2010年8月 Archives

有価証券取引税を復活させるべし

曽我 純:

日経平均株価は24日、昨年5月以来の9,000円割れとなり、週末値もその水準に戻ることなく引けた。急激な円高ドル安が下げの要因といわれているが、もともと海外株式に比較して日本株が割高であったことや企業業績を甘くみていたことが主因であり、為替はそのような曖昧な判断に鉄槌を下したまでのことだ。

株価が下落すれば市場の警鐘だとか督促相場だとかいつもの身勝手な要求がでてくるが、道楽息子の要求となんら変わるところはない。市場は常に正しい判断をしていると捉えている市場原理主義の人が、下落が激しくなると豹変し、政府や日銀にねだってくる。常にすべての条件を織り込み、適正な価格付けが成されているのであれば、政府・日銀の政策は一時的な効果にとどまり撹乱要因になるだけではないか。

人間がしていることは間違いだらけであり、市場もそれに違わず常に間違った価格付けをしている。だから価格は一瞬たりとも止まることはないのだ。特に、株式市場は心理的な要素が強くでる傾向があり、一方方向に行きやすく、また行き過ぎる。今回の相場も4月に業績誇張による11,000円超えという行き過ぎの反動であり、いまは適正な水準を摸索している過程ととらえるべきだ。政府や日銀が介入すれば、それだけ適正水準への移行が遅れ、無駄な時間を費やすことになる。

いまだに日本の株式売買高回転率は異常に高く、投機が渦巻いており、とてもまともな市場とはいえない。ほぼゼロ金利で税の優遇措置がとられるなど03年以降の回復から株式市場は投機に染まっている。「貯蓄から投資」などというばかげた標語を掲げ、国全体を投機に邁進させる運動がはびこった。浅ましい行為である。金融が経済の全面に出たときにうまくいったことがあるだろうか。1929年の米大恐慌を持ち出すまでもなく、マネーがマネーのために活動することは投機の爆発的な拡散と崩壊であり、それによって経済は破壊されることになる。金融はあくまでも家計や企業活動という実物経済を支えるための脇役であり、それが経済の主役に躍り出れば、経済はマネーに撹乱され、激しい恐慌に陥ることになる。

日本の株式市場は依然博打の状態から抜け出せず、それが日本経済の長期不況の原因のひとつになっている。株式や為替などに現を抜かすのではなく、本業に精を出す必要がある。いくら損失を出せば株式から手を引くことができるのだろうか。企業や家計はリスクの高い株式をバランスシートから外さなければならない。儲かるのは胴元や証券会社、投資信託会社だけであり、株式を保有している家計、企業はそのことをわかっていない。家計や企業は金融機関からこれまでいくら吸い取られたことか。政府のお墨付けで株式や投資信託に預けたお金が目減りし、将来に不安を招いていることも日本経済にマイナスに影響している。

政府や日銀も株安や円高ドル安を止める手立ては無い。03年から1年3ヵ月の間に約35兆円の円売り介入をしたけれども、円高を阻止することはできなかった。日本だけの単独介入では為替相場を動かすことはできない。政府の景気対策も見え透いたものであるし、日銀の貸出も日銀がゼロ金利で企業に直接貸し付けるのであれば借手は出てくるけれども、そのようなことはできるはずがない。7月の消費者物価は前月比-0.3%と2ヵ月連続の低下となりデフレは強まりつつある。銀行の貸出は7月、前年比-1.9%と前年割れが続いており、企業などは借金を返している。

金融の肥大化を防ぎ、日本経済を正常にするためには有価証券取引税を復活させるべきだ。税負担によって、超短期売買を追い払うことができ、市場を正常な姿に戻すことができる。0.5%の税率でもいまの東証1部の売買代金を前提にすれば年1兆円超の税収になる。譲渡益課税は税率を20%に戻す。こうした措置をとれば、長期的には日本経済にプラスになる。投機が鎮まり、より長期の視点から株式を考えることから、経済の不安定要因のひとつが取り除かれ、経済にプラスに作用するだろう。株式関連業種は縮小する半面、非金融部門に資源を投入できる余裕がでてくる。
有価証券取引税を復活させれば、外人は慌てて日本株を売るだろう。おそらく売却して手にした円はドルに交換され、円安ドル高が急速に進行するに違いない。これまでのありきたりの政策ではなく、強い意志を示す政策でなければ、市場だけでなく日本経済もよくならない。

