脆弱な日本経済と円高により外人の日本株売り続く

曽我 純:

日経平均株価は2週連続9,000円台で引けた。4月末と比較すると11.7%も下落しており、ギリシャ問題で揺れた欧州のFTSE100(-6.6%)やDAX(-3.1%)をはるかに上回る下げとなっている。NYダウの下落率は7.9%と欧州よりも大きく、震源地の株式が最も軽いとは意外な感じがする。

日本の株価の下げがきついのは、日本の株式市場の担い手が外人だからだ。東証1部の委託に占める外人の比率は4月の58.8%から5月第3週には67.1%に上昇しており、日本の株価はまさに外人次第という様相を強めている。株価は下落しているが、円高ユーロ安が急速に進行しており、ユーロベースでは円高の恩恵を受けていることも、欧州の機関投資家の売りを加速させているのかもしれない。

実体面では、ユーロは対ドルでも約4年ぶりの安値となっているため、欧州の輸出は大幅に伸びるだろう。輸出主導の景気回復期待などにより、ドイツなどの株式の下落率は小幅にとどまっている。

週末のドイツ国債との利回り格差は、ギリシャが5.0%と5月初めの10%超に比べれば大幅に縮小したが、その後は5%前後で推移している。スペインやポルトガルは1.5%、2.0%とギリシャに比べればスプレッドは小さいが、やや開き気味であり、問題国の国債保有リスクは引き続き高いといえる。過去の金融史を振り返ってみても、スプレッドの大きい国債は債務不履行に陥る場合もあり、そうした国の国債処分売りは続くだろう。さらにリスクのある資産も流動性の高い安全なものに変えたいという立場から日本株も処分されている。

ユーロ圏の各国は財政赤字削減を打ち出しており、経済成長率は鈍る見通しである。ユーロ圏の中心を占めるドイツの国債利回りは2.6%台に低下しており、米国発の金融危機が引き起こした急速な利回り低下の時期を下回り、過去最低の状態にある。債務不履行リスクのある国債から安全な国債へのシフトだけでなく、ドイツの経済成長率の低下見通しも、ドイツ国債の利回り低下に関係しているように思う。


欧州機関投資家による日本株売りは円高ユーロ安だけでなく、日本経済の脆弱性もその原因に挙げられる。1-3月期のGDP速報値(5月20日発表)によると、名目GDPは前期比+1.2%と2000年1-3月期以来10年ぶりの高い伸びとなった。だが、発表当日の株価は下落し、その翌日には1万円を割り込んでしまった。同期の名目GDPが前期比1.0%の米国よりも高い成長となったが、まったく評価されなかった。

なぜなら成長の中身が自律的成長とは程遠く、成長の展望も描けないからである。名目GDPは2四半期連続の前期比増で、前年同期は上回ったものの、2年前との比較では6.8%下回っている。主力の民間最終消費支出は前期比0.1%と低迷し、設備投資は1.3%伸びたものの、寄与度は0.2%に過ぎず、成長を引き上げたのは輸出と民間在庫品であり、寄与度はそれぞれ1.3%、0.5%である。政策の後押しがあったにもかかわらず、最終消費が伸びなければ、これからも消費はほとんど期待できないと考えておいたほうがよい。消費が振るわなければ、設備投資も現状維持にとどまり、結局のところ、日本経済は輸出の動向に左右されることになる。輸出が拡大していれば、なんとか景気は浮上するけれども、輸出が縮小すれば、たちどころに沈んでしまう経済なのである。

09年度の名目GDPは3.7%減の475.8兆円と1991年度以来18年ぶりの低い水準に落ち込んだ。08年度に次ぐ過去2番目のマイナス成長であり、2年間で39.8兆円も経済規模が縮小してしまった。因みに米国は暦年ベースだが、09年の名目は1.3%減少しただけである。日本のほうが米国の約3倍の規模で落ち込んだのは、日本の消費不振とウエイトの大きい設備投資の大幅減が効いた。米国は消費のウエイトが7割を超えているが、0.4%の減少にとどまったことが大幅な落ち込みを防いだといえる。

4月の失業率は前月比+0.1ポイント上昇の5.1%と2ヵ月続けて前月を上回った。男は0.1ポイント低下したが5.5%と依然高く、女は0.4ポイント上昇の4.7%と昨年12月以来の水準だ。有効求人倍率も0.48倍、前月比0.01ポイント低下し、雇用環境はやや悪化した。失業率の上昇などから、耐久財や半耐久財の消費が大幅に減少し、4月の家計消費支出は前年比2.1%減と2ヵ月ぶりに前年を下回った。消費水準指数(季節調整値)も前月比5.8%も減少し、4-6月期のGDPは反落しそうである。

公立高校学校の授業料無償化等の影響から消費者物価指数(生鮮食品を除く)は4月、前年比1.5%低下し、昨年11月以来の下落率になった。食料・エネルギーを除くは1.6%減と過去最高を更新した。1-3月期のGDPデフレーターは前年比3.0%減と過去最高を更新、物価の下落は激しさを増しており、ものよりも現金選好は強まり、消費控えと物価下落の悪循環に陥っている。

4月の輸出(数量)は前年比39.5%と伸び率は2ヵ月連続で低下した。対米・欧州は前月よりも伸びたけれども、対アジアは1月をピークに3ヵ月連続の鈍化となった。急速に進んだ円高ユーロ安は5月の貿易統計にあらわれ、アジア等にもその影響が及び、輸出の伸びは鈍化するだろう。輸出の勢いが弱くなれば、日本経済は即打撃を受けることになる。そうした判断が5月の貿易統計から明らかになるはずだ。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年5月30日 19:31.

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