週間マーケットレター 2005

山高ければ谷深し2005-12-19

 週初めの12日、日経平均株価は前日比334円高と今年一番の上げ幅を記録したと思ったら、12月調査の『短観』が公表された14日には314円安となり、株価の変動率は大きくなってきた。株価のブレが激しくなってきたことは、市場参加者の株式市場に対する気持ちが神経質になってきていることのあらわれである。8月以降の急騰をみれば、上がり方が異常であることはだれもが認めざるをえないだろう。だから、いまの値段に不安を抱き、神経質な値動きになるのだ。

増益率の低下と株価の上昇2005-12-12

 財務省発表の『法人企業統計』によると、7−9月期の全産業営業利益は前年比+3.7%と伸び率がピークを付けた04年4−6月期以降、5四半期連続の低下となり、02年4−6月期以来の低い伸びとなった。営業利益の伸びが大きく低下しているなかで、株価の上昇が強まるという不思議な現象が起こっている。営業利益の伸びが低迷しているときに株価が急伸することは、糸が切れたタコのように、株価が独自の動きをしていることであり、いつ失速し急降下するかもしれない不安定な状態にあることなのである。

「構造改革」相場を担ぐ外人買い 2005-12-05

 日経平均株価は棒状の上げ相場となり、難なく15,000円を超えてしまった。14,000円台にとどまった営業日は18日にすぎず、13,000円台の30営業日に比べると、相場はいかに短期に急上昇したかがわかる。週末の日経平均株価の水準は前年を40.5%上回り、NYダウやナスダック総合指数の1桁の伸びを大きく引き離している。FT100、DAXは2桁増だが、日経平均株価の伸びが高く、最近の日本株上昇は世界市場のなかでも群を抜いているといえる。 

投機的資金の供給源はどこか 2005-11-27

 日経平均株価は7営業日連続の上昇となり、15,000円まであと200円強である。先週、東証1部の売買単価は1,000円を上回り、5,595億円も買い越した11月第3週に引き続き、第4週も外人の資金が大量に日本の株式市場に流入したと考えられる。米国や欧州の株式市場も堅調だが、日本株の上昇力が群を抜いており、値上がり益を求めた外人買いが勢いを増しているようである。
 11月第4週、個人は売り越したが、投資信託と事業法人は大幅に買い越し、買い手は外人だけでなくなってきている。10月、事業法人は4,500億円、投資信託は801億円を買い越したが、11月も買い越しを維持するだろう。上昇の最終局面にしばしば登場し、高値掴みをしがちな投資信託、事業法人が買い手として現われたことは、相場が最終局面に近いことを示唆しているといえる。

 

株価、債券価格を歪めた小泉発言 2005-11-20

 小泉首相の量的緩和解除は「まだ早いのではないか。‥まだデフレ状況だ」(14日)との発言を受け、債券利回りは大幅に低下し、為替相場は円安に振れた。首相を始め政府、自民党の政策担当者が、福井日銀総裁の量的緩和解除に向けた発言を真っ向から批判したことによって、量的緩和解除時期やさらにその先に控えているゼロ金利解除の時期が遠のいたことが、株価上昇に大きく寄与したと考えられる。
 さらに、10月の米経済指標が米国経済の消費や生産が底堅く、物価も十分に抑制されていることを裏付け、安定成長を持続しているという安心感を植え付けるものであった。こうした予想を上回る良好な米国経済を反映して、外人の日本株購入が期待されただけでなく、売買単価の上昇に窺えるように、先週も外人は大幅に日本株を買い越したようだ。外人買いに先導された個人の商いも引き続き活発であり、週末、東証1部の売買代金は3兆円弱に増加した。

TOPIXの前年比上昇率37%、ピーク近づく 2005-11-14

 11月4日に14,000円台に乗せた日経平均株価は、先週も底堅く推移し年初来高値を更新した。東証1部の売買高は8日、45億株を超え過去最高を記録するなど、流通市場は過去にない大商いに沸いている。相場をリードしているのは外人であり、11月5日までの半月間の買い越し額は約1兆円に膨らんだ。
 個人は売り越しているが、信用では買い越しており、4日時点の信用買い残は3兆7,637億円に拡大、株価が上昇し始めた3ヵ月前から約1兆円増加した。個人の売買高に占める信用取引の比率は約5割と高く、頻繁に繰り返される信用取引が売買高を過去最高に引き上げた要因と考えられる。