企業収益を決定付けるといってよい輸出が減少している。7月の輸出(季節調整値)は前月比1.4%減と4月をピークに3ヵ月連続のマイナスである。これから判断すると、製造業の利益はすでにピークアウトしていることになる。輸出(金額)の前年比伸び率も7月、23.5%と5ヵ月連続の低下となり、より顕著に輸出の勢いが弱くなっていることがわかる。特に、アジアへの輸出の伸びが鈍化しており、欧米の景気鈍化がアジアへも波及しているようだ。

先週発表の米住宅関連指標はいずれも酷いものであった。4-6月期のGDPも実質前期比0.4%と下方修正され、バーナンキFRB議長も27日の講演で「生産と雇用の回復ペースは減速している」と述べたが、7月以降は減速ではなく後退ではないか。7月、FRBは実質GDPの予想伸び率を3.0%~3.5%(2010年第4四半期の前年比)へと4月から下方修正したが、いまの経済状態では1%台の成長にとどまるだろう。 FRBも金利の下げ余地はほとんどなく、買オペの増額くらいだが、米商業銀行の貸出は7月、前年比-1.2%のマイナスであり、銀行は現金を入手しても借手を見つけ難い。事ここに至っては、中央銀行では成す術がなくお手上げの状態といえる。

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曽我 純:

日経平均株価は2週連続の下落となり、昨年11月第4週以来の低い水準で引けた。他方、債券利回りは18日、0.9%まで低下し、これで7営業日連続の1%割れである。株式売り債券買いは巨額の利益を懐に入れたことだろう。国内と米国景気が良くないことに加えて、円高の進行が株売り債券買いという美人投票に投機家を走らせている。4-6月期の名目GDPは前年比0.2%伸びたが、10-12月期は、再びマイナス成長になる可能性が高いことから、債券利回りの一段の低下は十分に考えられる。

3ヵ月前と比較すると、欧米の株価指数が横ばいか上回っているのに対して日経平均株価だけが大きく下落している。下落したけれども、株価収益率(=株価/利益)は依然欧米よりも高く、日本株は割高である。日本はマイナス成長経済なので株価収益率は限りなく低くならなければならないはずだ。現在、日経平均株価の予想株価収益率は16倍弱だが10倍以下に低下しても不思議ではない。利益が変わらなければ、株価は3分の2、いや2分の1に下落してやっと妥当な水準に達したといえるのではないか。

4-6月期の名目GDPは前期比0.9%減と3四半期ぶりのマイナスである。09年7-9月期の底から0.8%の増加にとどまり、日本経済はまさに底を這っている状態だ。これほど低迷しているのは、民間最終消費支出が不振であり、4-6月期も5四半期前の底(09年1-3月期)に近い水準にあるからだ。GDPの約6割を占める民間最終消費支出が伸びなければ、経済は拡大するわけがない。4-6月期の雇用者報酬は前期比0.1%減少し、1-3月期を除けば08年4-6月期以降マイナスであり、報酬が減少し、先行きも期待できないようでは、消費は伸びない。6月の失業率は5.3%と4ヵ月連続の上昇となり、不確実性が高まる環境下でだれが消費を増やすだろうか。

4-6月期のデフレーターは前年比-1.8%と前期よりも1ポイントマイナス幅は縮小したが、こうしたデフレが消費よりもマネー選好を強め、マネーの流を止めている。デフレは今になって始まったわけではなく、1994年頃からの現象であり、デフレは日本経済に染み込んでいる。人口減少下でのデフレ克服は通常の金融政策では歯が立たない。日銀が買オペを増額し、市中にマネーを供給しても、だれも借金を増やそうとはしないので結局金融機関にとどまり、国債に回ることになる。日銀の買オペは金融機関の国債を吸収し、金融機関は国が発行する国債を引き受ける。国債発行で手にしたマネーは国の予算として使われるが、総歳出は大幅に増額されないので、財政効果もさして期待できない。

