輸出の拡大が途切れ交易条件が悪化するなかでの株高

曽我 純:

先週末、日経平均株価は7週連続上昇し昨年来高値を更新した。週央に発表された2月の輸出(季節調整値)が前月比1.7%減と12ヵ月ぶりのマイナスになったことなど何処吹く風である。今年度下期の企業業績の回復は偏に製造業に依存しており、非製造の下期への貢献は期待できない。製造業の業績がこれほど急速に戻しているのは、輸出が急回復しているからだ。2月の輸出額は5.12兆円、前年を1.6兆円上回っており、これが、製造業の稼働率を高め、収益を引き上げているのである。2月の輸出額は前年比45.3%増加したが、化学製品、非鉄、ベアリング、半導体、自動車等の伸びは総額をはるかに上回った。他の事情が変わらなければ、輸出が伸びれば製造業の利益は自動的に拡大する。だが、その輸出に黄信号が点りはじめたことは、これまでのような楽観的な見通しだけで、製造業の先行きを判断することはできないことでもある。

2月の総合消費者物価指数は前年比1.1%低下し、マイナス幅は4ヵ月連続の縮小となった。食料・エネルギーを除く指数(コア)も同じ1.1%の低下だが、前月より0.1ポイント縮小しただけである。食料もマイナスだが、光熱、家庭用耐久財、教養娯楽用耐久財などの下落が著しく、需要の減少により、物価が下落していることが窺える。

他方、昨年8月、国内企業物価指数は前年比8.5%も下落していたが、6ヵ月連続してマイナス幅は縮小、2月は1.5%減となった。消費者物価指数(コア)はマイナス幅が拡大した状態が続いている半面、国内企業物価指数の下落率が縮小することは、企業にとって嬉しいことではない。

消費者物価指数(コア)から国内企業物価指数を引いた数値(前年比の比較)は昨年8月、7.6ポイントに拡大した後、今年2月には0.4ポイントまで縮小した。昨年までは交易条件はプラスに効いていたが、今年に入りプラスの効果は薄れてしまい、このまま推移すれば企業収益にマイナスに影響してくるだろう。先週末の日経商品指数17種は前年比20.8%も上昇しており、企業の原材料費は確実に上昇し、原材料コストはこれまでのように収益の拡大要因から縮小要因へと変わりつつある。

輸出に黄信号が点り、交易条件がプラスからマイナス要因に変わろうとしているとき、株価は昨年来高値を更新した。予想株価収益率は32倍を超えており、どのように考えてみても理屈に合わない。来期の利益が2倍に急増したとしても予想株価収益率16倍である。世界の株式を見回してみても、30倍を超えている国は稀であり、主要国では10倍台である。経済成長率の長期トレンドは一貫して低下し続けており、向こう10年の成長率はマイナスになるだろう。こうした経済環境のなかで、予想株価収益率が突出して高いことはなにを含意しているのだろう。

続きをPDFで読む→週刊マーケットレター(100329).pdf

この記事について

この記事は「編集者」の寄稿です。2010年3月28日 19:45.

単一思考が実体経済と株価の乖離を大きくする は以前の記事です。

大企業の増益率は09年度下期でピークに達する は以降の記事です。

ホームページ

ホームページ