金利上昇に耐え得る資産運用の構築へ2005-10-31

7−9月期の米GDPは実質前期比年率3.8%と前期を0.5ポイント上回った。ハリケーン等の影響があらわれ減速すると予想されていたが、個人消費支出が前期よりも高い3.9%も伸びたことにより、それだけでGDPを2.7%引き上げた。民間設備投資は6.2%増と前期よりも2.6ポイント低下、寄与度は0.7%にとどまった。GDPの価格指数は3.1%と前期を0.5ポイント上回ったが、1−3月期と同じ伸びであり、原油価格が高騰しているわりには落ち着いているといえる。

「根拠なき熱狂」で維持されている日本の株式相場 2005-10-17

 8月の『機械受注』の伸びが予想を上回ったことを好感し、11日の日経平均株価は今年最大の上げ幅を記録した。だが、10月第1週の信用買い残が前週比2,827億円増と12年半ぶりの急増となったことから、信用買い残をさらに積み上げることに躊躇したのか、その後はじり安歩調を辿っている。政策金利の引き上げ、原油高、インフレ懸念等により米国株式市場が軟調なことも、外人買いの先細りを予想させ、上値を重くしているのだろう。

日銀『短観』からみた企業の実態 2005-10-10

 日銀『短観』の業況判断が予想を下回ったことや米国のISM非製造業景気指数の急低下により、日米の株価は大幅に下落した。特に、日本の株式市場は、景気が紙上で言われているほど改善されておらず、日本経済を過剰評価していたことにやっと気づきだしたようだ。

暴走する株式市場 2005-10-02

 先週の東証1部の売買高は5日連続、30億株を超え、売買代金も2日は3兆円を上回るという記録的な週となった。9月の東証1部の売買高回転率は年率200%を超えており、株式が2回転もする異常な出来高である。
 上昇相場に乗り遅れた外人などがあとからあとから市場に雪崩れ込んできているのだろう。9月の日経平均株価は前月比9.4%、前年比では25.4%も上昇したが、世界景気が本格的に上向いているわけではなく、むしろ、成長率は減速に向っており、当然、収益の伸び率も低下するなかで、日本の株式だけが舞い上がっていることは、市場が暴走しているとしかいいようがない。

日本の株高と円安ドル高 2005-09-26

日本の株価上昇の勢いは止まるところをしらず、20日には、日経平均株価は01年6月以来の13,000円台を回復した。5月の安値から約2,300円の値上がりとなり、前年比でも19.4%上昇した。景気の「踊り場」脱却や脱デフレを信用して、日本株に巨額の資金を振り向けている外人の強気姿勢が、日本の株価上昇の原動力になっている。

選挙に賭けた危うい相場 2005-09-12

日経平均株価は先週も値上がりし、これで8月8日の解散・総選挙宣言から914円、率にして7.8%も上昇した。同期間、東証1部株価指数は8.5%増と日経平均株価の上昇率を上回った。なかでも、大型株指数(9.2%)は中型株指数(8.2%)、小型株指数(6.9%)、2部(6.5%)よりも上昇率が高く、外人主導の物色が色濃くあらわれている。NYダウ、ナスダック総合、FTSE100等の海外の主要株価指数はほぼ横ばいに近い値動きにとどまっており、日本の株価指数の値上がりが際立っている。
 今日投票の衆議院選挙において、反対議員を切り捨て郵政民営化一本槍で押した自民党が、単独過半数を獲得することを株式相場は完全に織り込んでしまったといっていいだろう。

選挙と景気の踊り場脱却ではしゃぐ株式市場の盲点 2005-09-05

 欧米の株式相場は足踏みしているが、日本の株価は年初来高値を更新し、好調そのものである。8月の東証1部の月間売買代金、売買高はいずれも過去最高を更新、株式流通市場はバブル期を上回る活況を呈している。8月8日の衆議院解散・総選挙の決定と政府の景気の踊り場脱却表明を契機に活発になった外人の大量買いが(8月、約2兆円の買い越し)、日経平均12,000円突破の原動力となった。

