央銀行演出の危うい相場

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曽我純 :

11月の米雇用統計は予想を下回ったが、NYダウは下落せず、商品市況は大幅に値上りし、債券は売られた。雇用統計に唯一素直に反応したのは為替のドル売りだけである。米10年債の利回りは3.0%と7月中旬以来の高い水準に上昇した。FRBの金融緩和策が発表されてから43ベイシスポイントも上昇し、国債相場はFRBの狙いとは反対の方向に進んでいる。長期金利が上昇すれば、回復力の弱い設備投資やバブル崩壊で落ち込んだままの住宅の回復を阻むことになる。

経済指標を相場に都合よく解釈することで、いつまで株式や商品相場を維持できるのだろうか。悪い指標が発表されても、相場は多数の市場参加者の美人投票に従って価格付けが行われ、必ずしも指標通りには変動しないが、最終的にはファンダメンタルズに屈服せざるを得ない。ファンダメンタルズを蔑ろにし、投機の深みに嵌っていくと、いつのまにか参加者は少なくなり、相場から降りるに降りられなくなる。

FRBのゼロ金利と国債買い取りがいつ終わるのか検討もつかないことが、投機家を強気にさせている最大の要因である。金融部門は金融緩和というコスト低下の恩恵をフルに受けており、金融部門の活動は実体経済からますます離れている。FRBは、金融緩和は資金を経済に行き渡らせ、景気をよくすると考えているが、住宅バブルの崩壊で資産価値は下落し、資金需要はきわめて弱く、金融機関にマネーは溜まり、ヘッジファンド等に貸し出されているはずだ。マネーは実体経済よりむしろ株式、債券、為替、商品といった金融市場に入り込んでおり、相場を吊り上げている。

11月の消費者信頼感指数、11月の主要小売業売上高、11月の新車販売、10月の仮契約住宅販売指数などは景気回復を期待させた半面、11月の雇用統計をはじめ製造業ISMや9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は景気の持続性に疑問を投げかける内容であった。最も注目されていた雇用統計は一顧だにされなかった。

非農業部門雇用者数は前月比3.9万人増と2ヵ月連続のプラスだが、増加数は10月の17.2万人から減少した。民間部門は5.0万人と今年1月以降、11ヵ月連続の増加である。ただ、10月までは4ヵ月連続して10万人を超えており、11月は今年1月以来の低い伸びとなった。しかも、民間部門を支えたのは派遣等の一時雇用(3.9万人増)であり、企業の姿勢は依然慎重である。製造業は1.3万人減と9月の横ばいを除く11月までの3ヵ月は前月比マイナスとなり、夏場以降、製造業は雇用を絞っている。11月の売上が伸びた小売部門の雇用は2.8万人減と2ヵ月ぶりに減少した。

11月の失業率は9.8%と前月比0.2ポイント上昇し、今年4月以来7ヵ月ぶりの高い水準だ。これで9.0%超えは19ヵ月連続となり、第2次石油危機のときに並び、今回はこれを大幅に更新することは間違いない。失業者は1,511万人と前年よりも1.4%減少したが、仕事を諦め労働力人口にカウントされない人が増加し、非労働力人口は35.5%と前年よりも0.4ポイント高くなり、実際の失業者は数値以上である。失業率の高止まりから、長期失業者(27週以上)は631万人、前年を7.0%上回り、失業者の41.8%を占めている。

失業率が歴史的に高い水準に高止まりしていれば、消費の伸びは期待できない。10月の個人消費支出は前年比3.6%伸びたが、7月の4.1%を下回ったままであり、伸びは頭打ちである。高失業率が続けば、個人消費支出は2%台に低下するかもしれない。消費の低迷は設備投資マインドを悪化させるだけでなく、雇用にも影響が及ぶだろう。

9月の住宅価格指数は前月比-0.7%と3ヵ月連続の低下となった。4月末に初回住宅購入者向け減税措置が打ち切られたため、5月以降、住宅販売が減少していることが響いている。住宅需要の低迷が、住宅価格を引き下げ、さらに消費マインドを悪化させるというプロセスに入っているように思う。

雇用や住宅価格の動向などに基づけば、米国経済の回復の道筋はみえてこない。みえてこないばかりか、金融の不安定性が高まり、それが経済を再び撹乱する恐れもでてきている。金融危機を引き起こした張本人は焼け太りの状態となり、金融危機以前と米経済構造はさして変わっていない。これでは、近いうちに、また金融バブルが膨らみ、破裂するという愚が繰り返されることになる。

実体経済に必要な貨幣量をはるかに上回る貨幣を供給することは、放蕩息子にカネを与えることと同じだ。ろくでもないことに湯水のように使い、すってんてんになるのは目に見えている。米国のマネタリーベース(MB)・名目GDP比率は13.3%と金融危機以前に比べると2倍以上である。因みに日本のMBはGDPの20%と米国よりも6ポイント以上高く、しかもこの状態を長期間、続けていることから、日本経済はマネー漬けとなっている。マネー漬けとなっても、一向に景気がよくならないのは、実体経済の必要量をはるかに超えている部分の多くは日々の暮らしの中に入ってきていないからだ。日米の中央銀行によって供給されたマネーは、放蕩息子の浪費のように良からぬところで使われているのである。マネーを野放図にしている付けは、必ずバブル発生・破裂という形で回ってくることを、中央銀行は肝に銘じなければならない。

欧州がアイルランド支援を決め、ECBが資金供給や国債買い取りの継続を発表したことで、ひとまず欧州の金融が落ち着き、投機筋がマネーゲームに参戦してきたように思う。だが、欧州経済が厳しい状況に置かれていることは間違いなく、度々、今回のような危機が起こるだろう。財政を建て直すために、緊縮財政を強いられる国の経済は今年よりも悪化し、政治的な問題が噴出し、経済が混乱する可能性が高い。

EUの経済見通しによると、ユーロ圏の実質GDP成長率は2011年、1.5%と今年より0.2ポイント低くなる。現在、一人勝ちのドイツの減速がユーロ圏に大きく影響する見通しである。青息吐息のアイルランドは今年の-0.2%から0.9%へとプラスを見込んでいるが、金融部門が脆弱で財政を絞るとなれば、プラス成長は非現実的だ。為替の調整メカニズムが作用しないため、引き続き欧州の支援で再生を図るしかない。

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