米株式バブルによるドル安

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曽我 純:

日銀は5日、0.1%の政策金利を0%~0.1%に変更し、ゼロ金利の長期継続、さらに資産(国債、社債、指数連動型上場投資信託、不動産投資信託)買入等の基金を創設することを発表した。こうした措置で景気が好転するくらいであれば、とっくに日本経済はよくなっていたはずだ。0.1%の低下でなにができるというのだろうか。ゼロ金利も経験済みのことだし、政策変更の効果があらわれるところといえば、資産買入も加わり市場の価格形成の歪みや投機といった副作用がでてくるだけではないか。

8月の銀行貸出は前年を2.0%も下回っている半面、預金は2.7%も増加している。金利がほとんど付かなくても、保有コストが掛からないため銀行にかねが集まり、銀行はかねを持て余しているのだ。貸出がマイナスということは貸すよりも返済が多いことであり、そこへ預金が流入してくるので、銀行はかねをどうしていいのかわからない。一番手っ取り早いのは国債を買うことである。日銀も買うのだから、国債価格の上昇は間違いなく、その甘い汁を吸うために銀行も国債買いに走っている。このような状態が続けば、国債は供給不足に陥るだろう。新規の国債発行を抑制しようとしているが、国債需要が旺盛になるので発行を増額しなければならないことになるだろう。結局、家計の貯蓄増は国債発行というかたちで国が吸収し、政府の支出増となるのである。

銀行が国債を買い、それを日銀が買うという流れが強まり、0.8%台に低下した国債利回りはさらに低下するだろう。03年6月には0.4%台まで低下したが、2010年までの10年間の年率経済成長率がマイナスになるように、収益率の観点からは限りなく低下しても不思議ではない。

政策金利をゼロにしてもかねは実体経済のなかを循環しない。デフレでかねの価値が自動的に上がり、保有意欲は弥が上にも高まる。他方、借手は負債額が増価するので極力借入を抑える。家計はかねを貯め、企業は借金を減らすので貯蓄超過の状態が常態化している。ゼロ金利でもかねは実体経済には入って行かず、マネーゲームの中に入っていきやすい。ゼロ金利なので僅かの鞘を抜くことができれば、利益を収めることができるので、投機市場に流入しがちだ。だから、実体経済が沈滞していても投機だけが活発になり歪な経済になる。実体経済は低迷したまま投機だけが勢いを増すことになれば、早晩、投機は行き詰まり、破綻することになる。

特にそのような傾向が顕著にあらわれているのが米株式市場と金を中心とする商品市場である。9月の米非農業部門雇用者は前月比9.5万人減少したが、NYダウは5月以来約5ヵ月ぶりに11,000ドルを回復した。非農業部門雇用者は4ヵ月連続の前月比マイナスとなり、米国経済の状態は良くない。民間部門の雇用者は前月比6.4万人増加したが、政府部門が15.9万人減少した。民間部門の増加数も2ヵ月連続減である。政府部門の雇用者は2,223万人と非農業部門雇用者の17.1%を占め、製造業の約2倍に規模である。政府雇用者の64%は地方政府で雇用されており、財政の悪化などから教育関連が約5万人削減されるなど地方で7.6万人減少した。

9月のISM非製造業景況感指数は53.2と前月比1.7ポイント改善したが、7月に比べれば1.1ポイント下回っている。9月のISM製造業景況感指数は前月比マイナスとなり、5月以降では8月を除けばすべて前月を下回った。企業利益の伸び率も鈍化しつつあり、米企業経営者のマインドは優れない。そうした経済状況下で、FRBのゼロ金利政策の長期化や国債買入の増額期待を背景に、株式市場は上昇力を強め投機的になっている。

米10年債の利回りは週末、2.39%と09年1月以来の低い水準に低下した。期待成長率の低下とゼロ金利の継続期待が国債利回りの低下に繋がったと考えられる。期待成長率の低下にもかかわらず異常なゼロ金利の長期化が株高の期待感を高めているのだと思う。だが、実際に成長率鈍化が顕在化したときには株価は大幅な調整を余儀なくされるだろう。4-6月期の名目GDPは前年比3.9%伸びたが、10-12月期には現状の国債利回りに近い水準に鈍化する見通しである。

ゼロ金利の長期化で米国の借金体質はさらに強められるだろう。1980年代以降の米国負債残高は急増しており、2009年末には50.2兆ドルとGDPの3.5倍の規模に達した。経済を立ち直らせるためのゼロ金利が、金融のウエイトを高め、負債漬けからの脱却を難しくしている。

ドル安になっているのは米株式が実体経済を離れバブルになっているからだ。株高は短期資金がうまく波に乗っていることで維持されているが、一旦、下落するとみんなが売り手になるため一気に値崩れしてしまう。米株式がそのような状態にあるため、ドル離れが起きているのだ。バブル崩壊に伴う後遺症を引きずり、期待成長率が低下しているなかで株式バブルが形成されている。

日銀がゼロ金利復活を発表した5日は円安ドル高にふれたが、6日以降は3営業日連続の円高ドル安となり、8日は1ドル=81円台で引けた。1995年4月の過去最高値79円75銭を突破するのは時間の問題だ。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年10月10日 18:13.

景気後退期に入った日本経済 は以前の記事です。

中央銀行の金融政策に騙されてはならない は以降の記事です。

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