人口、税制等改革の本丸を郵政民営化にすり替えた小泉首相の策略 2005-08-28

 郵政民営化を選挙の最大の争点に据えることで、国民の目をそちらにそらし、勝利をもくろむというのが小泉首相の戦略である。だが、国民の目は節穴ではなく、取り組まなければならない重要課題はほかにあることを知っている。問題のすり替えやレトリックだけでは、国民の信任を得ることはできないと思う。

幻想でしかない「官から民への資金の流れ」 2005-08-22

 銀行貸出(銀行勘定)の減少は続いており、7月も前年比2.4%減少した。民間企業の設備投資は4−6月期も前年比4.4%増とほぼ2年堅調に推移しているが、銀行貸出はいっこうに増加しない。増加しないばかりか、これまでの借入を返済しており、貸出は長期的にマイナスなのである。リストラ効果に業績の伸びが加わり、企業資金は潤沢であり、銀行から資金を借り入れなくても、企業は自前の資金で設備投資をすることができるからである。
 銀行は預金増と企業からの返済資金で有価証券を購入せざるを得ない状況に置かれている。1999年4月の銀行貸出(平残)は470.6兆円であったが、05年6月には393.8兆円へと約6年で76.8兆円減少した。一方、国債保有額は同期間32.7兆円から105.4兆円へと貸出減少額にほぼ見合う72.7兆円増加している。官から民に資金の流れを変えると声高々に郵政民営化を唱えているが、皮肉にも資金は「官から民へ」の流れを強めているのである。

ゼロ金利によるバブル相場、80年代の教訓活かされず 2005-08-15

 内閣府と日銀は衆議院解散翌日の9日発表した「月例経済報告」、「金融経済月報」でいずれも景気判断を上方修正、景気の踊り場脱却を表明した。政府・日銀の景気に対する強気な見方を額面通りに受け取った市場参加者は、買い姿勢を強め11日までの4日間で日経平均株価は500円弱の大幅な上げとなった。加えて、同日発表された『機械受注』が予想を上回ったことやバブル期以来の高水準に積み上がっていた信用の売りの買戻しも、株価の急騰に影響している。こうした株価急騰は、週初の郵政民営化法案の参議院否決に伴う衆議院解散・総選挙の不安を掻き消してしまった。

米不動産バブルの破裂と中国経済の混乱2005-07-25

 人民元の切り上げによって、主要通貨に対してドルは一時的に売られたが、対円でも週末には111円台に上昇し、ドル高傾向は続く見通しである。GDPに占める設備投資の比率が5割近い歪な中国経済よりも安定し底堅く推移している米国経済に魅力を感じるのは自然の成り行きである。米不動産バブルの破裂リスクは高いが、そのような事態が発生したとしても、FRBは政策金利の大幅引き下げを実施し、米国債券の利回りは急低下する可能性が高い。米株式市場は混乱するだろうが、米国債の上昇を見込んだ債券市場への資金流入は途絶えることはないだろう。

米株価は実体経済を反映しているか 2005-07-18

 米国経済の改善を示す経済指標の発表を受け、NYダウは3日続伸、S&P500やナスダック総合指数は7日連続の上昇となった。株式市場は物価の安定や生産、小売の伸びを評価しているようだが、経済指標の中身をみると、米国経済はそれほど順調に推移しているとはいえない。米国の株式は経済を過剰に評価しつつあるように思う。

世界景気の減速強まり債券相場の上昇続く 2005-07-11

 主要通貨に対してドルは強含みで推移するだろう。円ドル相場も年初の1ドル=102円から112円台まで円安ドル高が進行したが、日米の景況差からさらに円安ドル高が進むとみている。OECD発表の景気先行指数によると、日本の先行指数の落ち込み方が米国よりも大きくなっており、資金の流れは日本から米国へ向うはずだ。

