2003年11月 Archives

第27号 2003年11月25日刊行

  • シルビオ・ゲゼル、『自然的経済秩序・第三部 Ⅱ 自由地と自由貨幣による自然的経済秩序 第三部 貨幣論-金属貨幣と紙幣』(中)、相田慎一訳
序論
第6章 貨幣が達成すべき価格とはどのようなものか
第7章 貨幣価格はいかにして正確に算出されのか
第8章 紙幣の価格はどのようにして生まれるのか
第9章 需要と供給への諸影響
第10章 貨幣供給(商品需要、単に需要)
第11章 今日の貨幣流通における法則性

  • 高齢者を支えるための「時間貯蓄」に関する問題の考察
  • 除巧 杜鵬 除誼 (泉 留維、耿莉莉)

ディスカッション

返答が長くなってしまったものは別ページで表示しました。 をクリックすると返答のページへリンクします。
その時点でのディスカッションですので内容が現在とそぐわない場合もあります。あくまでも参考としてお読みください。
サイト係りの不手際で発言日が掲載されておりません、折々付記していきます。

地域通貨でよく話題になる累積債務はどう捉えたら良いのでしょうか。

いろいろな意見があります。2002-05-25

急かされるということそのことの問題です。人間の交流を活発にするのはいいとしても、モノのやり取りが活発になること自体を人為的に推進していいのかどうか。通貨の保有が利子を生まないのであれば(現実にはゼロ利子でもマイナス利子の感覚になると先に書きましたが)、保有自体を罰する必要があるのかどうか、という問題が残るように感じます。この問題は、そもそも価値の増殖しない地域通貨をどうして人は(使わないで)保有するのか、という問題につながってきますが。

このへんは、地域通貨のなかでマイナス利子を実施するところもでてきましたが、そういう地域通貨のシステムのなかでの議論と、本位貨幣の世界で課税貨幣を導入するマクロ的な次元での議論をちょっと区別して議論しておきたいというところはあります。

地域通貨でできることが、どうして通常通貨ではできないのか。

現実にそれがないわけですが、なぜ存在していないのでしょうか。なぜ本位貨幣ではできないのでしょうか。,,,,

地域通貨経済圏と地球儀が一致すれば通常通貨でもできるではないか。

どのように一致させ、どのように実行するのでしょうか。 国際的次元では戦後、ブレトンウッズでケインズがマイナス 利子率の国際通貨、バンコールのシステムを提案しました。 まったく無念なことにそれは米国のホワイト案に破れたのです。 そうして、私たちは、現在のような異形な姿を示す国際金融 秩序のなかにいるわけです。 地域のレベルで、国のレベルで、そして国際的レベルで、お金 のシステムには改革が必要です。 それを導く理念は共通して います。 地域通貨の理念です。 わたしたちは、自分たちのいる ところでまず、それを開始することができます。 そして大きな 価値観の変化をもたらしながら、それは進んでいくと思います。

通常通貨での利潤を地域通貨で上げたいという人がいたらどうなるのでしょうか。

利潤はあげて当然です。 その富が反社会的に退蔵されないこと が問題なわけです。 利子と利潤はどこが違うのでしょうか。 利子は利付き貸借のなかで確定されたものです。 これは資本コスト として必ず生産コストのなかに入り込んでいます。 資本家はこうした コストを覚悟で貨幣を借入れ、投資します。 事業が行われ生産物 が販売されます。 事業がうまくいくときもあります。 そうでないときも あります。 後者の場合は利潤はでてきません。 つまり利潤はつねに リスクに関連しているわけです。 しかし、利子は産出高になんらの 関連ももたないプレミアムです。 利潤は市場向けの供給を目的と する企業運営のリスクと企業活動に対する企業活動の産出高に 関連したプレミアムです。 地域通貨は私的な企業家体制がよいとか悪いとかはいいません。 問題なのはプラスの、社会に負荷を賭ける利子システムにたつ 通貨制度ではないお金の仕組みを作ろうとしているわけです。

「お金を問うことは、人間を問うこと」と教えていただきました。さて、価値貯蔵機能を失った社会において、新しいものを生み出そうとするインセンティブはそがれることはないのでしょうか。

価値保蔵機能を失うとはいっていません。減価しながらも価値は保蔵されるのです。減価するだけです。ですから当然、契約の清算手段機能を減価する貨幣は果たすことができます。経済学の理屈で議論する前に、ready moneyに負荷がかかるとき自分であればどうするか、考えてみてください。
合理的に考えたばあいどうするか。例えば、現下の経済状況下で貴兄が100億もっているとしてどう行動しますか?そして、そのキャッシュに持ち越し費用がかかるときどう行動しますでしょうか。

800万円程の発行だが、絶えず利子を生まずに地域内で流通するため、地域には二億円以上の効果がある。とはどういうことですか?

貨幣の発行残高だけでなく、貨幣の流通速度が重要なのです。貨幣は、残高*速度、分だけ価値を生み出しています。
ちなみに、日本の流通速度は0.8ぐらい。(名目GDPをM1で割った値)イサカアワーズは、12ぐらいという話があったと思います。(これは推計値でしょう)下記の例だと、25以上のようですね。2002-04-23

C/S型の構造を作り上げるリスクの高いLetsのような仕組みとは,どういうことですか? 2002-04-04

C/S型は水平な構造ではありませんからサーバーが常に維持され、壊れることなく、正常に維持され続けることを前提にしています。
地域通貨がゼロ利率の契約で行われていくとすると、運営団体は永久に存続しなければならないということになります。でなければ信頼を担保できません。
これは運営上非常な困難を伴います。

農産物が担保になっている場合は、豊作不作の差が大きいと年度ごとに通貨価値が変動しませんか?それとも毎年の生産量の変化による変動をならす工夫があるんでしょうか? 2002-04-04

財担保通貨の場合、財の価格変動を吸収するために比較的値動きの少ないいくつもの財のバスケットを構成して担保とする手法があります。しかし実際横浜ではじめるのはもっとシンプルなものです。

法的規制の件 地域通貨をもし、いざ実施と言う段階で、なにか法的な規制が日本にはトウゼンあるのでしょうか?

基本的な問題はいくつかありますが、

 

最近まで円は土地担保型の証券であったと考えて良いのでしょうか?

みなが地本主義を信じていたときは、みなが無担保の円を 土地で担保しているかのように祭り上げていたといえますね。 土地は将来必ず、上昇するという予測が支配的で、土地の時価 以上の金額が平気で貸し出されました。土地を持ち越せば、 保有にかかる土地関係の諸税を差し引いても、必ず値上がり しているので、将来に対してプラスのスプレッド(価格の開き)が 成立しました(そうなるはずと皆信じてました)。その予測が実需 以上の土地需要を生み、土地価格を高騰させました。土地に 対して円は下落していたわけです(資産インフレ)。この教訓は 時価で変動しにくい安定した財で担保された証券が必要ということです。

地域通貨と円を交換?

地域通貨は円と交換できません、というのがどこでも採用している方針ですが、これについて、その意味を理解されていない方が多いようです。

  1. 地域通貨を円と取り替える、 コレ、ダメ
  2. 円を地域通貨と取り替える、 もし、1が維持されているなら、2が行われても、地域通貨と円は交換できないということになります、当然ですが。円と交換できる満杯スタンプを地域通貨に取り替えても地域通貨が円と交換できることにはなりません。円で地域通貨を買ってもらってもおーけーです。これは結構活用できるんですよ。

週刊マーケットレター 2003

米物価の歴史的な低下、低報酬・稼働率 2003-12-22

7−9月期の実質GDPが前期比年率8.2%の高成長となったが、物価が一段と沈静化して いる要因のひとつに、雇用者報酬の抑制を挙げることができる。01年7−9月期までは名 目GDPが雇用者報酬の伸びを下回っていたが、01年10-12月期以降は8四半期連続で名目 GDPが雇用者報酬を上回った。03年7−9月期の前年比伸び率の差異(名目GDP--報酬)は 2.7ポイントに拡大しており、雇用者の分け前は縮小している。

 11月の設備稼働率は75.7%と6月の74.0%を底に回復しているが、前年比では0.3ポイント の上昇にとどまっている。02年までの平均稼働率(81.3%)を依然大きく下回っており、 稼働率の上昇が生産性を高め、物価を押し下げる役割を果たしていように見受けられる。

