2009年12月 Archives

ケインズのいう銀行員の常套手段とは

曽我 純:

FRBは16日、FOMC声明で特別に実施している流動性供給措置を来年2月1日で終了する予定と発表した。住宅ローン担保証券と政府機関債の買い取りは来年3月末で完了する見込みである。ただ、「FFレートは今後も長期間、異例の低水準とすることが正当化される可能性が高い」とほぼゼロ金利の状態を続ける意志が強いことを表明した。

11月の米鉱工業生産指数は99.4(2002年=100)、前月比0.8%と6月の底から3.8%回復したが、依然水準は低く、前年水準は下回ったままである。11月の小売売上高は前月比1.3%増加し、12月のミシガン大学消費者センチメント指数も大幅に改善したが、家計、金融セクターの資産劣化に伴うバランスシートの調整は道半ばであり、実体経済が本格的に回復できる下地は整っていない。

FRBは昨年12月16日、政策金利を史上初のゼロに引き下げ、それから1年が経過した。こうした異例の金融政策が効果を上げたかというと、金融機関の利益には大いに貢献したが、実体経済にとってはさほどの効果は上げていない。FFレートをゼロに引き下げ後、長期金利は2.0%近くまで急低下したが、金融危機が徐々に薄れてくると上昇し、現状では3.5%前後で推移したおり、利下げによる長期金利低下効果は出尽くしてしまった。利下げ以降、短期金利は低下している一方、長期金利は3%台に戻ったため、長短金利差は大幅に拡大しており、これによって米金融機関は巨利を手に入れている。金融機関の強欲によって引き起こされた金融危機が金融機関を崩壊させたが、政府とFRBの手厚い救済によって生き延びたばかりでなく、政策金利のゼロまでの引き下げによって途方も無い利益を懐にした。結局、馬鹿を見たのは非金融部門の弱者であった。90年代から今も続いている日本政府と日銀による金融機関の救済と同じことが、米国でも行われたということだ。・・・

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「人間の経済」、第233号

・町工場の現場から(19)ー職人技 杉浦明巳

H社の鍛造は、製品が大きく、手作業という点で、他の鍛造会社とは異なっていた。普段は、材料の鋼材を切断して、建設機械や工作機械の部品を中心に作っている。

ただ、大手の鉄鋼会社が金型を持たない、イレギュラーな大きさの鋼材の注文が入ると、オーダーに合った製品を、自在に作ってしまうという技術の高さで、売り上げも好調な会社だった。つまり、量産型の製品ではない。

30センチ、40センチの丸や四角い鋼材に、熱を加えて、マニピュレーターと呼ばれる、大きな鋏でつかんで、プレス機に掛けながら、注文の長さに、伸ばしたり、球にしたりして成形していく。3、4人でチームを組んだ、この技は、長年の経験と勘による手作業で、社長の見立てひとつに掛かっていた。

1000度からの真っ赤な鉄の塊を扱っていると、化繊の衣類や、プラスチックの眼鏡のフレームなど、簡単に溶けてしまうのだそうだ。さながら、焦熱地獄のような、現場の様子に、思わずゾッとするが、そんな現場を一度、自分の目で確かめたいと思っていた。・・・

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曽我 純:

日本の景気の戻りが弱い。OECD景気先行指数によると、10月のOECDは前月比1.0%と今年2月を底に8ヵ月連続で改善した。金融危機に陥った昨年10月と比較すると、日本は2.2%増にとどまる一方、米国は4.0%、ユーロは9.3%も前年を上回っており、日本の戻りの弱さが目立つ。

主要株価指数を3ヵ月前と比較すると、下回っているのは日本株だけで、NYダウをはじめ欧州の株価指数はいずれも高く、日本株だけがおいてきぼりだ。基本的に日本株が上昇しないのは、景気の先行きに自信がもてないからである。

各国の株価の動向はOECDの景気先行指数の内容を概ね反映しているといえるが、ただ、OECD景気先行指数の前年比伸び率は6.0%と1983年10月以来26年ぶりの高い伸びとなり、早晩、ピークアウトするだろう。株価は先行指数が下降に転じる前に下がる傾向があるため、景気先行指数の急激な上昇が株価の先行きに影響を及ぼしているのかもしれない。利益水準に比べて株価が高いことが日本株の下降要因のひとつだが、景気先行指数の動向からも正常な水準へ向う動きだといえる。PDFを読む週刊マーケットレター(091214).pdf

日銀の資金供給手段を評価する

曽我 純:

・・・日銀の景気を刺激する弾はもはや尽きた。金利はほぼゼロだし、買いオペも準備預金に積み上がるだけで、その準備預金を元手に、日銀は国債等を買い入れる。金融機関は貸出先がなかなか見つからないから準備預金に積む。このように、日銀と金融機関の間を金が循環しているだけで、日銀と金融機関の外には金はほとんど出て行かない。

いままで散散行い効果の見られなかったこのようなオペを評価するなど、政府や市場参加者の気が知れない。政府に媚びする日銀、拙劣な措置を引き出しその場を繕う政府。株式バブル崩壊から年末で20年を迎えるが、その間してきたことは、効果のない政策の繰り返しであった。であるから20年経過しても株価はピークの4分の一ほどでしかないのだ。政府や日銀が、このまま過去の政策を踏襲していくならば、日本経済の衰退に歯止めはかからず、株価は下降トレンドを描いていくだろう。PDFを読む週刊マーケットレター(091207).pdf

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