ゼロ金利と量的緩和によるバブル相場 2005-07-06

 日経平均株価は出来高を伴いじり高で推移しているが、先週の商い集中度は高く、投機相場の様相を強めている。29日にはエス・サイエンス(5721)だけで5.3億株の出来高を記録し、1銘柄だけで東証1部の出来高の30%を占めた。トップテンでは45.0%に達し、個人、証券会社の自己を中心とした超短期売買が市場を席捲している様子が窺える。
 新規資金が株式市場に流入しているのではなく、一定の資金をもとに頻繁に売り買いが繰り返されている投機相場だ。04年度の個人株式保有比率(全国証券取引所上場会社、時価総額ベース)は20.3%であったが、03年度を0.2ポイント下回っており、個人は新規資金を株式市場に振り向けていないことがわかる。
 日銀のゼロ金利政策や株式手数料の引き下げが、個人を投機に走らせているが、投機は株式だけでなく、不動産にも広まっており、80年代後半のバブル相場に似てきた。「喉元過ぎれば暑さを忘れる」という諺通り、個人や金融機関はあれほど苦しめられた土地と株式にのめり込んでいる。人口減、高齢化、増税、社会保険負担増等により、日本の長期成長率はプラスを維持することも難しい状況に陥っている。長期成長率がマイナスもあり得るシナリオでは、株価収益率は10倍前後に低下しても不思議ではないし、土地の需要減によって、地価も下落していくだろう。80年代の利下げがバブル化を助長したのと同じことが、今またゼロ金利と量的緩和の長期化のもとで、不幸にも再現されようとしている。

米政策金利の打ち止めを見込んだ円安ドル高 2005-06-27

 過去2ヵ月ほどで500ドル以上上げていたことや原油価格の最高値更新に嫌気し、23、24日の2日でNYダウは300ドル弱下落した。資金は株式市場から債券、商品に向かい債券利回りは再び3%台に低下し、ドル高にもかかわらず金は440ドル台に上昇した。
 いまのところ米国の物価上昇圧力は緩やかだが、原油高が長期化することになれば、米国経済をじわじわ蝕むことになろう。早い段階に、そうした不安を摘み取るためにも、FRBは今週開催のFOMCで政策金利を0.25%引き上げ3.25%にするはずだ。政策金利の引き上げを見込んで、米短期金利は3.5%弱まで上昇し、長期金利との金利差は0.44%に縮小してきた。

米金融政策と景気のミスマッチが不動産をバブル化 2005-06-13

先週末の米債券相場は反落したが、その他主要国の債券利回りは低下し、資金は引き続き債券市場に流入している。特に、欧州の債券相場は堅調であり、英国やドイツの利回りの低下は過去3ヵ月で0.6%を超えた。1−3月期のEU GDP(名目)は前年を3.3%上回ったが、4−6月期以降、大幅にスローダウンする見通しであり、欧州債券相場はこうした経済成長率の低下を反映した上昇だと考えられる。
 4月のOECD景気先行指数は前月比0.3%減と3ヵ月連続のマイナスだ。ピークの1月から0.8%低下し、OECDの景気は緩やかな下降に向かいつつある。過去3ヵ月の落ち込みが大きいのは米国とドイツであり、1.5%、1.4%それぞれ下落した。日本も0.9%低下し、米国、ドイツ、日本の3カ国が世界景気の足を引っ張っている。

米長期期待成長率の低下による債券相場の上昇2005-06-05

 フランスとオランダが欧州連合憲法の批准を否決したことからユーロが売られた。欧州中央銀行の経済見通しによると、05年のEU実質GDPの伸び率は3月の1.6%から1.4%に下方修正され、EUの景気低迷からの脱出は容易でないこともユーロ離れに拍車を掛けている。ユーロの短期金利もじりじり低下しているが、特に、景気不振のドイツの長期金利は過去3ヵ月で0.5%以上の大幅な下げを記録した。5月のIfo景況感指数は92.9と4ヵ月連続の低下となり、ドイツの景気不振がEU全体に不安な影を投げかけている。

過去10年の日本の平均経済成長率は+0.3% 2005-05-29

 日本の株価は長期金利の低下で支えられている。今期の予想配当利回り(東証1部、加重平均)は1.25%と長期金利と同じであり、長期金利がさらに低下するならば、株式の優位性が高まるだろう。日本の経済成長率は明らかに低下しており、長期金利はいずれ1%を再び割り込むはずである。経済成長率の低下は当然、収益の伸び率を引き下げ、配当も現状を維持できなくなるであろう。