米国経済の行方からみれば、NYダウも割高だ。景気後退観測を背景に米債券利回りは2%台半ばまで低下してきた。7月の米住宅着工件数は54.6万戸と低迷し、許可件数のうち特に一戸建ては前年を13.2%も下回り、住宅は再び減少が濃厚になってきた。住宅が悪化することは、バブル崩壊の処理が長引くだけでなく、個人消費を冷やし、延いては景気の後退に繋がる。

FRBが政策金利をほぼゼロに引き下げてから1年9ヵ月経過しようとしているが、商業銀行の住宅貸付は7月、前年比-4.6%と最悪の前月よりも0.1%ポイントの小幅改善にとどまり、不動産市場は萎縮したままだ。通常、政策金利が下がれば、それにやや遅れて不動産貸付も回復していたが、今回はまったく反応しない。下げられないところまで下げてもまだ貸出は減少する。それだけ、不動産バブル破裂の後遺症は大きく、今の不動産市場は正常な状態からは程遠いということだ。商業銀行の不動産貸付は7月、3.65兆ドルとピーク(09年5月)比5.7%減にとどまり、総貸付に占める割合も53.4%と引き続き高く、銀行が正常な姿に戻るには、5年、10年の歳月が必要になるかもしれない。

米住宅ローンの中心的役割を担っている住宅金融公社(Fannie Mae とFreddie Mac)は赤字から脱却できず、8月5日、財務省に公的資金の追加申請をした。Fannie Mae とFreddie Macの住宅抵当貸付の合計残高は6月末、4.82兆ドル、総資産は5.59兆ドルと巨額であり、財務省は公的資金を底なし沼に注いでいるようだ。米国が経済を立て直す気概があるのであれば、住宅金融公社にいつまでもだらだら公的資金を与えるのではなく、思い切って清算する以外にはない。このような状態が続けば、病状は回復せず、20年間もの不況から抜け出すことができない日本の二の舞を演じることにも成りかねない。財務省は住宅金融公社にすでに累計1,500億ドルものマネーを注入しているが、経済は再下降に陥ろうとしている。ということは住宅金融公社へのマネー供給は無益だったということである。公的資金の注入は不良債権の補填に使われるだけで、マネーの本来の機能を発揮することができないからだ。マネーが循環できなければ、モノやサービスの遣り取りも行うこともできない。マネーが経済全体でよく回るような環境が整備されなければ、経済活動は決して活発にはならないだろう。

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思慮に欠ける政治家の言説がデフレを強める

曽我 純:

10年物国債の利回りが、約7年ぶりに1%を下回った。政治家の思いつきのような思慮に欠ける消費税率引き上げ議論が、国債買いに弾みをつけた。消費税率の引き上げを持ち出すだけで、個人消費は萎縮し、日本経済のデフレはさらに酷くなることが予想されるからだ。上げるといっても数年後だから、あるいは景気が回復してからなどと条件をつけても、上げることは間違いないので、そのとき経済は急角度で落ち込むことになるだろう。総人口の減少と高速高齢化という体力弱体化の著しい状況下で、消費税率引き上げは想像以上の経済収縮を引き起こすはずだ。安易な増税方法を採用するまえに、いままでほったらかしていた不公平な税制を改めるなど成すべきことは多々ある。

08年度で全法人数の71.5%が欠損で法人税を納めていない状況でありながら、政治だけでなくマスコミからも法人税率の引き下げが必要だという論調が多い。消費税率を引き上げ、法人税率を引き下げることが強い経済になる方法だと宣う。需要が減退するような税制が経済をなぜ強くすることがきるのだろうか。こうした矛盾した考えを平然と取り上げ、それに対してだれも不平不満を鳴らすことなく、沈黙している。常識が通用しないで、一方方向に走り出す日本の変わらぬ習性が、日本経済衰退の推進力になっているといえる。

税収がこれほど不足していながら法人税率の低下を主張するとは、普通では考えられない。法人税率を下げて本当に強い経済が実現できるのだろうか。税率引き下げによる純利益拡大で企業は積極的に設備投資を増やすのだろうか。

大手都市銀行は1996年度以降ほとんど税金を払っていない。しかも、大半の都市銀行は実質的には破綻したにもかかわらず、それでも、1億円を超える所得を得ている銀行経営者はいるし、従業員の給与も高い。銀行が社会の常識から外れた行動を取っていることをこれほど如実に示している例はない。だからバブルが破裂して20年以上経過しても、銀行組織は活性化せず収益率も改善しないのだ。

