米金融政策を決める銀行貸出の動向

曽我 純:

日経平均株価は5週連続で上昇し、1月第2週に付けた昨年来高値に近づいてきた。外人買いが継続しており、3月第1週の買い越し額は2,615億円と昨年来高値を付けたとき以来の金額に膨らんだ。おそらく先週も外人の積極買いにより上昇し、先週末の株価は前年を50%以上上回った。東証1部の売買代金(委託)に占める外人比率は3月第1週、59.9%と09年の53.9%を上回り、存在感を増してきている。先週末の世界の主要株価はいずれも前年よりも50%以上、特にナスダックは66%も高く、高値警戒感がでており、いつまでも外人買いが続くと期待するわけにはいかない。

2月の米小売売上高は前年比3.9%増加したが、伸び率の5割弱はガソリンの販売増によるもので、家電や衣料など前年割れの業種もあり、全体的に回復しているとはいえない。しかも伸び率は昨年12月の5.6%から2ヵ月連続の低下だ。一方、1月の米財輸入額は前年比13.7%増加したが、前月比では昨年12月までの4ヵ月連続増が途切れ、景気回復の足取りが確りしていないことを示唆している。3月のミシガン大学消費者信頼感指数は72.5と2ヵ月連続で低下し、消費者マインドの改善も足踏みしている。

米国の資金需要は引き続き弱く、2月の商業銀行貸出は前年比8.3%減と今回の減少過程でマイナス幅を更新した。特に、商工業貸出は不振であり、前年を18%も下回ってしまった。不動産貸出も-2.4%と3ヵ月連続のマイナスだ。不動産貸出のマイナス幅が小幅であることは、不動産関連の不良債権を多くを抱えたままであり、銀行の収益率低下の原因でもある。全米商業銀行の自己資本利益率は3年連続の低下となり、09年は0.85%と1%を下回った。06年の13.02%と比較するとまさに雲泥の差である。貸出は大幅なマイナス状態だが、預金は2月、前年比5.5%と伸び率は鈍化しているが、それでも流入し続いている。預金の流入と貸出の減少により、銀行は余剰資金を国債と現金に振り向けざるを得なくなっている。こうした資産は安全ではあるが、収益率は低く、不良債権を清算する原資がなかなか確保できないことになる。不良債権処理の遅れ、貸出減、収益減、不良債権処理の遅れという悪循環に陥っているかもしれない。

このように貸出が減少しているときには、FRBは政策金利を引き上げることはない。過去のFFレートと貸出の関係をみると、貸出の前年比伸び率が底を付けたことが確認されてから、引き上げられていることが読み取れる。たとえば、93年3月に貸出は底打ちしたが、3%のFFレートが引き上げられたのは94年2月である。約1年近いタイムラグがある。
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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年3月15日 00:31.

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単一思考が実体経済と株価の乖離を大きくする は以降の記事です。

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