■ OECD景気先行指数の訴えるもの

2005-05-16

 米債券相場は堅調であり、先週末の利回りは4.12%と2月中旬以来の低い水準に低下した。投機資金の流入によって急騰していた商品市況は、信用不安の噂などに敏感に反応し、相場は急落した。米株式相場も冴えず、資金は債券市場に流れ込んでいる様子である。為替市場ではヘッジファンドなどによるドルの買い戻しによって、主要通貨に対してドルは上昇した。
 米債券利回りは経済成長率に比べて低く、利回りと実体経済にはギャップがあり、いずれ利回りは上昇するというシナリオが描かれていた。こうした予想に反して、債券利回りが低下したのは、GMやフォードの格下げだけでなく、米国経済に先行き不安感が増したことが影響しているように思う。

日米の株価ともに前年割れ 2005-05-09

 日経平均株価は11,000円割れまで急落したが、個人の買いで落ち着きを取り戻しつつある。市場参加者は下がったところでは買い、高くなると売るという姿勢を崩しておらず、すでに1年半以上にわたり、狭い範囲の往来相場となっている。ただ、生産や消費は冴えず、実体経済の側面から株価を支えにくくなっていることに加え、信用買い残の増加や外人の売り越し等が株価の上昇力を削いでいるように思う。
 4月末の日経平均株価は前年比6.4%減と2ヵ月連続の前年割れとなった。経験則から推し量れば、いったん前年割れになるとこの傾向は続き、90年代では少なくとも25%減程度まで落ち込まなければ反発しない傾向が読み取れる。株価の下落率は景気の下降速度と後退期間によって決まってくる。鉱工業生産の在庫率はITバブル期のように高い水準に上昇していないことから、生産も大幅な調整にはいたらず、景気もだらだらとした判然としない状態が続くような気がする。とはいえ、日経平均株価はいつまでも今の水準を保てるわけはなく、近いうちに10,000円の大台を割ることになろう。

日銀のジレンマ 2005-04-25

 米国の短期金利が上昇に向っているなかで、日本の政策金利はゼロに置かれたままである。定期預金もほとんど利息がつかず、ただ預けているだけである。利息がゼロに近いにもかかわらず、銀行預金は増加している。一方、貸出は減少し続けており、例えば、都銀の預金は255.4兆円(3月平残)だが、貸出は211.3兆円と預金が貸出を大幅に上回っているのである。短期貸出金利は1%台前半だが、それでもなぜ借り手が少ないのかは、消費者物価の前年割れが続き、デフレ経済から抜け出すシナリオを描くことができないからだ。経済成長率がゼロ近辺を行きつ戻りつしていることも、企業マインドを慎重にさせ、リスクテイクに踏み出すことを阻止している。

薬が切れつつある米国経済 2005-04-18

 NYダウは3日連続の大幅安となり、昨年11月上旬のレベルに落ち込んだ。米国を代表するGM、フォードの業績悪化とジャンク債寸前の格付け、さらにIBMの収益低迷などが売りの引き金となり、米国の主要株価指数はいずれも急落した。企業収益の伸び率が鈍化しているときに、値が保たれていたミスプライスが修正されているのである。FRBの実体経済を無視した超低金利政策によっても株価はファンダメンタルズ以上に引き上げられており、政策金利の引上げも株価を正常な姿に戻すであろう。株価の急低下を受けて、債券市場に資金は流入し、利回りは週で0.24%も低下した。原油価格は下げており、3月中旬には322まで上昇していたCRB先物指数は300を割った。
 3月の米小売売上高は前月比0.3%増加したが、自動車等を除けば+0.1%の低い伸びとなった。家具や電気製品は前月比減となり、ガソリン価格高によるガソリンスタンドの販売増が小売をプラスに保っている状況だ。小売売上高は前年比5.8%増だが、3ヵ月連続の低下となり、昨年12月から3.1ポイントも低下した。4月のミシガン大学消費者心理指数は88.7、前月比3.9ポイント悪化し、03年9月以来の低い数値となった。消費者心理が悪化するなかで、米貿易赤字は過去最高を更新しており、米国のフラストレーションは高まっている。

