投機が渦巻く日本の株式市場

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曽我 純:

日経平均株価は3週連続高となり、週末値では今年5月第2週以来の1万円台乗せとなった。予想株価収益率をみると日本株は海外に比べて割安ではなく、最近の日本株の上昇を説明できる材料はない。東証1部の売買代金の約7割を占める外人の買いで、株価は引き上げられている。商品市況があまりにも上昇しすぎたので、そこから撤退し、その資金を日本株に振り向けているのだろうか。株売り、債券買いのポジションを手仕舞う結果なのだろうか。いずれにしても投機資金による流入であることは間違いなく、流入が続くのか、途切れるのか、流出に転じるのかで日本株の帰趨は決まる。

株式市場が外人に7割も支配されていることは異常だ。今日本株に起こっていることは、新興国に投機資金が流入し市場が撹乱され、経済が混乱するのとおなじことである。海外の投機者によって、株価の変動が激しくなり、それにより日本経済が混乱するのでは困る。株式崩壊の90年代以降、何回株式の変動で経済が正常に機能しなくなったことだろう。日本経済は投機に弄ばれてきたといえる。投機から経済を護らなければいけないところを、投機を煽る政策を採ったことが最大の失敗であった。ケインズの「企業が投機の渦巻のなかの泡沫となると事態は重大である」(『一般理論』、p.159)との指摘は今の日本経済の実情を突いている。いまからでも株式から投機を遮断する取引税等の導入を図る必要がある。

■ はなはだ心もとないGDPの中身

1万円に乗せたことで、外人の当面の目標は達成されたと思う。今後、利益が上方修正されるような状況であれば、株価は持続するかもしれないが、これまでは、政府の経済政策により、日本経済は実力以上に嵩上げされていたが、今年度下期は政策効果が薄れていくことから、反動減に見舞われ、10-12月期以降のGDPは2四半期連続で減少するかもしれない。新車販売台数は10月、前年比26.7%減に落ち込み、景気にマイナスに作用しているが、エコポイントの薄型テレビ等も12月以降は、ポイント半減で売れ行きは激減するだろう。外需の輸出はすでに5ヵ月連続の前月比減となり、製造業の業績の足を引っ張っている。10月の鉱工業生産指数は大幅に低下する見通しであり、これも製造業の業績悪化を裏付けることになろう。

週初に発表された7-9月期のGDPをみても、政策効果があってもこの程度なのかという内容であった。デフレーターは前期比0.2%、前年比2.0%それぞれ低下した。前期比では2四半期連続、前年比では6四半期連続のマイナスである。名目GDPは前期比0.7%増加したが、4-6月期が前期比0.7%減だったため、1-3月期の規模に戻っただけだ。

0.7%増の寄与度をみると、最大は民間在庫品増加で0.4%、次が民間最終消費支出の0.2%である。まことに心もとない内容であり、これでは成長しているとはいえない。在庫はおそらく意図せざる増加であり、10-12月期はこれがマイナス幅をおおきくするだろう。民間最終消費支出が前期比0.4%伸びたくらいでは、成長率は決して高くならない。7-9月期の民間最終消費支出の規模は284.6兆円、GDPの58.9%を占めているが、前年よりも0.9ポイントの低下だ。民間最終消費支出は底であった09年1-3月期に比べても1.1%しか増加していない。

補助金、エコポイントがありながら民間最終消費支出が伸びないのは、報酬の低迷と将来の見通しが暗いからだ。事実、7-9月期の雇用者報酬は前期比0.1%減少しており、過去3四半期ほぼ同じである。前年比では1.0%増加しているが、これは前年同期が3.8%減少しているからであり、08年7-9月期に比較すると2.8%も減少している。家計の財布の紐はきつく縛られたままであり、消費の回復が期待できるような状態ではない。

■ デフレに近づく米国経済

米国経済も基本的には変化に乏しく、景気の足取りは重い。10月の小売売上高は前月比1.2%と大幅に伸びたが、自動車等を除けば0.4%とそれほどでもない。家具と家電はマイナスになるなど売上は全体に広がっていない。

10月の米鉱工業生産指数は前月比横ばいと前月のようにマイナスにはならなかったものの、それでも生産水準は金融危機の期間を除けば、6年前の04年秋の低い水準である。前年比では6月がピークとなり、すでに4ヵ月連続で伸び率は低下している。設備稼働率は74.8%と過去4ヵ月ほぼ横ばいだが、ハイテク関連は71.9%と全産業を下回っているばかりでなく、6月以降6ヵ月連続で低下している。

設備稼働率の回復の遅れは、消費者物価(CPI)の上昇を押える要因になっている。10月の米CPI(食品・エネルギーを除く)は前月比横ばいとなり、これで指数は3ヵ月同じである。CPIが横ばいになることは、カネとモノの交換が不活発になってきており、景気がよくないことを示している。CPIの前年比上昇率は0.6%と1957年以降では最低となり、米国はデフレ経済に近づきつつある。CPIは設備稼働率に遅行する傾向にあり、今後、設備稼働率が低下することになれば、日本のようにCPIはマイナスになるだろう。

デフレを示唆するもうひとつの指標に住宅着工件数を挙げることができる。10月は51.9万戸、前月比11.7%も減少し、最低であった09年4月以来の水準に落ち込んだ。4月末に減税が打ち切られてから、住宅着工は減少傾向にあり、これもCPIに影響している。住宅着工の縮小は消費減に繋がり、米国経済をデフレに近づけることになる。

今月に入り2度も預金準備率を引き上げた中国の引き締め策は明らかに米国への対抗措置だ。米国の金融緩和の効果を掻き消そうとしている。米国は中国の金融政策に振り回されている。おそらく、中国は利上げに踏み切り、さらに米国経済を追い詰めるだろう。米国は為替の問題を持ち出すことができなくなるかもしれない。米国は国内要因だけでなく中国からもデフレ圧力が掛かってきそうだ。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年11月21日 18:40.

米追加金融緩和策の弊害早くも露呈 は以前の記事です。

政治的処理能力が問われている欧州の金融危機 は以降の記事です。

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