年末に向け深刻化する世界経済

曽我 純:

日経平均株価は7月末も9,000円台で引け、これで3ヵ月連続の1万円割れである。重要な経済指標が製造業の先行き不安を示唆しており、株式保有のリスクは高まっている。FRB議長が議会証言で、景気に対して「異例なほど不確か」と表現したことなどから、米株式も頭打ちとなっている。ほぼゼロ金利の状態が長期化することや資金需要が弱くなっていることからユーロドル(3ヵ月物)金利は6月半ばをピークに低下しつつある。ユーロ圏よりも米景気に対して先行き不透明感が強まり、対ドルのユーロ相場は約3ヵ月ぶりに1.3ドル台に上昇した。ユーロ高ドル安により、投機資金は商品市況に流入しつつある。円ドル相場にも、景況感のわずかな違いやそうした違いによる変化を先取りする動きがあらわれている。

円高は輸出の手取額に大きな影響を及ぼしている。特に、ユーロに対して円は大幅に上昇したことから、6月のユーロへの輸出は数量では27.2%伸びたものの、価格が14.3%下落し、金額では9.0%にとどまった。対米輸出も価格が5.0%低下し、手取額に影響した。

為替が輸出にマイナスに作用しているとはいえ、数量でもピークアウトしており、内需が不振の日本経済は厳しい局面に立たされている。6月の輸出(数量)は前年比27.5%と2月をピークに伸び率は4ヵ月連続で鈍化している。対米は前月の伸びを上回ったが、ユーロとアジアは低下した。特に、アジアは5ヵ月連続で低下し、伸び率も米国、ユーロを下回った。アジアへの輸出の3分の1を占める中国は、金額で前年比22.0%とアジアの31.6%よりも低く、世界的に需要が弱くなっていることが窺える。

前月比でみても6月の輸出(季節調整値)は-1.8%と2ヵ月連続で減少し、昨年12月以来の低い水準に低下した。四半期ベースでも4-6月期は前期比1.1%減と5四半期ぶりに減少し、これまで日本経済を牽引してきた輸出は一変、マイナス要因になってきた。

鉱工業生産指数は輸出との相関関係が極めて強く、輸出の伸び悩みが生産指数にはっきりあらわれてきた。6月の鉱工業生産指数は前月比1.5%減と4ヵ月ぶりのマイナスだ。出荷は2ヵ月連続減となる半面、在庫は3ヵ月連続の増加となり、在庫の予想外の増加が生産の低下に繋がっている。6月の生産指数は前月時点の予想(0.4%)を下回り、7月予想も前月の1.0%から-0.2%に下方修正された。

ウエイトの高い電子部品・デバイス工業の生産は前月比4.3%減少し、在庫が2ヵ月連続で増加したほか、情報通信工業の生産も2.1%減、在庫は32.7%も急増するなど製造業の主力分野に陰りがみえる。製造業全体で広く使用される非鉄金属の生産は前月比-2.7%と3ヵ月連続のマイナスとなり、多くの分野で生産調整が進行している。
 
6月の鉱工業生産指数の前年比伸び率は17.0%と3月のピーク(31.8%)から大幅に鈍化する一方、在庫は1.2%と09年1月以来1年半ぶりに前年を上回った。在庫が意図せざるものであり、これからも増加率が拡大することになれば、生産の伸びは著しく低下することになるだろう。

米国では住宅減税の打ち切りで住宅着工件数は5月、6月と2ヵ月連続で減少した。6月分は54.9万戸と4月比19.1%も減少し、昨年の9月以来の規模に落ち込んだ。住宅に連動して小売売上高も6月まで2ヵ月連続の前月比減となり、消費者マインドも悪化してきた。米住宅がなかなか回復できないのは、住宅バブルが完全に清算されていないからだ。住宅金融公社は政府支援がなければ存続できず、1兆ドルもの住宅抵当証券をFRBが引き続き抱えている状況では、住宅市場の回復は望むべくも無い。

週末、4-6月期の米GDPが公表されたが、実質では前期比0.6%と伸び率は2四半期連続で低下し、景気の減速が顕著になってきた。おそらく7-9月期は設備投資や住宅が減少に転じ、景気の減速はより強まるだろう。米国経済の拡大が緩慢に推移しているのは、経済のエンジンである個人消費が、雇用の改善の遅れなどにより、前期比0.4%とスローダウンしたからだ。政府の経済対策の効果は、今後ますます弱くなり、このままでは民間部門主導の回復は難しい。

住宅部門だけを取り上げても、06年1月のバブル絶頂期には年率229.2万戸に達していたが、いまの水準はまだその24%にすぎない。229.2万戸の住宅を埋め尽くす膨大な消費が経済を肥大化させたが、それが4分の1に縮小しただけでなく、債務の返済に追われているのだから、消費が回復するには相当の時間を要する。ユーロについても住宅バブル崩壊の影響があるし、日本は経済、政治の両面で右往左往し続けており、混迷から抜け出す処方箋を描ける知恵がまったくでてこない。年末にむけて、世界経済は深刻な様相をみせるだろう。

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この記事について

この記事は「編集者」の寄稿です。2010年8月 1日 20:50.

経済指標を等閑にした株式 は以前の記事です。

思慮に欠ける政治家の言説がデフレを強める は以降の記事です。

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