銀行等の金融機関を除く法人を取り上げてみても、たとえ法人税率を引き下げ純利益が増加しても、それで企業が競争力を強化できる方策を採るとはいえない。90年代以降の企業行動を顧みるならば、法人税の引き下げが企業体質の改善に結びつき、収益率を引き上げることができたかというと、否定的に答えざるをえない。

『法人企業統計』によると、全産業の保有している投資有価証券は08年度末、192.8兆円と10年前に比較して約2.6倍にも膨れている。この数字は法人税率の引き下げは、日本経済の回復手段にならない裏付けとなる。企業の要求と行動は矛盾しているのだ。手元流動資産は10年前とほぼ同じ規模だが、投資有価証券だけは異常に増加しており、日本企業は稼いだ利益の多くを投資有価証券に投入していることがわかる。これは現金が有価証券に移転しただけであり、こうした使い方では、企業の利益が増加しても、経済は強くならず、法人税率の低下は、政府や経済界の主張するような有効な結果をまったくもたらさない。すでに企業は十分な資金を所有しており、使途で悩んでいるのだ。そのような企業に税金を減額してなにになるのだろう。

財政赤字の問題は貯蓄と投資の恒等関係に入りこんでいるため、財政赤字を改善する方法を見つけることはできない。方程式ならば解くことができるけれども、恒等式であるためにあるがままの状態を容認するしかない。貯蓄が一定で、設備投資や輸出超過額が拡大すれば、財政赤字は縮小するが、貯蓄が増加すれば、そうともいえない。実際に、これから設備投資や輸出超過額が増加するとは考え難く、財政の負担は容易に軽くならないだろう。貯蓄の減少が政府支出拡大に歯止めを掛けることになる。ただ、日本人の特性から、所得が減少しても貯蓄率が上昇することも予想され、貯蓄の減少はかなり先のことになるだろう。それまでは財政赤字がそれを吸収するという状態が続くかもしれない。企業収益の一部は財政赤字に依存しており、他の事情が変わらなければ、財政赤字の削減は企業収益にマイナスに作用する。企業にとって財政赤字削減は声を大にして言えないことなのである。

政治家たちの消費税率引き上げや財政赤字削減シナリオに加えて、世界景気のピークアウトを示す経済指標があきらかになり、債券買い株式売りのポジションはさらに積み上げられるだろう。

6月のOECD景気先行指数は前月比0.1%減と09年2月以来1年4ヵ月ぶりに前月を下回った。日本は0.1%のプラスだが、米国がマイナスになったほか、フランスやイギリスも前月比減となった。アジア主要5ヵ国は3月以降4ヵ月連続の低下となり、先進国よりも早く景気減速は始まっている。

7月の米非農業部門雇用者数は前月比13.1万人と2ヵ月連続の減少となり、6月以降米景気は拡大から縮小に転じた可能性が高い。巷間、金融政策の追加策が叫ばれているが、政策金利がほぼゼロの状態では、金融政策によって景気を持ち上げることはできない。財政の出動がなければ米国経済は景気後退に陥ることになる。1ドル=85円台に進行した円高ドル安は、相対的な米景気の悪化により、80円を目指すことになるだろう。
(来週は休みます)

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年末に向け深刻化する世界経済

曽我 純:

日経平均株価は7月末も9,000円台で引け、これで3ヵ月連続の1万円割れである。重要な経済指標が製造業の先行き不安を示唆しており、株式保有のリスクは高まっている。FRB議長が議会証言で、景気に対して「異例なほど不確か」と表現したことなどから、米株式も頭打ちとなっている。ほぼゼロ金利の状態が長期化することや資金需要が弱くなっていることからユーロドル(3ヵ月物)金利は6月半ばをピークに低下しつつある。ユーロ圏よりも米景気に対して先行き不透明感が強まり、対ドルのユーロ相場は約3ヵ月ぶりに1.3ドル台に上昇した。ユーロ高ドル安により、投機資金は商品市況に流入しつつある。円ドル相場にも、景況感のわずかな違いやそうした違いによる変化を先取りする動きがあらわれている。

