利益に見合った水準に落ちて行く日本株

曽我 純:

10月の米新車販売台数は前年を31.9%も下回り、年率販売台数は1983年2月以来、25年8ヵ月ぶりの記録的な低水準に落ち込んだ。昨年11月から前年を割り込んでいたが、住宅バブル破裂の影響が深刻化するにつれて、マイナス幅は5月の10.7%から10月には3割を超える異常な不振へと拡大し、米自動車産業はもはや自力で存続することが不可能な状態に陥っている。
債務超過状態にあるGMはクライスラーとの合併協議が中断し、生き残る手立ては、政府の融資に縋る以外にはない。政府に頼ることになったとしても、このような販売の落ち込みが続くことになれば、融資も焼け石に水となり、税金が泡となり消えていくだけである。image004.gif
FRBによると、米金融機関の融資は一段厳格になっており、自動車向けローンも絞り込んでいるようだ。消費マインドも10月は急低下、調査開始以来に悪化し、自動車のような耐久消費財に対する支出は、ますます切り詰められるだろう。
10月の非農業部門雇用者数は前月比24万人減少し、失業率は0.4ポイント上昇の6.5%に跳ね上がった。失業者数は1,008万人と1983年9月以来、約25年ぶりに1千万人を超えたが、このような雇用の急速な悪化も自動車等の耐久消費財販売が先行きさらに落ち込むことを予想させる。そして耐久消費財の販売不振が雇用を奪うという悪循環に陥っていく。10月の失業率は前回IT不況のピークを上回ったが、雇用の悪化が経済全体に及んでいることから、失業率の上昇はまだまだ続き、1992年6月の7.8%を超えるかもしれない。
米国ほどの落ち込みではないが、日本の新車販売台数も10月、前年比13.6%減少した。2004年以降、新車販売台数は4年連続の前年割れとなっており、国内では低迷していたが、欧米に加えて新興国の需要拡大により、日本の自動車メーカーの業績は好調を持続していた。だが、最大の得意先である米国での需要激減の影響は大きく、7−9月期のトヨタの営業利益は前年比54.2%も減少した。7−9月期の北米、欧州の営業利益は赤字となるなど収益は急激に悪化しており、08年度下期の営業利益はほぼゼロになると想定している。5月時点では08年度の営業利益は1.6兆円を見込んでいたが、今回6,000億円へと1兆円も減額し、トヨタショックを引き起こした。
自動車産業の大幅な業績下方修正などにより、日経平均株価の予想株価収益率(PER)は先月末頃より上昇していたが、先週末には15倍、1週間で2ポイント以上上昇し、この株価水準でも割高になってしまった。海外の主要株価指数のPERは10倍程度であり、配当利回りについても、日経平均株価を大幅に上回っている。現時点の日経平均株価の08年度予想1株当たり利益は589円である。日経の予想が正しいと仮定すると、海外主要株価並の予PER10倍では日経平均株価は5,890円となる。
IMFは6日、世界経済見通しを発表したが、09年の実質成長率は米国、ユーロ圏、日本は-0.7%、-0.5%、-0.2%といずれもマイナスとなり、主要国の景気後退はより深刻になると予想している。10月の米非農業部門雇用者数は前年比0.8%減少したが、前回の景気後退期の減少率に達していない。今回は通常の景気後退と異なり、景気後退はストックが適正な水準に落ち着くまで続くであろう。OECDの景気先行指数をみると、最近のユーロ圏の景気悪化は米国以上である。10月29日、FRBが利下げし、同31日、日銀が続き、先週の6日にはECBとイングランド銀行が0.5%、1.5%それぞれ引き下げたことからも、世界が徒ならぬ景気後退に陥りつつあることを裏付けている。
米国、ユーロ圏、日本が景気後退に陥れば、新興国の経済も打撃をうけることは間違いない。日本企業はアジア等への輸出で、欧米向けを補っているが、早晩、新興国もへこたれるだろう。9月の日本のアジア輸出は数量ベースで前年比1.1%まで低下しており、10月は前年割れになるかもしれない。そうなれば、すべての地域への輸出がマイナスとなり、企業収益はさらに下振れすることになる。日本株は利益に見合った水準に落ちて行く過程にある。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2008年11月15日 13:48.

On the Inauguration of the Gesell Research Society's Bulletin Study of Free Economy は以前の記事です。

雑誌 自由経済研究 jiyukeizai-kenkyu は以降の記事です。

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