80%程度までの稼働率上昇であれば、引き続きコスト低下につながり、物価低下に寄与す るであろう。7−9月期の労働生産性は前年比+5.0%と2四半期連続して伸びは拡大した が、機械設備に余裕があることから来年も労働生産性の高い上昇が期待できそうである。

*今年の週刊マーケットレターは今回で終わります。次回は1 月12 日号からとします。年 末年始は市場参加者が少なく、ヘッジファンドなどが薄商いを突いて相場が大きくぶれる こともあります。ユーロがさらに上昇するかどうかも興味あるところです。商品市況は世 界的な物価安定により、落ち着くでしょう。よいお正月をお迎えください。

機械受注の大幅増にも株価反応薄 2003-12-15

 10月の民需(船舶・電力を除く)は前月比17.4%増と予想を上回る伸びとなったが、株式市場の反応は限定的であった。製造業は10.2%と2ヵ月連続の2桁増となったことに加えて、非製造業も20.1%増と急増した。製造業ではウエイトの高い電気機械や一般機械が大幅に伸び、非製造業は主力の通信業が33.4%も増加した。これだけ機械受注が伸びても、株式相場の反応が鈍いのは、すでに相場に織り込み済なのか、これ以上の受注の伸びは期待できないと思っているからであろう。
 民需の前年比伸び率は23.1%と00年10月以来の高い伸びとなった。民需が前年比20%を越えることは稀であり、ピークが近いと判断してよい。ITバブルのときのピークでは45.8%(00年8月)も増加したが、ピーク以前に20%を上回ったのは2ヵ月であり、ピーク後を加えても5ヵ月に過ぎず、頻繁にみられる現象ではないのである。
 10月20日をピークに日経平均株価は下降しているが、下降局面では株価は機械受注に先行していることが読み取れ、機械受注からも厳しい状況にあることが窺える。「あしぎんFG」の出来高が膨らんだことで、出来高は引き続き多いが、売買代金では1兆円を下回っており、市場参加者は売買を手控えている。信用買い残の整理も進んでおらず、信用買いの手仕舞いが、今後売り圧力になることは間違いない。日経平均株価の予想株価収益率は23.5倍に上昇し、配当利回りは0.99%と長期金利を下回っており、株価は割高である。
 日本不動産研究所によれば、9月末の全国全用途平均地価指数は前年比7.9%減とマイナス幅は3月比0.8ポイント拡大し、過去最大となった。デフレが沈静化するどころか、地方を中心に拡大する有様では、株式など買えるわけがない。儲けることができたとしても偶然であり、深追いすれば必ず大きくやられることになる。株式投資はデフレが鎮まってから始めるべきである。

7−9月期の企業収益、一部に偏る 2003-12-07

 財務省の『法人企業統計』によると、7−9月期の売上高は前年比+2.2%と2四半期連続で増加した。昨年7−9月期が-6.9%の大幅減収だったことからみれば、伸び率は決して高くない。製造業は+1.3%と前期の+3.9%から伸びは低下した。一般機械や輸送機械は2桁増となったが、夏場の低温によって食品が2桁減となったほか、クーラー等の不振で電気機械もマイナスとなった。サービス業や運輸・通信業の拡大により、非製造業の売上高は2.6%増と製造業の伸びを上回った。

 営業利益は前年比10.3%増と02年7−9月期以降、5四半期連続のプラスとなった。製造業は18.6%増加したが、02年10-12月期の71.2%増をピークに3四半期連続で伸び率は鈍化した。非製造業は5.3%と2四半期ぶりのプラスとなったが、営業利益の前年比増加額の7割弱は製造業が占めた。製造業の営業利益のうち電気機械が66.5%、一般機械が20.6%を占めており、営業利益の増加は一部の業種に偏っているのである。

 

金融不安の再燃 2003-12-01

 株価がピークアウトした時期に「足利銀行破綻」の悪材料が飛び出し、信用不安の 後退により上昇した銘柄が、売り圧力にさらされることになりそうだ。「りそな」へ の公的資金注入が信用不安を鎮め、株式市場に好影響を与えたが、国有化し株式価値 がゼロとなった今回の措置によって、金融不安が再び台頭してこよう。4月末以降、 銀行、建設、不動産といった不良資産を多く抱えた企業の株価が急騰したが、信用不 安の高まりで手放す動きが強まる見通しである。

 名目GDPの減少とデフレという厳しい経済情勢のなかでは、公的資金の投入を続け るだけでは金融部門はなかなか健全な姿に戻れない。財政が危機的状況にある一方 で、国民負担となる金が「金融危機対応会議」の数十分の議論で使われる理不尽なこ とがまたも遂行された。日債銀や長銀が国有化された後に発見された膨大な不良債権 を公的資金で埋め合わせた教訓が活かされることなく、安易に国有化の道を選んだ。

 10月の銀行貸出残(396兆円)は前年比-4.7%と減少し続けているが、地方銀行 (131兆円)は前年比0.6%増加した。都銀は大企業の借入返済や不良債権処理などで 貸出は7.6%減と大幅に減少したが、地銀は不良債権処理が思うように進展せず、貸出 をそのままにしているケースが多いのではないか。地方経済の不振が地価下落に拍車 を掛けていることも、地銀のバランスシートを痛めていると考えられる。7−9月 期、GDPデフレーターは前年比2.7%下落したが、デフレが企業の資産劣化や収益悪化 を引き起こし、貸付や利払いの焦げ付きとなっている。

日経平均の10,000円割れとドル全面安 2003-11-25

 先週、日経平均株価は10,000円の大台をあっさり割り込み、一時9,600円台に下落した。週末は9,800円台にやや回復したが、戻りは弱く、このままずるずると下値を切り下げていきそうだ。

 上場企業の収益は回復しているとはいえ、外需頼みでは来期の利益がさらに増大するとは考え難く、株価にもっとも影響力のある業績面からの株価支援は期待できない。エレクトロニクス関連企業の株価収益率は異常に高く、業績を度外視した短期売買で株価はなんとか維持されてきたが、買い手控えられ短期売買が出来なくなると、株価は下振れしていくのである。信用不安の一時的後退によって、低位の信用不安銘柄が急騰したが、「山高ければ谷深し」で今度はそうした銘柄が急落している。

  

 米国では投信の短期売買等が問題になっているが、運用体制が欧米に大きく遅れている日本の機関投資家の運用姿勢はどうだろうか。運用に無知な人材が投信会社の重要なポストに就き、経験の浅いファンドマネジャーが資産を運用している状況を直視するならば、米国以上に日本の投信の問題は大きいように思う。

7−9月期の日本経済、デフレ拡大しマイナス成長に反落 2003-11-17

先週末、7−9月期のGDPが発表された。デフレーターは前年比2.7%低下し、前期よ りもマイナス幅はやや拡大し、実質的に日本経済は94年7−9月期以降、9年以上の 長期にわたる物価下落に苦しめられている。民間最終消費支出のデフレーターは1.6% 減と前期と同じだが、民間企業設備は7.2%下落し、5四半期連続して過去最大を更新 した。民間設備投資に比べれば、下落率が小幅な公的固定資本形成も2.4%低下した。 世界経済史上類を見ない物価の長期下落は、需要の低迷と固定資本ストックの過剰に よって引き起こされており、デフレが終息する兆しは見えない。

 物価下落により実質GDPは嵩上げされ、前年比2.5%増加したのを見て、「景気の回 復傾向が鮮明になってきた」とコメントする社説も見受けられるが、新聞社では物価 の下落率が、売上げの減少率を上回り、実質プラスとなれば、「売上げの回復傾向が 鮮明になってきた」と評価するのであろうか。戦前の大本営発表と変わらない新聞報 道が社会を惑わしている。

 名目GDPは前年比-0.3%と2四半期ぶりにマイナス成長になり、経済規模は3.3兆円 縮小した。4−6月期は9四半期ぶりのプラスになったが、プラス成長は1四半期で 終わった。民間最終消費支出は3四半期連続で微減だったが、7−9月期は-1.4%と 99年10-12月期以来の大幅な減少となり、個人消費の不振がプラス成長を阻んだ。GDP の下落をこの程度にとどめることができたのは、純輸出(輸出--輸入)が前年比 +51.9%と急増し、GDPを0.6ポイント引き上げたからである。

