有価証券取引税を復活させるべし

曽我 純:

日経平均株価は24日、昨年5月以来の9,000円割れとなり、週末値もその水準に戻ることなく引けた。急激な円高ドル安が下げの要因といわれているが、もともと海外株式に比較して日本株が割高であったことや企業業績を甘くみていたことが主因であり、為替はそのような曖昧な判断に鉄槌を下したまでのことだ。

株価が下落すれば市場の警鐘だとか督促相場だとかいつもの身勝手な要求がでてくるが、道楽息子の要求となんら変わるところはない。市場は常に正しい判断をしていると捉えている市場原理主義の人が、下落が激しくなると豹変し、政府や日銀にねだってくる。常にすべての条件を織り込み、適正な価格付けが成されているのであれば、政府・日銀の政策は一時的な効果にとどまり撹乱要因になるだけではないか。

人間がしていることは間違いだらけであり、市場もそれに違わず常に間違った価格付けをしている。だから価格は一瞬たりとも止まることはないのだ。特に、株式市場は心理的な要素が強くでる傾向があり、一方方向に行きやすく、また行き過ぎる。今回の相場も4月に業績誇張による11,000円超えという行き過ぎの反動であり、いまは適正な水準を摸索している過程ととらえるべきだ。政府や日銀が介入すれば、それだけ適正水準への移行が遅れ、無駄な時間を費やすことになる。

いまだに日本の株式売買高回転率は異常に高く、投機が渦巻いており、とてもまともな市場とはいえない。ほぼゼロ金利で税の優遇措置がとられるなど03年以降の回復から株式市場は投機に染まっている。「貯蓄から投資」などというばかげた標語を掲げ、国全体を投機に邁進させる運動がはびこった。浅ましい行為である。金融が経済の全面に出たときにうまくいったことがあるだろうか。1929年の米大恐慌を持ち出すまでもなく、マネーがマネーのために活動することは投機の爆発的な拡散と崩壊であり、それによって経済は破壊されることになる。金融はあくまでも家計や企業活動という実物経済を支えるための脇役であり、それが経済の主役に躍り出れば、経済はマネーに撹乱され、激しい恐慌に陥ることになる。

日本の株式市場は依然博打の状態から抜け出せず、それが日本経済の長期不況の原因のひとつになっている。株式や為替などに現を抜かすのではなく、本業に精を出す必要がある。いくら損失を出せば株式から手を引くことができるのだろうか。企業や家計はリスクの高い株式をバランスシートから外さなければならない。儲かるのは胴元や証券会社、投資信託会社だけであり、株式を保有している家計、企業はそのことをわかっていない。家計や企業は金融機関からこれまでいくら吸い取られたことか。政府のお墨付けで株式や投資信託に預けたお金が目減りし、将来に不安を招いていることも日本経済にマイナスに影響している。

政府や日銀も株安や円高ドル安を止める手立ては無い。03年から1年3ヵ月の間に約35兆円の円売り介入をしたけれども、円高を阻止することはできなかった。日本だけの単独介入では為替相場を動かすことはできない。政府の景気対策も見え透いたものであるし、日銀の貸出も日銀がゼロ金利で企業に直接貸し付けるのであれば借手は出てくるけれども、そのようなことはできるはずがない。7月の消費者物価は前月比-0.3%と2ヵ月連続の低下となりデフレは強まりつつある。銀行の貸出は7月、前年比-1.9%と前年割れが続いており、企業などは借金を返している。

金融の肥大化を防ぎ、日本経済を正常にするためには有価証券取引税を復活させるべきだ。税負担によって、超短期売買を追い払うことができ、市場を正常な姿に戻すことができる。0.5%の税率でもいまの東証1部の売買代金を前提にすれば年1兆円超の税収になる。譲渡益課税は税率を20%に戻す。こうした措置をとれば、長期的には日本経済にプラスになる。投機が鎮まり、より長期の視点から株式を考えることから、経済の不安定要因のひとつが取り除かれ、経済にプラスに作用するだろう。株式関連業種は縮小する半面、非金融部門に資源を投入できる余裕がでてくる。
有価証券取引税を復活させれば、外人は慌てて日本株を売るだろう。おそらく売却して手にした円はドルに交換され、円安ドル高が急速に進行するに違いない。これまでのありきたりの政策ではなく、強い意志を示す政策でなければ、市場だけでなく日本経済もよくならない。

企業収益を決定付けるといってよい輸出が減少している。7月の輸出(季節調整値)は前月比1.4%減と4月をピークに3ヵ月連続のマイナスである。これから判断すると、製造業の利益はすでにピークアウトしていることになる。輸出(金額)の前年比伸び率も7月、23.5%と5ヵ月連続の低下となり、より顕著に輸出の勢いが弱くなっていることがわかる。特に、アジアへの輸出の伸びが鈍化しており、欧米の景気鈍化がアジアへも波及しているようだ。

先週発表の米住宅関連指標はいずれも酷いものであった。4-6月期のGDPも実質前期比0.4%と下方修正され、バーナンキFRB議長も27日の講演で「生産と雇用の回復ペースは減速している」と述べたが、7月以降は減速ではなく後退ではないか。7月、FRBは実質GDPの予想伸び率を3.0%~3.5%(2010年第4四半期の前年比)へと4月から下方修正したが、いまの経済状態では1%台の成長にとどまるだろう。 FRBも金利の下げ余地はほとんどなく、買オペの増額くらいだが、米商業銀行の貸出は7月、前年比-1.2%のマイナスであり、銀行は現金を入手しても借手を見つけ難い。事ここに至っては、中央銀行では成す術がなくお手上げの状態といえる。

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この記事について

この記事は「編集者」の寄稿です。2010年8月29日 19:22.

日本はデフレ、米国は住宅バブル破裂でマネー回らず は以前の記事です。

米雇用統計を過少評価した市場 は以降の記事です。

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