ユーロ経済の不安・弱体化からユーロの売り止まず

曽我 純:

ギリシャ国債のジャンク債への格下げを始めポルトガル、スペインの格下げ、ゴールドマン・サックス問題などにより、各国の市場は乱高下した。欧米の主要株価指数は週末比2~3%下落する一方、国債は軒並み買われ、金も値上りした。日本の長期金利は1.2%台に下落したほか、欧米の長期金利も低下し、IMFによる2010年の実質GDP成長率の上方修正とは反する動きをみせている。

独Ifo景況感指数は4月、101.6と前月比3.4ポイント上昇したが、ドイツの長期金利は08年央以降、長期低下傾向を示しており、マインドと長期金利は反比例になっている。ギリシャなどの国債の信用が揺らいでいるなかで、不安を除去するためには、ドイツの経済的負担が増えることは間違いなく、そのことがドイツ経済の回復の足枷になるだろう。ユーロ圏全体で経済的負担が増えることに加えて、ユーロ圏各国が財政赤字をGDP比3%以下に押える財政規律の厳格化を目指していくならば、ユーロ圏の経済の拡大は期待できなくなる。景気拡大によって表面にあらわれなかった生活習慣、気質、家族関係の違う16ヵ国を一緒にしてひとつの経済圏にすることの難しさが、景気低迷が長引くにつれて、より顕在化してきたといえる。

09年10-12月期のユーロ圏実質GDP(16ヵ国)は前期比横ばいと前期よりも0.4ポイント低下した。中心となるドイツが横ばいになったほか、問題になっているギリシャ、ポルトガル、スペインは-0.8%、-0.2%、-0.1%といずれもマイナスである。経済のパイが拡大しない状態で政府赤字を削減しなければならないのは辛い。財政赤字の縮小は、当然、2010年の経済成長率に悪影響するはずだ。

ドルユーロ相場は先週、一時1.31台と昨年4月以来、約1年ぶりのドル高ユーロ安となった。財政の規律を厳しく適用すればするほど、ユーロ圏経済の回復の足取りは重くなり、場合によっては再びマイナス成長に転落するかもしれない。なかでもユーロ圏の26.9%(2009年)を占めるドイツ経済とドルユーロ相場の結びつきは深く、ドイツの経済成長率が力強いときはユーロが強く、弱いときはユーロ安という関係をはっきり読み取ることができる。財政規律の厳格化やギリシャへの資金支援など、多くの難問がドイツ経済の前に立ち塞がっており、回復したとしても回復のペースは遅々としたものになりそうだ。

昨年10-12月期のドイツ名目GDPは前年比-1.4%と4四半期連続の前年割れである。09年1-3月期は5.2%も落ち込んだため、今年の1-3月期はプラスに浮上する見通しだが、足取りは弱いものになりそうである。2010年のドイツ実質GDPは1.2%と予想されているが(ちなみにユーロ圏0.7%、ギリシャ-0.3%、スペイン-0.8%、ポルトガル0.3%)、この見通し程度の成長であれば、名目でも2.2%と予想され、現在の長期金利を下回っている。

現在、ドイツの長期金利は3%程度だが、景気回復力が予想以上に弱くなれば、昨年1月に付けた2.88%を下回ることも考えられる。そのときにはユーロはさらに売り込まれることになろう。

先週末、1-3月期の米GDPが発表されたが、それによれば、実質GDPは前期比0.8%増加した。これで3四半期連続のプラスとなり、金融危機の震源地であった米国経済の回復力がドイツよりも強いことを印象付けた。ドイツやユーロ圏よりも相対的によいだけであり、米国経済が本格的に回復しているかというとそうではない。

前期比伸び率は昨年10-12月期よりも0.6ポイント低下したし、成長の中身もつまびらかではない。成長率の8割方は個人消費支出が寄与し、消費の回復を声高に主張するコメントも見受けられるが、消費の中身を検討すると、手放しで消費が強いなどとは言えない。さらに、在庫の寄与度が前期に比べれば低下したもののそれでも0.4%と高い。在庫は3四半期連続で増加したが、その間(2010年1-3月期/09年4-6月期)の在庫寄与率は55.6%と成長率の半分以上は在庫変動要因で説明できる。3四半期連続で回復しているとはいえ、在庫要因を取り除けば、米国経済は横ばいに近い状態である。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年5月 3日 12:38.

バブルを次々に生み出す金融政策 は以前の記事です。

ギリシャ・ポルトガル・スペインよりも危機的な日本株 は以降の記事です。

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