金融依存型経済の終焉

曽我 純:

SECがゴールドマン・サックス(GS)を証券詐欺罪で訴追するニュースにより、株式や商品市場は大幅に値下がりした。07年にGSが販売したサブプライムを組み込んだCDO(担保債務証券)に問題があったというわけだ。ヘッジファンドなどとぐるになって怪しげな商品を開発・販売した例は数え切れず、そうした詐欺的商品の蔓延が米金融機関だけでなく世界中の金融機関の土台を揺さぶったのである。過去の販売に問題があったことよりも、現実に巨額の証券化商品がそのまま放置されていることのほうが問題ではないか。実体経済は緩やかに戻しているが、MBS(モーゲージ担保証券)を中心にマネー経済は巨額の不良資産を抱えた状態を続けており、とても米国のマネー経済が正常になったとはいえない。

1980年代前半の金融自由化により、米国のマネー経済は著しく拡大していった。1970年代の国民所得に占める金融部門の比率は60年代、70年代を通して高くても13%台であったが、その後はほぼ上昇し続け、1997年には国民所得の18.5%を占めるに至った。1997年以降はやや低下しているが、それでも2008年までの最低は17.2%であり、70年代の水準を大幅に上回っている。一方、非金融部門の比率は80年代以降、顕著に低下し、米国経済を牽引してきたのは非生産部門である金融部門に依存していたことがわかる。なにも生産しない金融部門の支出が有効需要の不足分を補う役割を果たしており、それが米国経済の景気拡大に寄与していた。

今回の金融危機が起こった原因のひとつに、金融機関がレバレッジを効かし負債を拡大させたことが挙げられている。金融負債と実体経済の比較に金融債務・名目GDP比率を利用しよう。同比率は1970年代までは緩やかな上昇を描いていたが、1980年代以降、トレンドが完全に変わっていることがはっきり分かる。実体経済よりも金融債務の伸びがはるかに高く、2009年には金融債務は名目GDPの3.68倍の規模に拡大した。次から次へ生み出される金融商品によって、金融部門の利益は実体経済を上回る伸びをみせ、そうした好調な金融部門が米国の消費性向を高目に維持していたと考えられる。

だが、開拓者時代そのままのような無法者(金融機関)に対する取締りが厳しくなれば、いままでのようにレバレッジをふんだんに効かすような金融操作はできなくなる。自己資本に見合った経営を余儀なくされ、これまでのような高収益は期待できない。市場原理主義を振りかざし、金融機関を野放しにして、法外な利益を生み出すような経済には終止符を打たなければならない。米国経済を牽引してきた金融部門の拡大が止れば、経済が有効需要不足に陥り、これまで経験してきた景気拡大の長期化は難しくなるのではないだろうか。

■ 塩漬け状態の資産担保証券

FRBの『Flow of Funds』によると、Fannie MaeやFreddie Mac等の政府支援企業等が発行している資産担保証券は09年末、8.11兆ドルある。ピークの09年3月末(8.18兆ドル)から3四半期連続で減少しているものの、微々たるものであり、証券の大半は塩漬けになっていると考えられる。発行の内訳は政府支援企業が2.7兆ドル、公的・政府支援企業のプールが5.38兆ドルとなっており、プールが圧倒的である。5.38兆ドルのうち5.21兆ドルはMBSであり、依然増加している。

他方、だれが8.11兆ドルの資産担保証券を保有しているのかをみると、最大の保有者は海外(1.31兆ドル)であり、次が商業銀行(1.27兆ドル)、3位に中央銀行であるFRB(1.06兆ドル)が顔を出している。FRBの4月14日のバランスシート(資産)にはMBSが1.1兆ドル計上されており、3月末でMBSの買い取りを終了したにもかかわらず増加している。FRBの総資産は2.34兆ドルであるので、MBSがその47%を占めていることになる。MBSの買い取りのための資金は預金であり、金融機関が1.06兆ドルをFRBに預けており、すべてはMBSの買い取り資金となっている。要するに、金融機関は不良資産であるMBSをFRBに買い取ってもらうために、自らその資金をFRBに提供しているのである。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年4月18日 19:37.

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