経済指標を等閑にした株式

曽我 純:

週後半の持ち直しにより日経平均株価は週末比4.2%上昇した。米国株式が5営業日連続増となったことによる他律的な上昇である。日本経済に関する経済指標は株式売りのシグナルを発していたが、これらをすべて等閑視してしまった。自らの判断ではなく、他者に追随したツケが回ってくることは、90年代以降の経済を思い出せば明らかなことだけれども、いつもの思慮に欠ける投資判断がなされてしまった。

8日には5月の『機械受注』が発表されたが、受注総額は10.8%減少し、昨年11月以来の低い水準である。内需関連はことごとく不振で外需だけが伸びた。内需が沈み外需が伸びたため外需・受注総額比率は43.7%と前月より5.8ポイント上昇し、08年5月以来の高い比率となり、過去最高(08年1月)に近づいてきた。機械受注は外需に支配されており、外需が伸びなければ設備投資関連は動きが取れない事態に陥っている。設備投資の先行指数になると言われている民需(船舶・電力を除く)を外需が上回る状態が4-6月期も続くだろう。

外需はピークでは月1.5兆円を上回るときもあったが、金融危機以降激減し、09年2月には3,000億円程度に縮小した。その後、順調に回復したが、3月以降はほぼ横ばいとなり、トレンドは変わってきた。一方、民需(船舶・電力を除く)の回復は遅れ、昨年11月にやっと底を打った。底は打ったものの回復力は極めて弱く、5月は前月比9.1%減少し、昨年11月の底を7.2%上回っているだけだ。昨年11月の最低水準は上回っているものの、90年代の3回のボトムをいずれも下回っており、今の水準自体が異常であることを裏付けている。

機械受注の外需と輸出の相関関係は強く、今年の初めまで両者は回復していたが、数ヵ月前から回復の勢いは衰えてしまい頭打ちとなっている。機械受注が発表された日に6月上中旬の貿易統計が明らかになったが、輸出は前年比22.5%と前月よりも13.8ポイントも低下した。下旬が加われば6月分も変わってくるが、5月の伸びを下回るのは確実だし、おそらく、前月比でも減少するはずだ。5月も前月比マイナスとなっているので、6月も減少すれば2ヵ月連続減となり、輸出のピークアウト感が強まるだろう。そうなれば生産の低下も予想され、製造業の業績も期待できなくなる。
5月の輸出額は前年比32.1%と3ヵ月連続の低下なり、6月は20%台へとさらに低下する見通しだ。輸出のなかでも変動の激しい半導体等電子部品は5月、前年比25.6%と1月の83.2%をピークに4ヵ月連続で伸び率は低下している。5月の世界半導体売上高は前年比47.6%伸びたが、前月に比べれば2.8ポイント低下しており、日本の半導体産業の力が落ちてきたとはいえ、世界景気の減速下では、半導体の伸びも鈍るだろう。

OECDによると、5月の景気先行指数は前月比0.1%と6ヵ月連続で伸び率は低下しており、世界景気拡大のテンポはあきらかに鈍化してきた。欧州を中心に採られる緊縮財政や脆弱な金融部門が実体経済に悪影響することは避けられず、今後、景気先行指数は現状レベルを維持することができなくなるだろう。

OECD景気先行指数の前年比伸び率は10.7%と依然高いが、2月を境に低下しており、今後、急速に鈍化していく見通しである。日本の輸出もOECD景気先行指数とほぼ似た動きをしており、輸出の前年比伸び率は大幅に低下し、企業業績のピークアウト感も強まるだろう。利益という株価の決定要因があやふやになる状況では株価の戻りは一時的であり、下落リスクは引き続き高いと判断している。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年7月11日 21:55.

米バブルの膿が出尽くすまで続く利回りの低下 は以前の記事です。

年末に向け深刻化する世界経済 は以降の記事です。

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