ギリシャ・ポルトガル・スペインよりも危機的な日本株

曽我 純:

ギリシャ問題の影響は欧州だけにとどまらず米国、アジアへと広がっていった。スペイン、ポルトガル、イタリアなどもギリシャと同じ問題を抱えているため、もし当該国の国債が売り込まれたら、信用不安は格段に強まることになる。特に、欧州の銀行は問題国へ多額の資金を貸し付けており、巨額の債権が焦げ付くことになる。こうした観測によって、信用不安は伝染、増幅され、金融・株式の買いポジションは大急ぎで解消された。

信用不安に基づく金融危機がさらに深刻になれば、実体経済に影響してくるのは必至であり、特に、足取りの弱い欧州経済は景気後退に後戻りするかもしれないという不安が出ている。7日開催のユーロ圏緊急首脳会議で金融危機対応策が策定され、そこで合意したことのひとつに、財政赤字削減が挙げられており、財政赤字をGDP比3%以下に押えることがより厳格に適用されることになる。緊縮財政をユーロ圏各国が強化すれば、景気は悪化し、財政赤字はますます増加することになるだろう。ユーロ安は止らず、非ユーロ建ての債務は膨らみ、借入の返済が難しくなるだけでなく、ユーロの値下がりによってユーロ圏から資金が流失することにもなりかねない。景気後退下の物価上昇という事態も予想され、欧州経済の舵取りは一層難しくなる。

欧州中央銀行(ECB)の総裁はフランスのトリシェだが、インフレを最重要視するドイツの影響力は強く、ユーロ安によって物価が上昇すれば、ECBは政策金利を上げるだろう。4月のユーロ圏消費者物価指数は前年比1.5%と前月比0.1ポイント上昇し、2ヵ月連続で政策金利1%よりも高くなった。こうした物価の上昇から、トリシェ総裁は金融危機に陥っているにもかかわらず、政策金利(1%)を据え置かざるを得なかった。ECBは利下げに踏み切らないという予測から、投機筋は株式やユーロの売り浴びせたのだろう。ECBの金融政策はあまりにも見え透いている。

3月のギリシャの消費者物価は前年比3.9%とユーロ圏(1.4%)を大幅に上回っており、政策金利とは掛け離れた水準にあり、物価だけを取り上げても、ユーロ経済が矛盾を抱えている状態にあることがあきらかである。長期金利は市場で決まるため、ギリシャの10年国債の利回りは7日、13.17%に上昇し、ドイツとの利回り格差は10%を超えた。ポルトガル、スペインの国債利回りは7.01%、4.6%とギリシャに比べれば低いけれども、ドイツとの格差は広がりつつある。ドイツ国債買い、ギリシャ、ポルトガル、スペイン国債売りが続く限り、ユーロ圏経済の安定はない。

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日本を含む主要国の株式市場は急落し、世界の主立った株価指数は昨年末の水準を下回った。欧州の金融危機が下落の引き金を引いたが、その主因はバブル化していた部分が剥がれ落ちることに求められる。加えて、景気回復期の初期段階ともいうべき段階が終わり、今後、不確かな局面に移りそうな段階に達したことも、売りを加速させた。

日経平均株価の予想株価収益率は24倍だが、欧米の主要株価指数はほぼ10倍台であり、日経平均株価の割高感が突出している。ギリシャ、ポルトガル、スペインの予想株価収益率は10倍前後とさらに低く、利回りも最低のギリシャが3.5%、スペインにいたっては5.5%と日本(1.5%)とは比べものにならないほど高い。株式を取り上げれば、日本がギリシャなどよりもよほど危機的といえる。日本経済がまだ世界第2位の地位を占めていることから、資産配分上しかたなく組み入れているのだ。だから売買代金の半分以上が外人で占められているのである。だが、世界経済の地位が低下するにつれて、日本株の組み入れ比率は間違いなく低下していくだろう。ある時、不連続的な組み入れの変化が起こるとも限らない。

株価が急落すれば、いつものことながら、市場が警鐘を鳴らしているとの論評をみかけるが、ゼロ金利状態を15年も続け、「貯蓄から投資へ」と煽り、株価が利益から掛け離れたところまで引き上げられていれば、何かをきっかけに売りがでれば一気に崩落することは、市場の警鐘でもなんでもないのだ。単に、実体経済からみて途轍もなく舞い上がっていたのが、実体経済に見合った水準に戻るだけなのである。もとより下にも行き過ぎはあるが、配当をしっかり出しているような企業であれば、買いは入るはずだ。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年5月 9日 19:25.

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