 個人消費が減少する半面、民間設備投資は6.0%増と4四半期連続のプラスだ。だ が、個人消費が減少している状態では、民間設備投資の拡大を持続させることは不可 能である。輸出関連やハイテクの一部では生産設備の増設が期待できるが、内需関連 は設備増強ではなく設備処理が優先されよう。需要の減少が止まらないなかで、物価 を安定させることができるのは既存の過剰設備を破棄し、適正規模に縮小することに よってのみ可能になる。

選挙後、株式相場への疑念強まる見通し 2003-11-10

 9月の世界半導体売上高が前年比17.5%増加したことや10月のISM製造業景気指数の上昇を好感し、ハイテク関連企業を多く抱えるナスダックは堅調に推移した。一方、週末に発表された10月の米雇用統計が改善したにもかかわらず、NYダウは値を下げた。衆議院選挙を控え、日経平均株価も頭の重い展開となり、週間の上昇率は小幅にとどまった。 

強い経済指標でるが、外需頼みで楽観は禁物 2003-11-03

・・・最終製品の多くはアメリカへ向っている。7−9月期の米国経済成長率が前期比年率7.2%伸びたことが、日本の半導体・電子部品等の輸出を引き上げたことは間違いない。

 輸出は好調な半面、内需は引き続き不振である。9月の輸出額(季節調整値)は4兆7千8百億円と6ヵ月連続で前月を上回り、10ヵ月ぶりに過去最高を更新した。輸出数量指数も9月、前年比4.5%と3ヵ月連続のプラスとなった。他方、9月の商業販売統計は前月比3.0%低下し、1年ぶりに90年代の最低を更新した。このように、内外需の動向はきわめて対照的であり、依然不振な国内需要だけで鉱工業生産を3.0%も引き上げることはできなかったはずだ。輸出と半導体関連の強い需要に支えられたからこそ強い数字がでたのである。内需が主力のパルプ・紙・紙加工品工業は2ヵ月連続の前月比マイナスとなっており、国内景気は鉱工業生産が示すほど良くない。10-12月期の米経済成長率は鈍化する見通しであり、輸出に過度の期待を寄せるのは危険だと思う。

収益回復阻む過剰資産 2003-10-27

 『法人企業統計』(財務省)によると、02年度の全産業売上高は前年比-0.9%と2年連続で減少した。販管費比率は横ばいだが、粗利率の改善により、営業利益は8.4%増と2年ぶりのプラスになった。売上げが減少する環境で利益を拡大できたのは、従業員を71万人、前年比2.0%削減したからである。これによって、従業員給与が2.4兆円削減され、同額、営業利益は増加した。

株式市場のバブル化2003-10-20

 9月の企業倒産件数は1,238件、前年比18.2%減少し、99年4月以来約4年半ぶりの低い水準となった。企業倒産件数は01年10月のピーク(1,911件)以降も高水準に張り付いていたが、すでに本レポートで取り上げたように、今年2月に始まった「資金繰り円滑化借り換え保証制度」によって、中小企業の借り換えが容易に行われるようになり、倒産件数は著しく減少してきている。経済状態が大きく改善したわけではなく、人為的に企業を救済していることから、企業倒産件数の減少は一時的であり、借り換えが一巡すれば、倒産件数は増加することになろう。
 日銀の量的緩和や倒産件数減、外資の買い等により、銀行株は大商いが続き、小会社の証券会社の株価も急騰した。ソフトバンク等の情報通信関連株もITバブル期を彷彿させるような値上がりとなり、投機色が強まっている。10月10日現在の信用買い残は2兆332億円と2000年12月以来の2兆円超となった。急騰した銘柄の株価収益率(株価を1株当り当期純利益で割ったもの)は異常に高くなっており、日本の株式市場は再びバブルに突入したといっていいだろう。

 

景気に効かない量的緩和 2003-10-13

 日銀は10日の金融政策決定会合で、日銀当座預金残高の目標値の上限を2兆円増額し、これまでの「27〜30兆円程度」から「27〜32兆円程度」に引き上げた。福井俊彦氏が日銀総裁に就任してから、これが4度目の量的緩和である。同日、衆議院が解散され総選挙に突入したが、小泉政権を金融面から支援する意図も感じられる。
 週末、円ドル相場は108円台に上昇した。過去1ヵ月で8円強上昇した急激な円高を阻止する狙いも窺われるが、量的緩和では効き目はない。ゼロ金利下では日本サイドの円安誘導は不可能である。円売りドル買いで買い増した米短期証券を売却する方法もあるが、売却資金のドルを円に変えることはできず、結局、ドル資産の購入に落ち着くことになる。いつものことながら、為替相場は今回も米政府の意向が強く反映されたものになろう。
 量的緩和をしても、資金需要は生まれず、銀行に資金は滞留するばかりだ。9月の貸出(銀行計)は前年比-5.0%と減少幅は依然大きく、返済された資金の大半は国債の運用に振り向けざるを得ない。日銀は銀行保有の国債を購入し、日銀当座預金残高を積み増すというのが量的緩和である。9月末の日銀当座預金残高は34.5兆円、前年比16.0兆円増加し、日銀保有の国債は91.8兆円、同8.2兆円増加した。
 量的緩和は銀行保有の国債を日銀当座預金に変えるだけである。銀行資産の大半は貸出と有価証券だが、国債を日銀に売却し、その売却額が当座預金に振り向けられているのである。日銀は新発の国債を購入できないが、銀行経由ではいくらでも国債を購入できるようになっている。資金需要が盛り上がらずに貸出の減少が続くことになれば、銀行は国債を購入し、それを日銀が購入するという仕組みは続くであろう。
 日銀によれば、量的緩和は「景気回復に向けた動きをより確実なものとすることに資する」ようだが、銀行資産を国債から当座預金に変えているだけであり、景気にはなにの影響も与えることはできない。いくら量的緩和をしても、貸出の落ち込みを止めることができないことが、量的緩和の行き詰まりを証明しているではないか。マネーサプライでさえもマネタリーベースの10分の1程度しか伸びていない。日銀当座預金残高は準備預金等の10倍程度に膨らんでいることから、信用乗数は極端に低下している。量的緩和では日本経済を刺激することができないのは明白である。

生産減速下での円高 2003-09-29

8月の貿易黒字は前年比23.1%増と2ヵ月連続の増加となった。対米黒字額は5.0%減少 したが、対アジアの黒字額が+42.0%と急増したからだ。対世界の輸出指数(数量ベース) は前年比-0.1%と2ヵ月ぶりに減少した。昨年11月の17.6%増をピークに伸びは急速に鈍化 している。対米の輸出指数(数量ベース)は-12.3%の大幅減となり、今年2月以降、7ヵ 月連続の前年割れだ。対米輸入指数(数量ベース)は8月、-24.0%の大幅減となったこと が、対米黒字額の減少を小幅にとどめた。本来、対米輸出指数の減少は円高を阻止する要 因になるはずだが、米政府主導の円高では、国内要因の為替レートに及ぼす力は微力であ る

 輸出数量指数と鉱工業生産指数は相関性が強く、一般的に、輸出にやや遅れて鉱工業生 産が変化するといわれている。輸出数量指数の前年比伸び率は昨年11月をピークに低下し つつあるが、2ヵ月遅れて、鉱工業生産指数もピークをつけ、7月は前年を0.3%下回った

このように、すでに輸出数量が減少しているときに、円高ドル安が急速に進行することに なれば、鉱工業生産の減少が加速することは目に見えている

 経済産業省の『商業販売統計』によると、8月の小売業販売額は前年比2.0%減少した

マイナス幅は7月に比べて縮小したが、最終需要は引き続き弱く、プラスに転じる展望は 描けない。小売の不振は生産に影響しているが、製造業が円高で痛められることになれば、 製造業部門の購買力の低下が小売業に影響しよう

 9月の月例経済報告(9月12日)で、政府は「景気は、持ち直しに向けた動きがみられ る」との基調判断を示した。「持ち直しに向けた動きがみられる」ということは、政府は 円高ドル安の材料を提供したことになる。だが、生産や消費の動きは「持ち直しに向けた 動き」をみせておらず、景気は悪化の方向を向いている。政府の景気判断が円高に荷担し、 製造業を中心とした景気マインドの悪化が真実味を帯びてきた。