円高は輸出の手取額に大きな影響を及ぼしている。特に、ユーロに対して円は大幅に上昇したことから、6月のユーロへの輸出は数量では27.2%伸びたものの、価格が14.3%下落し、金額では9.0%にとどまった。対米輸出も価格が5.0%低下し、手取額に影響した。

為替が輸出にマイナスに作用しているとはいえ、数量でもピークアウトしており、内需が不振の日本経済は厳しい局面に立たされている。6月の輸出(数量)は前年比27.5%と2月をピークに伸び率は4ヵ月連続で鈍化している。対米は前月の伸びを上回ったが、ユーロとアジアは低下した。特に、アジアは5ヵ月連続で低下し、伸び率も米国、ユーロを下回った。アジアへの輸出の3分の1を占める中国は、金額で前年比22.0%とアジアの31.6%よりも低く、世界的に需要が弱くなっていることが窺える。

前月比でみても6月の輸出(季節調整値)は-1.8%と2ヵ月連続で減少し、昨年12月以来の低い水準に低下した。四半期ベースでも4-6月期は前期比1.1%減と5四半期ぶりに減少し、これまで日本経済を牽引してきた輸出は一変、マイナス要因になってきた。

鉱工業生産指数は輸出との相関関係が極めて強く、輸出の伸び悩みが生産指数にはっきりあらわれてきた。6月の鉱工業生産指数は前月比1.5%減と4ヵ月ぶりのマイナスだ。出荷は2ヵ月連続減となる半面、在庫は3ヵ月連続の増加となり、在庫の予想外の増加が生産の低下に繋がっている。6月の生産指数は前月時点の予想(0.4%)を下回り、7月予想も前月の1.0%から-0.2%に下方修正された。

ウエイトの高い電子部品・デバイス工業の生産は前月比4.3%減少し、在庫が2ヵ月連続で増加したほか、情報通信工業の生産も2.1%減、在庫は32.7%も急増するなど製造業の主力分野に陰りがみえる。製造業全体で広く使用される非鉄金属の生産は前月比-2.7%と3ヵ月連続のマイナスとなり、多くの分野で生産調整が進行している。
 
6月の鉱工業生産指数の前年比伸び率は17.0%と3月のピーク(31.8%)から大幅に鈍化する一方、在庫は1.2%と09年1月以来1年半ぶりに前年を上回った。在庫が意図せざるものであり、これからも増加率が拡大することになれば、生産の伸びは著しく低下することになるだろう。

米国では住宅減税の打ち切りで住宅着工件数は5月、6月と2ヵ月連続で減少した。6月分は54.9万戸と4月比19.1%も減少し、昨年の9月以来の規模に落ち込んだ。住宅に連動して小売売上高も6月まで2ヵ月連続の前月比減となり、消費者マインドも悪化してきた。米住宅がなかなか回復できないのは、住宅バブルが完全に清算されていないからだ。住宅金融公社は政府支援がなければ存続できず、1兆ドルもの住宅抵当証券をFRBが引き続き抱えている状況では、住宅市場の回復は望むべくも無い。

週末、4-6月期の米GDPが公表されたが、実質では前期比0.6%と伸び率は2四半期連続で低下し、景気の減速が顕著になってきた。おそらく7-9月期は設備投資や住宅が減少に転じ、景気の減速はより強まるだろう。米国経済の拡大が緩慢に推移しているのは、経済のエンジンである個人消費が、雇用の改善の遅れなどにより、前期比0.4%とスローダウンしたからだ。政府の経済対策の効果は、今後ますます弱くなり、このままでは民間部門主導の回復は難しい。

住宅部門だけを取り上げても、06年1月のバブル絶頂期には年率229.2万戸に達していたが、いまの水準はまだその24%にすぎない。229.2万戸の住宅を埋め尽くす膨大な消費が経済を肥大化させたが、それが4分の1に縮小しただけでなく、債務の返済に追われているのだから、消費が回復するには相当の時間を要する。ユーロについても住宅バブル崩壊の影響があるし、日本は経済、政治の両面で右往左往し続けており、混迷から抜け出す処方箋を描ける知恵がまったくでてこない。年末にむけて、世界経済は深刻な様相をみせるだろう。

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