株価下落のシグナル、3月末の株価20ヵ月ぶりの前年割れ 2005-04-10

 日経平均株価は昨年末以降、11,000円台の狭い範囲内の動きにとどまっているが、3月末値は前年をやや下回った。月末ベースの前年割れは03年7月以来20ヵ月ぶりであり、過去のデータに基づくならば、いったん株価が前年水準を下回ると、前年割れは長期化するのが普通である。前回ITバブル後の調整では、00年2月に前年比伸び率のピークをつけてから、4ヵ月目に前年を下回ったが、減少率の最大は前年割れから15ヵ月経過した01年9月であった。今回、前年比増加率がピークに達したのは昨年4月(+50.2%)であり、ピークをつけてから11ヵ月後にマイナスに転じたことになる。従来、最大の伸びを記録してから半年前後にマイナスに転換するのが一般的だが、今回はプラス期間が長く、株価がそれだけ底堅く推移していたといえる。だが、3月末にマイナスに転じたことは、株式相場が下げの局面に入ったことを示唆したと読み取れる。減少率の期間と幅は景気次第であり、景気後退が深く長期化すれば、株式の下げも大きくなる一方、景気後退が浅く短期で拡大に向う観測が強まれば、株式相場の調整も深刻なものにはならないはずである。

実体経済と『日銀短観』の隔たり 2005-04-03

 3月調査の『日銀短観』によると、大企業製造業の業況判断(「良い」−「悪い」、%)は14%と12月調査から8ポイント低下した。先行きは14%と横ばいになっているが、05年度上期の業績は04年度下期の伸びを下回り、経常利益は前年割れの計画である。大企業非製造業の業況判断は11%と前期比横ばいであり、先行きも10%の見通しだ。だが、04年度下期の経常利益は前年比-6.9%と上期の+31.1%から減益に転じる計画であり、業況判断を収益との関連で考えるならば、業況判断に違和感を覚えるのは不思議ではない。
 05年上期の収益計画は前年割れを見込んでいるが、大企業の設備投資は05年度上期、前年比+9.6%と04年度下期をやや上回る計画である。財務省の『法人企業統計』によると、大企業全産業の設備投資は04年10-12月期、前年比13.4%増と高い伸びを維持している。ただ、『短観』のように04年度下期が上期を大幅に上回ることは考えにくい。全産業の設備投資は04年10-12月期、前年比+3.5%と7−9月期まで3四半期連続の2桁増から鈍化した(『法人企業統計』)。『短観』では全規模全産業ベースの設備投資は04年上期の+4.7%から下期には+8.8%に拡大する計画である。機械受注や資本財出荷が大幅に落ち込んでいるなかで、設備投資が拡大するというのはあまりにも現実離れした計画ではないだろうか。

■ 米債券利回り上昇トレンドへ 2005-03-29

 米連邦準備理事会は22日の連邦公開市場委員会でフェデラルファンズ・レート(FFレート)を0.25%引き上げ、年2.75%とした。これで昨年6月以降、7回連続の小幅引き上げとなり、01年9月以来の高い水準に上昇した。原油価格が高値圏で推移していることにより、物価水準もじわじわ上昇しつつあり、米連邦準備理事会は引き続き政策金利を引き上げる方針である。連邦公開市場委員会の声明文でも「ここ数ヵ月で物価の上昇圧力が強まり、企業が生産コストの増加を製品価格に転嫁する動きが広がってきた」と指摘し、場合によっては大幅な利上げも辞さない姿勢を滲ませている。

原油価格高騰の結末 2005-03-21

 原油価格の高騰は、最終製品の価格への転嫁を通して世界経済に影響を及ぼすことになろう。原油産出国は莫大な利益を獲得するが、原油を産出しない途上国の国際収支は急速に悪化し、借入等の返済が滞る事態も予想される。原油価格の最終製品への価格転嫁が行われるあいだ、先進国の経済も混乱や摩擦が生じるけれども、いったん物価水準が上がってしまえば経済は落ち着くであろう。国内の消費者物価は前年割れで推移しているように、過去のオイルショックとは比べものにならないくらい原油高騰の物価への影響は軽微にとどまる見通しである。

週刊マーケットレター(05年3月14日週号)

 商品市況高騰に端を発した米国市場の動揺 先週の日本と米国の市場は、トリプル高・安の正反対の動きをした。米短期金利の持続的な上昇が、長期金利を刺激し、利回りは昨年7月以来の高い水準まで上昇した。債券利回りの上昇が株式相場へも影響してきており、債券相場の動向に一層注意が注がれることになろう。
 需給関係の逼迫見通しによって、原油価格は過去最高値近辺に高止まっており、エネルギー多消費国である米国経済に、インフレ懸念が台頭している。商品市況の高騰は原油だけでなく金や穀物にも波及しており、商品市況の代表的指標であるCRBは過去3ヵ月で15.2%も上昇した。