無視できない円高 03 年9 月22 日週号

 外人は日本株を引き続き買い越しており、4月第3週以降、22週連続の買い越しで ある。5月に発表された1−3月期の実質GDPが前年比+2.9%に上昇し、米国の成長率 を0.9ポイント上回った。日本の実質成長率が米国を上回ったのは01年4−6月期以 来、7四半期ぶりである。03年4−6月期も日本の成長率が高くなり、成長率格差の 観点から対日株式投資を増やしているのだろう。ただ、4−6月期の名目成長率はプ ラスになったとはいえ0.5%増にすぎず、米国のほうが高い。単に、実質成長率の比較 だけで投資方針を決めることは非常に危険だ。

 外人は円高ドル安の進行を見込んで、日本株買いを積極化している側面もある。米 雇用環境は依然厳しく、米国は為替メカニズムによる貿易収支の改善を期待してい る。20日のG7の声明文にも「為替レートの更なる柔軟性が望ましい」と謳われてお り、日本政府は7月までに実施したような過度の市場介入に踏み込めない言質を取ら れた。

 「個人消費が強まっている半面、労働市場は依然弱含んでいる」との連邦公開市場 委員会(FOMC)声明文(16日)のように、米国は景気回復期に見られないような厳し 雇用環境に直面している。来年、大統領選を控えているが、ブッシュ大統領の支持率 は低下傾向にあり、雇用の回復はイラク情勢とともに支持率回復の重要な政策課題で ある。

 貿易黒字国に対して為替レートの調整を主張することは、米国の常套手段であり、 今後、日本や中国に対してさらに圧力をかけてくると、株式・為替市場は読んでいる のではないか。円高ドル安は相当のタイムラグはあるが、米失業率の引き下げに関連 がありそうだ。日本が米国よりも成長率が高いことから、今度は日本がブッシュ政権 を為替を通して支えるべきだと要求しているのだろう。

 政府は今年7月までの7ヵ月で約9兆円の大規模な円売りドル買い介入を行った が、円高傾向を止めることができなかった。8月以降は、市場介入を控えていること も、最近の円買いドル売りを勢いづかせている。

 6月調査の『短観』によると、事業計画の前提となっている想定円ドルレート(大 企業・製造業)は117.88円である。すでに想定レートよりも4円弱の円高に振れてい ることから、企業収益の下振れ要因になろう。市場信奉者の多い米政策当局者の顔ぶ れから判断すると、為替メカニズムによる調整をもっと前面に打ち出してくる可能性 もある。そうなれば日本の株式市場は為替問題を無視できないはずだ。

信用収縮に歯止めは掛からず 2003-09-15

 日銀の量的緩和政策によって、マネタリーベースは今年3月の前年比10.9%を底に 回復していたが、8月は20.5%増とここ3ヵ月、伸び率はほぼ横ばいである。20%強増 加しているといっても、増加額の8割は日銀当座預金の寄与分であり、日銀券の寄与 は2割にすぎない。日銀当座預金には29.2兆円積み上げられているが、8月の銀行貸 出は前年比5.2%減と2ヵ月連続でマイナス幅は拡大しており、量的緩和は貸出に結び ついていない。マネタリーベースの伸びによって、マネーサプライ(M2+CD)も増加 しているが、伸び率は緩慢である。準通貨のマイナス幅は1%以下になってきたが、 縮小は依然続いており、規模では現金・預金通貨を30兆円ほど下回っている。郵便貯 金の前年割れ等により、8月の広義流動性は+1.1%の低い伸びにとどまった。M2+CDを マネタリーベースで除した信用乗数の低下に歯止めは掛かっておらず、信用収縮の状 態から抜け出していない。

 主要行12行だけでも43.7兆円の不良債権を抱えており、地銀や信金等を加えると、 不良債権はこれを大きく上回ることは間違いない。こうした巨額の不良債権が資金の 流れを滞らせ、経済の本格回復を阻害していると考えられる。株式相場の回復によ り、悲観論は後退しているが、日本経済の金融構造は依然脆弱なままである。巨額の 不良債権を裏返せば、企業の過剰資本ストックに突き当たる。需要が右肩下がりの状 態にあることから、資本ストックを適正規模に削減することは容易ではない。

株式市場は企業収益の鈍化にいつ気付くのか 2003-09-08 

株式は出来高が10億株を越える大商いが続いており、先週も日経平均株価は続伸し た。景況感の回復を背景に、米国株を始め外国株式も底堅い動きをしており、景気回 復期待を織り込みつつある。7月のOECD景気先行指数は前月比1.1%上昇した。今年4 月まではもたついていたが、その後、回復力は強まり7月までの3ヵ月で3.0%の上昇 となった。景気の改善を示す統計に反応して主要国の債券利回りは急上昇したが、週 末の米非農業部門雇用者減によりやや持ち直した。    東証によると、信用買い残は1.5兆円(8月29日時点)に達し、昨年8月以来の高 水準となった。買い残は今年1月第2週(8,099億円)を底に7ヵ月以上増加してい るが、特に、6月以降は外人買いに刺激され、急激に増加しており、株価上昇要因の ひとつに挙げることができる。   買いが買いを呼ぶという投機相場が信用買い残を膨らましているが、企業業績を顧 みるならば、投機にうつつを抜かしてもいられないことが分かる。先週4日に発表さ れた『法人企業統計』(財務省)によると、今年4−6月期の全産業売上高は前年比 2.4%増と8四半期ぶりの増収となったが、営業利益は2四半期連続で低下し、4.6%増 益にとどまった。製造業は21.3%増と高い伸びを維持できたが、非製造業は-3.3%と2 四半期ぶりの減益となった。運輸通信業や電気業などが大幅減益になったことに加え て、小売業も減益から抜け出すことができなかったからだ。非製造業の営業利益は今 年1−3月期に+1.2%と僅かに浮上したが、プラスは2四半期続かなかった。製造業 では鉄鋼業や精密機械が大幅増益となったが、電気機械は6.9%増と伸び悩んだ。昨年 10-12月期、製造業は前年比+71.2%に急回復したが、営業利益の伸びは急速に鈍化し つつあり、7−9月期の増益率はさらに低下する見通しである。  設備投資は+6.4%と7四半期ぶりの前年比プラスになったが、収益に遅行するた め、今後、伸びの拡大は期待できないであろう。一般機械や輸送用機械は2桁増と なったが、主力の電気機械が7.3%の増加にとどまり、食料品や化学が2桁減と不振で あったことから、製造業では3.8%増の低い伸びとなった。不動産やサービス業はプラ スとなったが、建設や電気業などがマイナスとなり、非製造業でも業種によりまちま ちだった。  上場企業の大半を含む大企業(資本金10億円以上)の営業利益は前年比+2.0%に低 下した。4四半期連続の増益だが、伸び率は昨年10-12月期の35.3%増をピークに低下 傾向をはっきり認めることができる。製造業は32.2%増だが、非製造業は-16.3%と4 四半期ぶりの減益となった。99年の回復期には、営業利益は99年1−3月期に前年比 プラスに転じてから4四半期目の同10-12月期に伸び率は最大になった。ITバブルの 余熱により、株価は営業利益の伸びが鈍化していた00年4月まで上昇した。  家計消費や小売売上高などが大きく落ち込んでいることから、7−9月期の企業収 益の伸び率回復は見込めそうにない。株式市場は今年1−3月期以降の収益率鈍化に いつ気付くのだろうか。遅れれば遅れるほど、痛みは大きくなるのだが。

実体経済と乖離する株価 2003-09-01

 7月の鉱工業生産指数は前月比+0.5%と2ヵ月ぶりにプラスに転じたが、前年比で は変わらずとなり、今年1月の8.0%増をピークに伸び率は低下し、前年割れ寸前の状 態にある。出荷指数は2ヵ月連続の前月比減となり、在庫と在庫率指数はともに前月 比で増加した。

 鉱工業生産指数の前年比増減率と株価は、相関度が強いことがチャートから読み取 ることができる。生産の伸びが低下しているときに、株価が本格的に上昇するケース は見当たらず、今回の反発は短期で終わりそうだ。ハイテク産業の代表である電子部 品・デバイス工業の生産は昨年10月の前年比38.0%をピークに今年7月には8.4%に鈍 化した。情報通信機械工業と電気機械工業は2.4%、1.8%にそれぞれ低下しており、ハ イテク産業の生産は明らかに下降しているといえる。

