米国経済を脅かす中国の利上げ

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曽我 純:

週末のG20はただ寄り集まっただけで、議長声明も陳腐な内容であり、為替相場はこれまでの流れに沿った動きをするだろう。米国が住宅バブル崩壊から立ち直ることができずに内需が低迷している状態では、ドル安により外需の拡大を図りたいのは当然である。米国にとってはいまの為替相場の動向が好ましいのである。唯一人民元にたいしてはドルが高いことが不満だが、体制が違う中国が相手ではどうすることもできない。米国が市場原理主義を唱え、グローバル経済を鼓舞し、世界経済(中国のWTO加盟)に組み入れたことの結果といえる。

中国問題は米国が蒔いた種だが、自分のことは棚に上げ、中国同様、通貨安戦略を採っている。追加金融緩和策をちらつかせているのもその一環である。日本はなすすべがなく、5週連続の円高ドル安だ。米国の通貨安戦略に加え、米国の家計・銀行部門の保有する不良資産、日本の経常黒字、日米物価格差等から円高ドル安はさらに進行するだろう。

FRBが金利をゼロに引き下げてから2年近く経過し、円とともにドルは世界中に散布されている。先進国の金利がいずれも低いのでドルや円を調達し、それを金利高の新興国に投資しているのだ。FRBが買いオペを実施し、資金供給しても、住宅バブル崩壊により不良資産を抱えているため国内の資金需要は弱く、マネーは海外に流失しがちである。日本もゼロ金利期間が長いだけに、世界中に投機マネーを供給してきたし、これからも供給するだろう。ただ、米国のドルは基軸通貨であり、ゼロ金利政策は円と比較にならないほど投機資金を世界のすみずみまで行き渡らせる。FRBのゼロ金利政策は米国の内需拡大に結びつかず、その影響は世界の株式・商品市場等に顕著にあらわれている。

FHFAは21日、管理下に置くFannie MaeとFreddie Macの経営再建で最大2,150億ドルの追加資金を必要とすると発表した。財務省からすでに1,500億ドルの公的資金を注入されているが、一向に事態は良くならない。6月末のバランスシートをみると、両者の合計総資産は5.59兆ドル、その大半をモーゲージローン(4.82兆ドル)が占める。S&Pケース・シラー住宅価格指数によると、7月の住宅価格の水準はピーク比約30%も下落しており、両者のモーゲージローンの不良資産額は計り知れない。10%の不良化でも約5,000億ドルのロスが発生していることになり、FHFAの試算はきわめて楽観的な数値といえる。

モーゲージの問題が蒸し返されていることは、まだまだ家計や銀行が抱えているモーゲージが膿を出し続けていることでもある。不良資産でなく健全な資産になっていれば、問題などでるはずがないからだ。米名目GDPに匹敵する約14兆ドルのモーゲージを2年ほどできれいにすることはできない。バランスシートから完全に除去しなければ、計上されている資産はますます劣化し、不良資産は増加の一途を辿る。そのような事態に陥れば、景気もそれに足を引っ張られ、日本のようにデフレとなり、慢性的な不況になる。米国経済はそのようなリスクを払拭しきれていない。

9月の米住宅着工件数は前月比0.3%増と3ヵ月連続で増加した。だが、7-9月期では前期比2.2%減であり、なかでも1戸建ては10.8%減少した。先行きを占う建築許可件数は9月、前月比5.6%減少し、前年も10.9%下回った。1戸建ては0.5%とプラスに転じたが、過去3ヵ月の水準はきわめて低く09年4月以来の低水準であり、米住宅市場は超低空飛行の状態にあり、失速する可能性もある。

9月の米鉱工業生産指数は前月比-0.2%と15ヵ月ぶりのマイナスになり、設備稼働率も74.7%と過去3ヵ月ほぼ変わらず、景気は曲がり角に差し掛かってきていることを示している。7-9月期では米鉱工業生産指数は前期比1.2%と伸び率は前期よりも0.6ポイント低下し、09年4-6月期以来の低い伸びだ。消費財の伸びは拡大したが、設備投資関連の鈍化が目立つ。特に、7-9月期のハイテク関連は1.5%と前期(5.3%)から大幅に低下し、設備稼働率も73.4%、前期比0.7ポイント低下した。

米景気先行指数は前月比0.3%と3ヵ月連続のプラスとなったが、一致指数は9月までの3ヵ月間横ばいとなり、ディフュージョン・インデックスは4月の100%から9月は50%まで低下している。先行性を示す一致・遅行比率も3ヵ月連続で低下しており、米国経済は景気後退へのシグナルを発している。07年12月以来の中国の突然の利上げは、為替でうるさい米国経済への当て付けとも取れる。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年10月24日 19:10.

中央銀行の金融政策に騙されてはならない は以前の記事です。

生産の急低下、株式に引導を渡す は以降の記事です。

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