景気後退の局面が近づく日本経済

曽我 純:

日経平均株価は週末比1.4%増と2週連続で上昇した。半面、債券は3週連続で安く、これまでの債券買い、株式売りのポジションの一部が解消されたようだ。米失業保険申請件数の改善や米貿易統計の好意的解釈、さらには日本のGDPの上方修正など、過去の出来事を持ち出し、相場は煽られた。株式は先行性があると主張しながら、そうした考えを反故にし、単なるこじつけによって相場は持ち上げられた。景気が真剣に論じられたわけではなく、曖昧な状況のなかで醸し出された相場だけに、回復は一時的であり、長続きはしない。

GDPなどの経済指標を吟味すると政府、報道機関、それに歩調を合わせる証券会社等の上っ面の解釈とは正反対の結論がでてくる。名目GDP(2次速報値)は設備投資等の上方修正により、前期比-0.6%と1次速報値から0.3ポイントマイナス幅は縮小した。設備投資は前期比+1.5%と3四半期連続のプラスとなり、前年比でも1.6%増と7四半期ぶりのプラスとなった。設備投資は上方修正されたが、個人消費は変わらず、個人消費が不振のままでは、設備投資の回復も長持ちしないことは自明である。

先週、設備投資関連の指標がいくつか発表されたが、そこからいえることは、設備投資はすでに伸びの頂点近くにあり、今後、伸びは急速に鈍化する可能性が高いということである。そうした設備投資のピークアウトと輸出の減少により景気は悪化し、年内には景気後退のシグナルがでるだろう。

7月の機械受注によると、民需(船舶・電力を除く)は前月比8.8%と2ヵ月連続増となり、前年比では15.9%も増加した。特に、製造業は前月比10.1%、昨年の下落率が大きいとはいえ前年比では39.8%も拡大した。一方、非製造業(船舶・電力を除く)は前月比8.1%、前年比でも3.5%と回復力は弱い。民需に外需などを加えた受注総額も前年比23.4%と高い伸びを維持している。7月の民需(船舶・電力を除く)の前年比伸び率は06年6月以来約4年ぶり、受注総額は03年6月以来約7年ぶりの高い伸びとなった。機械受注の前年比伸び率のピーク近くに景気の山があることから、景気も向こう半年以内にピークを付けるのではないか。

9日発表の『法人企業景気予測調査(調査時点、8月15日)によると、2010年度上期(4月~9月)の全産業の設備投資(ソフトウエアを含む、土地を除く)は前年比11.8%と前回調査から4.1ポイント下方修正され、下期は5.8%と2.6ポイント上方修正された。下期は上方修正されたものの伸び率は上期の半分程度に鈍化する見通しである。四半期別では4-6月期の前年比-3.4%から7-9月期には27.6%の急増を見込んでおり、これから判断すれば、下期は急低下になり、設備投資の伸びは今がピークといえる。

2010年度の全産業の売上高は上期の4.7%から下期は1.2%に低下し、経常利益も54.5%から16.3%に鈍化すると予想されている。大企業全産業の景況判断BSI(「上昇」-「下降」、社数構成比)は7-9月期の7.1%から10-12月期には0.1%に低下する見通しである。

鉱工業生産の資本財出荷指数(輸送機械を除く)は7月、35.7%も伸びるなど設備投資関連指標は、いつ下落してもおかしくない高いところまできている。鉱工業生産指数の動きも鈍い。7月の生産指数(季節調整値)は95.3と5月を2ヵ月連続で下回っており、今後低下が顕著になれば、景気はあきらかに後退という判断が下される。過去の景気のピークはいずれも生産指数の高値近辺にあるからだ。

因みに、米鉱工業生産指数は6月の前月比横ばいから7月は1.0%伸びた。独は6月の0.6%減から7月は横ばいとなりもたついている。前年比では日本同様、ドイツは4月をピークに鈍化傾向がはっきりあらわれており、米国は6月の伸びがピークになりそうだ。

7月の景気動向指数によると先行指数は前月比0.8%低下し、3月をピークに低下傾向が鮮明である。先行性の強い一致・遅行指数比率も4月をピークに下落しており、景気の勢いは弱くなっている。一致指数は7月、前月比+0.5%と2ヵ月連続で上昇したが、4月以降は足踏み状態であり、やはり景気のテンポは緩やかになってきている。

各指標を3ヵ月前との比較で景気の拡大後退を見極めるディフュージョン・インデックスも景気の良い悪いの分かれ目である50%を先行指数は7月まで2ヵ月連続で下回った。昨年10月に100%を付けた後も今年4月までは高い水準を維持していたが、5月に大幅に低下してから、様子はがらりと変わってきた。一致指数は昨年11月に100%に達した後、今年5月までの6ヵ月間、連続して90%を超えていたが、6月、55%、7月、50%と大幅に低下した。一致指数が50%を上から下に切るときが、景気の山であるから、9月、10月にも一致指数は景気の転換点を捉えるかもしれない。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年9月12日 16:45.

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