 売上げの不振を反映して耐久消費財の出荷は2ヵ月連続の前月比大幅減となり、前 年比でも-0.5%と昨年6月以来の前年割れとなった。在庫は6月まで5ヵ月連続の前 月比減と在庫調整は進んでいたが、7月は前月比8.2%と急増した。非耐久消費財の出 荷も7月、前月比4.3%減少した半面、在庫は5.4%増加し、今後、在庫減らしのために 消費財の生産は抑制されるであろう。生産財の在庫も4ヵ月連続で増加し、前年比で も2ヵ月連続のプラスだ。景気指標の好転を指摘するコメントが目に付くが、実際の 指標は生産が落ち込み、意図しない在庫が積み上がるといった景気下降のリスクが高 いことを示唆している。

 実体経済と市場の乖離は拡大しつつある。投機が優勢なときほど、実体は霞んで見 え難くなるということを80年代後半以降のバブルで経験したが、出来高が膨らみバブ ルに直面すると、またも実体を見失ったようである。

輸出に遅行する生産2003-08-04

6月の鉱工業生産指数は前月比-1.2%と2ヵ月ぶりに低下した。今年1月以降、プ ラスとマイナスが交互にあらわれており、先行きに自信が持てない企業心理を裏付け ているようだ。前年比では2.8%と前月よりは持ち直したものの、前年同月がプラスと なる7月は、伸びが1%程度に鈍化し、今年1月をピークとする生産減に歯止めは掛 かっていないことが確認できるだろう。景気に敏感な生産財生産指数も前月比0.9%減 少する半面、在庫は4月以降、3ヵ月連続のプラスとなった。生産財生産指数は4− 6月期でも前期比減となり、景気の不透明感は増している。

 商業販売統計や家計調査からも販売や消費低迷の様子が明らかであり、国内最終需 要だけで生産を引き上げることは容易ではない。これまでも鉱工業生産を回復に導い たのは輸出であり、輸出数量指数(前年比)との相関性が高いことがチャートからも 分かる。しかも、輸出数量が鉱工業生産に先行している様子が窺える。

 02年11月、輸出数量は前年比18.2%増加したが、その後、伸び率はほぼ一貫して低 下し、6月は-0.4%と02年3月以来の前年割れとなった。輸出数量に2ヵ月遅れて、 鉱工業生産もピークアウトした。鉱工業生産の回復には輸出数量の増加が不可欠だ が、輸出も主力製品の電気機器や輸送用機器の伸びが鈍化し、金額ベースでも6月は 微減となった。米国向けが2桁減となったほか、韓国や台湾もマイナスとなった。中 国向けは24.7%も伸びたが、アジア全体では3.8%増にとどまった。米国、アジアへの 輸出数量の伸びは今後、一層低迷する方向にあり、それに伴い鉱工業生産も低下して いく見通しである。

ハイテク生産に連動しないソニーの売上げ 2003-07-28

鉱工業生産によると、5月の電気機械工業生産指数は前年比4.6%と伸び悩んでいるほ か、情報通信機械工業はプラスを維持しているものの、前年すれすれの状態だ。電子 部品・デバイス工業の生産は11.3%増だが、昨年10月の+38.0%をピークに大幅に伸び は鈍化している。このような生産指数の動きからも、ソニーを始めとするハイテク企 業の業績が、先行き悪化しそうだという見通しを与えてくれる。

 電子部品・デバイスが01年第4四半期を底に急回復したにもかかわらず、ソニーの 売上は改善しなかったことは重要である。ソニーは海外売上高比率が高く、国内の生 産回復に連動しにくい側面があることは否めないが、ハイテク産業の生産指数との相 関性のなさはソニーブランドの陰りをあらわしているのかもしれない。

 電気機械や情報通信機械の足取りの重さ、電子部品・デバイスの伸び率の大幅な鈍 化などを勘案すると、今後、ソニーの業績はさらに厳しい方向に進むことが予想され る。ソニーの利益は、クリスマス商戦に当たる10-12月期に偏っており、米国の消費 に依存する度合いが大きい。先週末から、米国では就業児童を持つ家庭に一律400ド ルの小切手が送付された模様。今後、どの程度、消費を刺激することになるかが焦点 となるが、深刻な財政難から各州は歳出抑制や増税に動いており、政府の減税を相殺 しそうだ。ソニーの業績見通しが、米国の消費回復に大きく依存しているようであれ ば、下方修正のリスクは高い。

転機を迎えた株式相場 2003-07-21

 日経平均株価の週間騰落率はマイナスとなり、4月末以降の急速な上昇相場は転機を迎えたようだ。7月第2週の外人買越額は5,561億円と高水準を維持し、7月の買越額は2週間ですでに1兆1,856億円に達し、6月の規模を越えた。これだけ外人が買っているのに、上昇力が衰えてくるのは、いかに売りが嵩んでいるかということだ。これから、外人は長い夏季休暇に入るが、その前に利益を確定しておくだろう。
外人の買い動向をみると、買い越しは年前半に集中していることが、過去の統計から明らかである。米株式相場がもたついていることも、利益確定を促すはずだ。外人以外に買い主体を見出せない日本の株式市場の構造的な問題が、またも暗雲として垂れこめてきた。

株式の強気心理揺らぐ 2003-07-13

政府の公的資金注入や企業倒産件数の減少により、信用不安が一時的に後退した点は98年末以降の上昇と類似しているが、景気動向はまったく違う。景気が底入れしそうであれば、調整が入ったとしても、上昇は持続しようが、今は、景気が下向きになっており、単に、信用不安の後退だけでは、上昇力の持続性には疑問を持たざるを得ない。

 相場上昇の牽引役であった外人(主力はヘッジファンド)は7月第1週、6,295億円買い越した。買い越しは12週連続となり、累計の買い越し額は2兆8,388億円に達した。米国を中心とする世界のヘッジファンドの規模は6,500億ドル(02年)と過去3年で35%も増加し、世界の金融・資本市場を席捲している。日本の株式市場にもヘッジファンドの資金が流入し、相場を好転させたと考えられる。だが、逃げ足の速いヘッジファンドの資金がいつまでも日本に滞留するわけはなく、すでに次の有望な投資先にポートフォリオを組み替えているのかもしれない。

 先週、証券会社の店頭には、最近ではみられないほどの多数の個人投資家で賑わっていた。株式投資から遠ざかっていた個人が、値上がりに釣られて参加してきていることを物語っている。普段、株式に関心を持たない人まで株式に関心を示しだすと、相場は終わりになるケースが多い。 

投機の罠に陥る個人投資家 2003-07-07

 
売買高は5月29日以降、27日連続して10億株超の大商いが続いている。7月3日は20億株を上回り、売買代金は1兆7,154億円に達した。外人買いによる株価のじり高傾向が、尻の重い個人投資家を市場に駆り立ててきたからだ。株数ベース(東証1部)では委託に占める個人比率は6月、45.5%となり、4月の 38.7%から6.8ポイント上昇し、個人が参加してきていることを裏づけている。株価が天井に近いところで個人が参加し、ばばを掴むことがこれまでしばしば見られたが、今回も同じ轍を踏むことになるのではないか。インターネット証券の注文件数が過去最高を更新し、東証の相場情報が遅れるなど、今の株式市場は異常である。株価が上がれば、普通預金に積みあがっている資金を元に、つい株式に手を出してしまうのだろう。金に対する執着が、結局は投機の餌食になり、貴重な預金が失われてしまうことになりかねない。90年代、このような繰り返しであったが、またも投機の罠に陥りそうだ。

米国の無効な利下げ

 米連邦準備理事会(FRB)は25日の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)レートを0.25%引き下げ、年1.0%とすることを決めた。政策金利の引き下げは昨年11月以来であり、1958年以来45年ぶりの低水準となった。01年1月3日に6.5%から6.0%に引き下げて以来の累計下げ幅は5.5%に達した。
 政策金利の引き下げにもかかわらず、25日のNYダウは下落し、債券も大きく値を下げた。

材料出尽くしと収益不安で米株式軟調な展開か 2003-06-23

 5月の米消費者物価指数が前月比横ばいとなったことから、デフレ懸念が後退し米債券相場は下落した。欧州の債券相場も売りが優勢となったほか、利回りが0.5%を下回るまで買われていた日本の債券も大幅な調整を余儀なくされ、19日には一時0.67%まで急騰した。
 だが、OECDの景気先行指数は4月、前年比では-0.2%と昨年5月をピークに低下し続けており、景気先行指数はOECDの景気下降を示している。主要国の債券は売られたが、世界景気の低迷により、債券安は一時的な現象にとどまり、資金は再び債券市場に流れることになろう。