一部の支出でプラスになった消費 2005-03-06

 消費関連指標も1月分は強めの指標がみられた。ただ中身を検討すると、必ずしも強気にはなれないのである。経済産業省の『商業販売統計』によると、1月の小売業販売額は前年比2.2%増加したが、そのうち8割は燃料小売業の寄与率となっており、大半の小売業の伸びは低迷しているのである。
 総務庁の『家計調査』によれば、1月の勤労者世帯の消費支出は前年比2.6%増と6ヵ月ぶりの高い伸びとなったが、その8割近くが自動車等購入や通信などで占められており、全体の消費が盛り上がっているわけではない。新車販売台数は2月も前年を1.2%下回り、2ヵ月連続のマイナスとなった。

ユーロの反発 2005-02-27

 原油価格が50ドル(WTI)台に乗せたことから、石油株が買われNYダウは昨年12月下旬の高値近辺まで上昇した。商品市況の代表指数であるCRB先物指数は先週末、24年ぶりの300台乗せとなったが、米債券相場は株式のように反応しなかった。23日に発表された2月の米消費者物価指数(食品・エネルギーを除く)が前月比+0.2%にとどまり、物価上昇が加速する内容でなかったことが、債券相場の安定に寄与しているようだ。

■ 事実を曲げた当局の景気判断 2005-02-20

 2月16日に昨年10-12月期のGDPが発表されたが、実質ベースで3四半期連続の前期割れとなり、日本経済は真正の景気後退に陥っていることがわかった。だが、竹中経済担当相は、「経済の動きは大局で見ると回復局面にある。やや長い踊り場になっている」と事実を歪曲した景気判断を示した。「踊り場」は平らなところを指すけれども、実質GDPは3四半期連続で減少しており、右肩下がりの「踊り場」ではない状態にある。なんという厚顔無恥な発言なのか。内閣府で3四半期連続減のGDP統計を発表しておきながら、統計を無視した判断を示すとは、何のために時間と金をかけ統計を作成しているのだろうか。景気は悪いのに、「踊り場」にあり心配することはないということは、国を誤った方向に導くことになる。悪ければ悪いような対策を取らねばならないが、放置しておけば、ますます悪いほうに傾いていくのは必定である。初期治療を疎かにすれば、病巣は拡大し、治療は困難を極めることになるのと同じことである。事実を事実とみない当局の陋習が、いつもの事ながら国民に犠牲を強いる形で跳ね返ってくるだろう。右肩下がりの状態を「踊り場」と判断した当局の責任は重い。

銀行支配になっても変らない証券会社の体質 2005-02-14

 円ドル相場は昨年12月半ば以来の円安となり、三井住友FGと大和証券の統合報道や機械受注の発表等によって、日経平均株価は1ヵ月ぶりに11,500円台を回復した。両者の統合が実現すれば、一部を除き大半の証券会社は銀行の軍門に降ることになる。預金・貸出が細るなかで、収益力を強化する方策として証券会社を囲い込んでいるが、特定の個人がネット取引に集中している状況で、証券ビジネスを拡大させることは容易ではない。いまのところ異常な出来高によって収益を維持できているが、風向きが逆風に転じたときには、証券会社の経営はすぐに行き詰まってしまうだろう。
 証券会社の営業担当者の知識・判断力は短期間で習得できるものではなく、長期の経験と広い知識を要求される。

米政策金利の引き上げは資金の流れを変える 2005-02-06

先週末発表の米雇用統計が、米国経済の緩やかな拡大を裏付けたことから、米株式・債券相場はいずれも大幅に上昇した。FRBは2月2、3日開催のFOMCでFFレートを0.25%引き上げ、年2.5%とした。FOMCの声明によると、「超低金利政策を慎重なペースで解除できる」と従来通りの判断を示し、これからも小幅な引き上げを続けていく方針のようである。
 実体経済のインフレ懸念は弱いが、不動産や株式市場は膨れており、資産インフレの懸念は強い。FFレートを6.5%から1%に引き下げ、超低金利の長期化が、資金の流れを預金から実物資産へと変えた。超低金利の解除は、資金の流れを実物資産から預金に変えることになり、実物資産は萎むことになろう。

