追加緩和策でも貸出は伸びない

曽我 純:

「日銀が追加緩和策を検討」の報道を受け、週末の株価は前日比200円以上上昇した。昨年の12月1日、日銀は新型オペを発表したが、市場はそのときと同じ反応を示した。今回のオペは固定金利で年0.1%と金利は同じだが、貸出期間は倍の6ヵ月に延ばし、規模も拡大する方針。金融機関は0.1%で借りることができるので調達しやすくなるが、貸出が減少し、すでに預金を持て余しているので、借入の条件を緩和したからといって、貸出が伸びるわけではない。激しいデフレ下にある経済環境では、個人も企業も負債の負担が自然に増える借金を現状以上に借りるようなことはしないだろう。家計や企業を問わずできるかぎり、借入は返済し身軽になりたいのが本音だと思う。そうしなければ、デフレ経済を生き抜いていくことができないからだ。

日銀当座預金の伸び率低下につれて、2月のマネタリーベースは前年比2.2%に鈍化してきた。昨年4月の8.2%の高い伸びからみるみる低下し、新型オペも効果を上げているとはいえない。特に、日銀券発行高は1月までの3ヵ月連続の前年割れからプラスに転じたものの、0.1%の微増であり、マネー需要は弱い。家計や企業に0.1%で貸し付けるのであれば、需要はでてくるかもしれないが、銀行がピンはねし高い金利で貸すことになれば、需要は萎んでしまう。

非生産者である大銀行が豪華な本支店を構え、高給を取る仕組みは、90年代のバブル崩壊後もまったく改められていない。金融業のようなマネーの仲介者が、ものやサービスを供給している業種よりも高い利益や給与を得るという不思議な現象があたりまえのように続いている。高コストを是正すれば、貸出金利を下げることができるだろう。高コストの銀行は倒産しかねないような金融機関の競争が働く仕組みを作らねばならない。

90年代の半ば以降15年もの長期間、国民は利息に期待することができなくなった。金融機関はほとんど無きに等しい利息しか払わず、ほぼコストゼロで入手した資金を貸し出し、利益を稼いできたのだ。デフレ経済では現金選好が強まるため、利息は期待できないけれども、預金はする。貸出は減少するため、金融機関の資金運用は国債しかない。日銀は買いオペで金融機関保有の国債を買い取り、日銀券を発行する。

1月の「家計調査」によれば、勤労者世帯の可処分所得は前年比-1.9%と8ヵ月連続の前年割れである。消費支出は横ばいとなり7ヵ月連続のマイナスがやっと止ったが、自動車・液晶テレビ等の耐久消費財への支出拡大によるものであり、全体的には引き締め姿勢に変わりはない。平均消費性向は前年比1.7ポイント増とこれで前年比プラスは6ヵ月連続である。可処分所得の減少下で、消費を維持するために平均消費性向は上昇している。見方をかえれば、貯蓄性向は低下しており、家計の貯蓄力は徐々に衰えている。貯蓄額は少なくなる一方、高齢者の急増により、貯蓄の取り崩しが進行するだろう。昨年9月末、家計は747兆円の預金を保有しているが、今後、預金は減少し、金融機関の国債購入余力は低下するだろう。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2010年3月 7日 20:14.

主要国の株価は警戒すべき水準にある は以前の記事です。

米金融政策を決める銀行貸出の動向 は以降の記事です。

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