株式市場のバブル化、経済の撹乱要因に 2003-06-16

 日経平均株価は9,000円手前まで回復、3月11日(7,862円)の安値から14.2%上昇した。ただ、上値は重くなってきており、外人買いだけでは9,000円を突き抜け、さらに上伸していくことはないはずだ。外人買いは8週連続の買い越しとなり、6月6日週の買い越し額は5,016億円(約定ベース)と昨年3月8日週以来の高水準。この間の買い越し額は1兆5,580億円と昨年6月14日週までの9週連続の買い越し額(1兆5,402億円)を上回った。
 NYダウは9,100ドル台に回復したが、米経済環境は不透明であり、金融緩和期待と減税効果を織り込む動きとなっている。5月の小売売上高は前月比0.1%増にとどまったほか、6月のミシガン大学消費者センチメント指数は、期待に反し前月比4.9ポイント悪化の87.2となり、個人消費の足踏み状態は続く見通しである。米国経済の低迷を反映して、堅調な米株式市場が息切れすることになれば、日本株の買い余力も衰え、昨年のような厳しい展開になることも想定しておくべきだ。

株式市場、投機がピークに 2003-06-09

 主要国の株式相場は堅調な展開が続いている。日経平均株価は3週連続の上昇で、年初来高値に接近した。NYダウは9,000ドル台を回復し、昨年7月以来の高水準である。国内債券は上昇相場が持続し、欧米の債券相場も底堅い。政府の円売り介入によって、円は対ドルで弱含み、ユーロも1ユーロ=1.17ドルに下落した。
 国内の株式は活況を呈している。出来高が5月29日以降、10億株を上回り、週末には15億株弱と約10年ぶりの大商いとなった。10億株超の出来高は7営業日連続となり、特殊要因を除けば、株式バブルがピークに達した89年12月にかけての8日連続以来だ。低位の鉄鋼やエレクトロニクス関連の出来高が急増し、流動性に主眼を置く投機が市場を支配している。米国株の上昇に伴い、外国人の資金流入が国内株式を刺激しているというが、米国株も経済実態を反映しているわけではなく、FRBの利下げを先取りした投機が市場を席捲している可能性が高い。

資産運用、現金と債券比率の引き上げ 2003-06-01

中小企業の景況感も徐々に悪化しつつある。商工中金の月次景況観測によると、5月の景況判断指数は43.7と2ヵ月連続で低下した。昨年5月に45.6まで回復したが、景況感の分かれ目である50に達することなく低下局面入りしたようだ。前回のピークも49.8と50に届かなかったが、今回はそれよりもさらに低い水準でピークアウトしており、中小企業の状態は厳しさを増してきているといえる。

投機色強まる株式市場 2003-05-26

 日経平均株価は4月第3週以降、5週連続の外人買い越し(6,158億円)で8,000円台に 乗せることができた。ただ、上昇幅は300円にすぎず、売り圧力は依然大きい。リスクの 高い株式を保有できる投資家は限られており、円高ドル安に伴う外人買いが途切れること になれば、反落することになろう。  売買高が高水準で推移していることも不安材料だ。

りそなに資金注入、一時的な癒し 2003-05-17

「りそなホールディングス」は自己資本比率が4%を割り込んだため、公的資金の注入を申請し、事実上破綻した。政府は公的資金の注入を決定したが、300 兆円前後と推計される非金融法人の過剰資産や急激なデフレの進行などから推測すれば、金融機関の大半はどこも似たり寄ったりの状況に陥っているのではないか。長い間、杜撰な経営計画よって自己資本を水増しするなどの放漫経営をしていたところへ公的資金を注入しても、一時的に傷を癒すだけで、傷口は再び広がることになり、行き詰まるのは目に見えている。

実体経済を織り込んでいない債券利回り 2003 年5月11 日

先週、日経平均株価は8,000 円台を4日連続で維持できた。債券相場は引き続き堅調に推移し、利回りは過去最低を更新した。円は対ドルで上昇し、一時、116 円台前半まで進んだ。海外でも株価は強含み、債券相場は堅調であった。ユーロはドルに対して強く、1ユーロ=1.15 ドル台に上昇した。ユーロ圏の景気も低迷しているが、米連邦準備理事会が6日の連邦公開市場委員会で「リスクは経済が弱含みになる可能性があることに重点が置かれる」と当面の政策運営方針を景気配慮型に転換したことが為替相場に影響した。

異常なシグナルを発している米経済統計 2003-05-05

 米国の雇用は引き続き悪化している。4月の非農業部門雇用者は前月比4.8万人減少し、3ヵ月連続の減少となった。非農業部門雇用者は景気の山(01年3月)をピークに減少していたが、昨年5月から8月には増加に転じていた。だが、その後、雇用の足取りは重く一進一退の状態であったが、今年に入り雇用は減少傾向を強めている。
 4月の非農業部門雇用者は前年比-0.3%と3ヵ月連続のマイナスだ。1月を除けば01年9月以降、前年割れとなり、過去にない長期減少である。90年7月をピークとする景気後退では前年割れは15ヵ月だった。70、80年代の景気後退にも経験しなかった雇用の長期減少が起こっている。4月のPMI指数(50%を下回ると景気後退、上回ると拡大)は45.4%、前月比0.8ポイント低下したように、米国の企業経営者マインドは冷えており、雇用の拡大には慎重である。

3月の米設備稼働率、約20ぶりの低水準 2003-04-21

 米製造業の設備稼働率は3月、72.9%と2ヵ月連続で低下した。昨年12月の設備稼働率を下回り、83年5月以来の低稼働率だ。ITバブルの崩壊によって、2001年に設備稼働率は急低下したが、回復力は弱く、昨年の夏以降、再び緩やかに低下している。
 3月のハイテク産業稼働率は62.1%と製造業を約10ポイント下回っており、低稼働率に苦しんでいる。コンピュータ関連は79.0%まで上昇したが、通信は50.9%、半導体等は65.4%と低く、収益が拡大する状態ではない。(来週の週刊マーケットレターは休みます)

実体経済からの乖離が大きい米国株式 2003-04-13

バクダッド陥落にも米国株式が反応しないのは、戦争終結をすでに織り込んでいたことに加えて、米国の短期景気循環が下降しつつあるからだ。OECDの米景気先行指数は2月、129.7と2ヵ月連続で低下した。昨年末には回復しつつあったが、昨年4月の131.8を超えることはなく、失速していきそうだ。ミシガン大学消費者センチメント指数(4月、83.2)や小売売上高(3月、前月比2.1%増)は前月比では上昇したが、センチメント指数の水準は低く、小売売上高も前年比で回復していくかどうか不透明である。

米国景気の悪化 (マーケットレター)2003-04-07

「・・・米国の景気も悪化方向にあり株式は割高だ。3月のISM景気指数は46.2、前月比4.3ポイント低下したほか、3月の非農業部門雇用者は前月比10.8万人減と2ヵ月連続で減少した。非農業部門雇用者の減少に歯止めは掛からず、01年3月のピークから205.3万人の減少となった。建設雇用以外はすべて前月比減となり、米国景気の低迷はほぼすべての分野に波及していることが分かる。雇用者数の減少は消費の削減に繋がり、さらに設備投資に影響することになる。住宅や自動車の需要が伸びきっていることから、金融政策で景気を刺激することはできず、米国の景気回復は容易ではない。・・・」

米国経済、足踏み状態で債券強含みか (マーケットレター) 2003-03-30

 イラク戦争の短期終結観測の後退からドルは主要通貨に対して下落した。急騰したNYダウは28日まで3日続落となり、つれて欧州の株式も売られた。一方、急落の反動から欧米の債券や原油等は買い戻された。市場は戦況に左右されるめまぐるしい展開となった。
 日本株は前週比ではわずかに上昇したが、商いは低調であり、売買代金は26日以降、4,000億円台にとどまった。

原油価格、戦争終結織り込む(マーケットレター) 2003 年3月23 日

原油価格、戦争終結織り込む3月21 日のNY ダウは8,521 ドルと8営業日連続の上昇となり、その間の上げ幅は約1,000ドルとなった。週間では+8.4%と1982 年以来の上昇率だ。19 日から米英のイラク攻撃が始まったが、米英軍のイラクへの進攻が速く、戦争の短期終結観測が強まったからだ。独DAXが13.0%の高パフォーマンスを見せたほか、英FTSE100 も7.2%上昇するなど、世界の株価は軒並み急騰した。半面、債券は売られ、原油は急落、ドルは買い戻された。