外需不振が鉱工業生産に影響 2005-01-30

外需頼みの鉱工業生産は、輸出数量の減少の影響が色濃くでている。12月の貿易統計によると、輸出数量指数は前年比2.6%増と6月の17.9%増を境に伸びは大幅に鈍化してきた。輸出数量が伸びれば鉱工業生産も伸び、その逆もまた真なりという関係が認められることから、このまま輸出数量指数の伸びが沈んでいくことになれば、やや遅れて鉱工業生産も下降を強めるはずだ。

■ 株式のバブル化と個人の市場離れを危惧 2005-01-23

 日経平均株価の上値は重く狭い範囲の往来相場が続いているが、商いは依然衰えず、売買高は15億株(東証1部)程度を保っている。個人のネット取引による超短期売買が売買高を異常に膨らませており、売買高から判断すれば今の株式市場は明らかにバブルと言える。低取引コストを背景に、経済実態を無視し、僅かの材料を手掛かりに売買を繰り返し、日銭を稼ごうとしている個人投資家が著しく増加したことを売買活況の要因のひとつに挙げることができる。ゼロ金利に我慢できない個人投資家が目先の金ほしさに株式市場に参入しており、いまでは東証1部の売買高の5割前後、2部では8割超を個人が占めている。売買代金ベースでも東証1部の約3割、2部では8割強を個人が占め、外人に次ぐ影響力を持っているのである。

米政策金利引上げにより円高ドル安基調持続 2005-01-17

 先週、円ドル相場は一時101円台を付け、再び円高ドル安の様相をみせてきた。昨年12月の米小売売上高や鉱工業生産指数の伸びは予想を上回ったが、11月の貿易赤字が過去最大になり、12月の生産者物価指数が前月比で低下したことなどから、ドル売り、円買いの勢いが強まった。昨年12月の外人の日本株買越額が9,492億円に及び、1月第1週も1,983億円と大幅な資金流入が続いていることも円相場を押し上げている。

■ OECD景気先行指数から推測した05年の株式相場 2005-01-09

 11月のOECD景気先行指数は、前月比+0.2%と4ヵ月ぶりに上昇し、03年3月を底とした回復過程で最高を付けた。回復当初は力強い上昇を見せていたが、04年2月以降はほぼ横ばいに近い動きを示しており、世界景気はやっと拡大を維持できている状態にある。

■ 日本株保有の魅力失せる 2004-12-19

 欧米の株高や長期金利の低下等によって、日本の株価も値を保っていると言われているが、実体経済の悪化には逆らえず、下値を探る展開となろう。欧米の株式が堅調になれば、日本株も底堅く推移するというコメントをよくみかけるが、過去の関係をみると相関関係の強いときもあるし、逆相関の期間も認められる。90年代以降のトレンドはほぼ逆に動いており、欧米の株高が直ちに日本の株高に結びつくというのはあまりにも単純だ。米国の収益増加率はピークアウトしており、米株価は実体経済からずれてきているのではないか

■ 設備投資の冷え込みによる景気悪化のリスク高まる 2004-12-13

バブル崩壊後の経済成長率としては、消費税税率の引き上げによる駆け込み需要で伸びた97年1−3月期以来となった今年1−3月期の名目成長率(前年比3.2%)は、その後、1%台前半に低下した。名目前期比では4−6月期マイナス0.6%、7−9月期横ばいと冴えず、景気は後退といえる状況にある。

■ 国内景気の減速ピッチ速まる 2004-12-06

 国内の景気減速は強まっているが、今後、さらに厳しい状況に陥るであろう。株価は11,000円台に戻ったが、景気減速下での買いは限定的であり、実体経済からズレた動きは長続きするはずがない。景気循環に則るならば資産運用は株式から債券に移すのが定石といえる。機関投資家を始めとする多くの資産運用者は実体経済をろくに見ることなく、資産運用に取り組むという愚を犯している。実体経済を読み解く訓練を怠ったことによる運用損は計り知れない。

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この記事は「編集者」の寄稿です。2005年11月14日 08:53.

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