日本はデフレ、米国は住宅バブル破裂でマネー回らず

曽我 純:

日経平均株価は2週連続の下落となり、昨年11月第4週以来の低い水準で引けた。他方、債券利回りは18日、0.9%まで低下し、これで7営業日連続の1%割れである。株式売り債券買いは巨額の利益を懐に入れたことだろう。国内と米国景気が良くないことに加えて、円高の進行が株売り債券買いという美人投票に投機家を走らせている。4-6月期の名目GDPは前年比0.2%伸びたが、10-12月期は、再びマイナス成長になる可能性が高いことから、債券利回りの一段の低下は十分に考えられる。

3ヵ月前と比較すると、欧米の株価指数が横ばいか上回っているのに対して日経平均株価だけが大きく下落している。下落したけれども、株価収益率(=株価/利益)は依然欧米よりも高く、日本株は割高である。日本はマイナス成長経済なので株価収益率は限りなく低くならなければならないはずだ。現在、日経平均株価の予想株価収益率は16倍弱だが10倍以下に低下しても不思議ではない。利益が変わらなければ、株価は3分の2、いや2分の1に下落してやっと妥当な水準に達したといえるのではないか。

4-6月期の名目GDPは前期比0.9%減と3四半期ぶりのマイナスである。09年7-9月期の底から0.8%の増加にとどまり、日本経済はまさに底を這っている状態だ。これほど低迷しているのは、民間最終消費支出が不振であり、4-6月期も5四半期前の底(09年1-3月期)に近い水準にあるからだ。GDPの約6割を占める民間最終消費支出が伸びなければ、経済は拡大するわけがない。4-6月期の雇用者報酬は前期比0.1%減少し、1-3月期を除けば08年4-6月期以降マイナスであり、報酬が減少し、先行きも期待できないようでは、消費は伸びない。6月の失業率は5.3%と4ヵ月連続の上昇となり、不確実性が高まる環境下でだれが消費を増やすだろうか。

4-6月期のデフレーターは前年比-1.8%と前期よりも1ポイントマイナス幅は縮小したが、こうしたデフレが消費よりもマネー選好を強め、マネーの流を止めている。デフレは今になって始まったわけではなく、1994年頃からの現象であり、デフレは日本経済に染み込んでいる。人口減少下でのデフレ克服は通常の金融政策では歯が立たない。日銀が買オペを増額し、市中にマネーを供給しても、だれも借金を増やそうとはしないので結局金融機関にとどまり、国債に回ることになる。日銀の買オペは金融機関の国債を吸収し、金融機関は国が発行する国債を引き受ける。国債発行で手にしたマネーは国の予算として使われるが、総歳出は大幅に増額されないので、財政効果もさして期待できない。

米国経済の行方からみれば、NYダウも割高だ。景気後退観測を背景に米債券利回りは2%台半ばまで低下してきた。7月の米住宅着工件数は54.6万戸と低迷し、許可件数のうち特に一戸建ては前年を13.2%も下回り、住宅は再び減少が濃厚になってきた。住宅が悪化することは、バブル崩壊の処理が長引くだけでなく、個人消費を冷やし、延いては景気の後退に繋がる。

FRBが政策金利をほぼゼロに引き下げてから1年9ヵ月経過しようとしているが、商業銀行の住宅貸付は7月、前年比-4.6%と最悪の前月よりも0.1%ポイントの小幅改善にとどまり、不動産市場は萎縮したままだ。通常、政策金利が下がれば、それにやや遅れて不動産貸付も回復していたが、今回はまったく反応しない。下げられないところまで下げてもまだ貸出は減少する。それだけ、不動産バブル破裂の後遺症は大きく、今の不動産市場は正常な状態からは程遠いということだ。商業銀行の不動産貸付は7月、3.65兆ドルとピーク(09年5月)比5.7%減にとどまり、総貸付に占める割合も53.4%と引き続き高く、銀行が正常な姿に戻るには、5年、10年の歳月が必要になるかもしれない。

米住宅ローンの中心的役割を担っている住宅金融公社(Fannie Mae とFreddie Mac)は赤字から脱却できず、8月5日、財務省に公的資金の追加申請をした。Fannie Mae とFreddie Macの住宅抵当貸付の合計残高は6月末、4.82兆ドル、総資産は5.59兆ドルと巨額であり、財務省は公的資金を底なし沼に注いでいるようだ。米国が経済を立て直す気概があるのであれば、住宅金融公社にいつまでもだらだら公的資金を与えるのではなく、思い切って清算する以外にはない。このような状態が続けば、病状は回復せず、20年間もの不況から抜け出すことができない日本の二の舞を演じることにも成りかねない。財務省は住宅金融公社にすでに累計1,500億ドルものマネーを注入しているが、経済は再下降に陥ろうとしている。ということは住宅金融公社へのマネー供給は無益だったということである。公的資金の注入は不良債権の補填に使われるだけで、マネーの本来の機能を発揮することができないからだ。マネーが循環できなければ、モノやサービスの遣り取りも行うこともできない。マネーが経済全体でよく回るような環境が整備されなければ、経済活動は決して活発にはならないだろう。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年8月24日 11:35.

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有価証券取引税を復活させるべし は以降の記事です。

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