原油・金価格の急落 2003-03-17 (マーケットレター)

 3月第2週のマーケットは、2週連続で下げていた米国株式が上昇(前週末比)したことから、ドルが主要通貨に対して上昇した。予想外に上昇していた商品市況は、イラクへの武力行使が近いとの読みから、原油と金価格は大幅に下落した。海外債券相場は週央までは堅調であったが、週末にかけて英・独債は売られた。一方、国内債券相場は週末比では変わらずだが、11、12日と過去最低を更新し、0.71%まで低下した。

1月の機械受注、電気機械受注はピークに (マネーサプライ)

受注総額は前月比+18.4%と大幅に増加した。民間設備投資に先行する民需(船舶・電力を除く)は7.0%増と2ヵ月連続のプラスとなった

2月のマネーサプライと貸出・資金吸収動向

■昨年11月以降、マネーサプライ(M2+CD、MS)は3ヵ月連続で伸びが鈍化していたが、2月は前年比2.0%増と前月の伸びを0.1ポイント上回った。ただ、昨年3月の3.7%増をピークに緩やかに低下している流れは変わっていない。現金と預金通貨の合計額であるM1の伸びは低下し、定期預金等の準通貨のマイナス幅は縮小しているが、M1(336.0兆円)が準通貨(317.2兆円)よりも多い状態が昨年4月以降、11ヵ月続いている。

量的緩和剥げ、2月のマネタリーベースの伸び鈍化

3月4日、2月のマネタリーベース(MB)が発表されたが、前年比12.6%と3ヵ月連続で鈍化した。ピークである昨年4月に比べると、伸び率は3分の一に低下した。01年12に、日銀は日銀当座預金残高を10〜15兆円程度に拡大したことから、MBの伸びは高くなり、02年4月には36.3%に急伸した。昨年10月から日銀当座預金残高を15〜20兆円へとさらに増やし、昨年12月以降、日銀当座預金は上限に張り付いている。が、量的緩和の効果は一巡しつつあり、日銀当座預金が現状の規模にとどまるならば、MBの伸びは低下していくことになろう。

資金運用は株式から債券へ  2003年2月28日

28日の円ドル相場の終値は118円10銭と前週末比55銭の円高となった。日銀総裁に福井氏が内定したことから、金融政策の大きな変更はないと判断、円は一時116円台に上昇した。インフレターゲットの導入に積極的ではないとの見方から、為替相場に影響力の大きい日米の物価格差は引き続き円高に作用する見通しだ。週末にかけては2月の当局の介入が明らかになるなどで118円台に弱含んだ。前週末比、ユーロも対ドルで上昇し、ドルはじり安傾向にある。イラク攻撃にs踏み切った場合、米国経済は消費者マインドの冷え込みなどで、景気の腰折れが予想される。FRBはFFレート(現状1.25%)をさらに引き下げて、金融面から景気を支援することになろう。こうした金利の先行き低下見通しもドル安を誘っている。2月の米消費者センチメント指数は79.9と2000年5月をピークとする悪化に歯止めは掛かっていない。米消費者センチメント指数はすでに9年前の低い水準に落ち込み、消費マインドは戦争突入を織り込みつつある。

景気に反応しない日本株

「・・・・02年12月20日の日経平均株価は8,406円だが、89年末の過去最高(38,915円)に比べ ると、78.4%の減少だ。六大都市商業地地価よりも株価の下落率が小さいことから、 土地よりも株式を売るという裁定が働くことになるはずだ。土地並みに下落すれば、 日経平均株価は6,304円と現状をさらに25%下回ることになる。六大都市商業地の処分 はほとんど手着かずの状態であり、土地の処分売りはこれから出てくるであろう。こ れだけ下落したけれども、土地バブルは完全に弾けておらず、首都圏でオフィスビル 供給が大幅に増大する03年には商業地の下落幅は拡大する可能性が高い。03年9月の 六大都市商業地が前年比13%下落することになれば、ピークの14.1%になる。これを株 価に当てはめれば5,487円となるが、バランスシートの改善が遅れている現状に鑑みれば、想定しておくべき水準だといえるのではないか。「人間の経済」第65号、0 2年12月22日刊)

The Implementation of the WAT-System Building a Smooth Circle of Trust
Rui Izumi/Translation from Japanese: Robert Mittelstaedt Link:http://home.debitel.net/user/RMittelstaedt/Money/watto-e.htm

人間の経済 2003

第77号、03年12月20日発行

PDFダウンロード  PDF版の購読にはパスワードのご購入が必要となります。eWAT_Hawaraでの支払いを歓迎します。メールに添付してください。 eWAT_Hawara でのお支払いをご希望の方はwatbank@watsystems.net までeWatを添付の上ご送信ください。WAT紙券、円貨でのご購入はこちらをどうぞ。
今回は年末の講演会を記念いたしまして印刷版も発行いたしております。
印刷版はゲゼル研究会講演会 名古屋 でもご購入いただけます。

大蔵永常における国用と国産
森野 栄一

財政・金融複合破綻の幕開け
青木秀和

「スタンプ貼付型貨幣証書」発行法案(1933年)の翻訳と解説
泉 留維(いずみ・るい)

「具体的ユートピア」としての連帯経済?
―フランスにおけるSELとRERSの位置づけをめぐって―
川野 英二

第76号、03年10月25日発行

PDFダウンロード 購読にはパスワードのご購入が必要となります。詳しくはこちらをどうぞ

アルゼンチンの交換クラブの変遷に関するメモ
泉 留維(いずみ・るい)

アルゼンチンでは、市民と地方政府それぞれが連邦政府とは全く関係なく、独自に「貨幣」を発行し、危機的な経済状況を自らの手で克服しようとしてきた。市民の取り組みは、交換クラブまたはRGTと呼ばれている。交換クラブは、通貨危機による経済の低迷を背景にし、NPOであるPAR(地域自給プログラム)が1995年に始めた。本稿では、この交換クラブのこれまでの変遷について紹介し、簡単ながらもその破綻の要因を考察する。

地域通貨の諸原理-地域通貨で支え合う温かい活力ある地域社会を-
(地域通貨シンポジウム[韓国光明市、2003年9月25日]における講演、日本語版)
森野 栄一

  • 相互共助の精神の大切さ
  • カネ、カネの風潮
  • 社会の共通領域への関心
  • 地域振興も信頼関係の醸成から
  • では地域通貨とはなんでしょう
  • すべてバランスが大切
  • 地域通貨は個性を尊重する
  • 地域通貨は実質的な民主主義への入り口
第75号、03年9月26日刊

PDFダウンロード 購読にはパスワードのご購入が必要となります。詳しくはこちらをどうぞ

------------------------------------
貨幣改革に対する12の典型的批判と、それへの回答
ヘルムート・クロイツ著 / 朴 勝俊訳
------------------------------------

「利子率の引き下げは需要を増やし、成長を加速させる」
「労働提供者はせっかくの購買力の増加を、利子の減少で完全に失ってしまう」
「人類の欲求は無限だ」
「循環促進措置によって貨幣流通が速くなりすぎる」
「利子率が低下すれば借金が増加する」
「利子率が低下すれば貨幣が外国へ逃避する」
「今どき貨幣を退蔵する者はいないのでそれが問題ではない」
「循環促進措置で最も負担を被る現金は、現在大きな役割を果たしていない」
「循環促進措置を現金と普通預金に課せば、人々は金塊などを保蔵するだけだ」
「利子が低下しても、利潤が成長の原動力の役割を担うようになるだけだ」
「成長の停滞は文明の後退だ」
「利子を引き下げても環境問題は解決できない」

 これらがHumanwirtschaftの唱える貨幣改革に対して、しばしば繰り返し唱えられる多くの反対意見の主要な12点である。Helmut Creutzは、入門のための短い解説のあと、それらひとつひとつに答えよう。

------------------------------------
年金改革のための資料―カリフォルニア州の「ハムとタマゴ」計画―
泉 留維
------------------------------------

国民年金や厚生年金のずさんな管理・運用、負担の不公平感などによる年金保険料の不払い、そして政府財政の逼迫が、将来に向けての年金に対して大いなる不信感を作りだしている。近々、大幅な年金政策の転換を迫られるであろうが、その際、年金行政のコスト削減、資産の差し押さえなどを含む強制徴収や税金による補填、給付額の減額程度で問題の根本的な解決につながるのであろうか。本稿では、年金改革の資料として、主として1930年代にカリフォルニア州で議論となった"ham and eggs"計画について紹介していく。

第74号 03年9月15日刊

PDF版ダウンロード この号はパスワードの必要はなく、公開されています。

目次
利子ともインフレとも無縁な貨幣(第一部、第一章)
マルグリット・ケネディ
今井 重孝 訳

はじめに
第Ⅰ部 問題とその解決
第1章 お金の機能に関する基本的な四つの誤解
 第1節 第一の誤解--成長には一種類しかないという誤解
 第2節 第二の誤解--お金を借りたときだけ利子を支払うという誤解
 第3節 第三の誤解--現在の貨幣システムはすべての人に平等に利益をもたらしているという誤解
 第4節 第四の誤解--インフレはどの貨幣システムにもついてまわるという誤解

第73号、2003年8月30日刊

PDF版ダウンロード 71号以降の購読にはパスワードが必要となります。

  • ゲゼル研究会講演会 -グローバリズムと自立経済、地域化という選択肢肢-
    詳細案内
  • TR(交換リンググ)における融資の成立条件とその実現手法
    森野 栄一
    交換リングにおける融資?
    融資とカラ記入の問題
    交換リングにおける最も単純な貸出手法としての町田大福帳「花」券
    始めの一歩
第72号 2003年7月7日刊

PDF版ダウンロード購読にはパスワードが必要となります。

  1. 高齢者を支えるための「時間儲蓄」に関する問題の考察
    Chen Gong, Du Peng, Chen Yi "A Think on the Time-saving Problem of Supporting the Old"
    泉留維・耿莉莉訳
    (本稿は、中国本土における時間貯蓄の取り組みに関する論文の全訳である。現在のところ確認できる範囲では、中国語で書かれた唯一の地域通貨に関係する論文である。時間儲蓄は、1998年頃から江蘇省と上海市で実験的に実施されはじめ、現在では、中国各地で取り組まれている。
  2. TR(交換リング)の基本性格について 森野 栄一
    地域通貨のシステムには幾つかあるが、多角間清算システムを本質とするものには、TR(交換リング:ドイツ)、sel(セル:フランス)、LETS(英国、北米ほか)、大福帳(日本)などがあることはよく知られている。多角間清算によって、バーターの取引が当事者双方にとって売りと買いが同時に成立しなければ成り立たないという難点が回避され、貨幣導入と同様に売りと買いは分離され、別の時、異なる場所で売りや買いが成立することとなった。ただしこのシステムは貨幣が介在する事例と異なる性格を有している。その仕組みは非常にシンプルである。
第71号 2003年6月15日刊行

PDF版ダウンロード 71号以降の購読にはパスワードが必要となります。

  • 地域通貨と地域経済-地域通貨という考え方に温故「創」新を見る-森野 栄一
    自己完結度の高い地域への構想力-二宮尊徳の決意に学ぶ-
    こうした信頼に基づく地域づくりに地域通貨が貢献しうるにしても、それだけでは「楽」ありといえども、肝心の「安」がじゅうぶんでなければこまります。地域通貨と併せ、地域の「利」を得て、自立した地域経済を展望することも重要です。そこで、地域振興といえば、昔から二宮尊徳を置いて他にはありません。彼から学ぶものはないのでしょうか。等
  • 中国の糧票についてのメモ 泉 留維
    中国では、都市住民は1990 年代初期(北京市内では1993 年)まで、主食の米や小麦粉等を買う際には「糧票(リャンピャオ)」が必要であり、この糧票は1949 年の建国時から発行されていた。糧票には、米や小麦粉といった交換対象が限定されたものから、食料品一般と交換できる比較的汎用性の高いものまで様々な種類がある。また、有効範囲も全国どこでもというものから特定都市、北京市や天津市といったものまで様々である。
第70号 2003年4月15日刊行

Bush, M and G, Smith (2003) "Community Development Banks Substantially Outscore Other Banks in Serving Low-Income and Minority Communities",REINVESTMENT ALERT (Woodstock Institute), No.19.

「コミュニティ開発銀行は持続的に低所得者やマイノリティのコミュニティに対する金融サービスおいて他の銀行よりも優れている。」      

翻訳:泉 留維(いずみ・るい)

第69号 2003年3月15日刊行

乾 淑子、「環境保護ともう一つの経済システム」

第68号 03年2月10日刊行予定

 

  • 共通割引券型地域通貨の可能性
    - 「Y-GAG通貨論議」、ウラシマユージ、川野英二、森野栄一 -
    - 「Y-GAG通貨、概念図」、佐藤浩一 -
第67号、2003年

  • 韓国における地域通貨の現状」 全 定根  
    韓国における地域通貨各団体の詳細な情報が入っているため、このファイルにはパスワードがかかっています。下記に、所属、お名前、メールアドレスを頂戴したいと思います。折り返しパスワードをお知らせいたします。
    GRSJ info<info@grsj.org>
  • ゆりの木商店街で地域通貨ピーナッツ学習体験案内 村山 和彦
第66号、2003年1月10日刊行

  • Seyfang, G. and K. Smith (2002) The Time of Our Lives: Using time banking for neighbourhood renewal and community capacity building, London:NEF.邦訳サマリー:泉留維(いずみ・るい)
  • 哲学 への いざない (13) 岩田 憲明

2003 Quote of the day

  • 2003-12-07「物理学の教科書が学生から相対性理論や量子理論の革命を隠し、アインシュタインやプランクの支持者たちが追放者のように扱われる世界を想像してみよう。それはたいそう異なった世界であるだろう。その積極面はわれわれが「爆弾」をもたないということだろう。しかし、マイナス面は、レーザーや電磁波もなければ、あるいはより大事なことだが、われわれが住んでいる複雑な宇宙についてこうした諸革命が与えてくれた深遠な知識がわれわれには欠けているということだろう。幸いなことに物理学の教科書はそうではない。けれども、おそらく経済学の教科書はそうである。」(スティーヴ・キーン、「均衡と一体への固執」)
  • 2003-11-28大蔵永常、『広益国産考』、岩波文庫より

    「國産を拵ふる心得の辨余嘗て諸國遊歴せし折から見もし聞もせし事ども多かる中に、或領主の國にて産物の基を開かんとて、役所をたて奉行を置き、それそれ掛りの役人有て、いろいろの物を仕立て給ふ事あり。其一二をあげて云はんに、紙を漉かんとて、新に紙漉場をつくり、他所より楮を買入れ、餘國より漉人(すきて)を雇ひ、手傳の者をかかへ、漉立てさせたまへり。是は利を起すに似たれども、却りて損毛多し。夫紙を漉く事は農人農業の隙に稼ぎとするもの也。先十月十一月までに麥をまき仕まひて、夫より冬紙とて漉きはじめ、翌三月四月末麥刈頃まですく也。三月頃より水暖になりて紙の出来あしくなるゆゑ也夫より麥収納田植草手夏作にかかり、又八月より漉きはじめ、九月中頃まですき収め、稲収納にかかり、前に云ふごとく十月迄に麥を蒔き仕まひ、霜月より又すきかかり、春三月までに漉く事也。紙をすき出す國にては何れもみなかくのごとく農業の隙々に漉く物なれば、家内の人數少なくては漉く事できず。人を雇ひ入れては引合ふ物にはあらず。故に紙の利分といふは亭主壱人其日の働き賃百五十文にもあたり、妻女の賃七八十文、老父母五十文づつ、十四五歳ぐらゐの子供三十文位、合して三百文か四百文位の利益にあたる也。紙を漉かざる農家の男は家内縄をなひ莚を織り、女は蠶をかひ糸をとり、綿をつむぎ、機を織り、その外種々其國所にて農業の隙々の働きある物と同じ事にて、農隙(のうげき)に家内打ちより働きて賃を取るばかりにて、外にもふけとてなきもの也。故(かるがゆゑ)に人を雇ひ漉かせては引合ふものにてはなし。農家にて漉立てても捌口不自由にては益と成らざれば、其とき領主より買上場などを立て給ひて取集め、都會に出して賣捌き給はば、其ときは御益にもなるものなり。故に領主方にてすきては却りて損毛なりといへるは此譯なり。又一つに蝋燭鬢附油になる櫨の樹を植ゑそだて、國用丈も賄ひ、其餘國産になさんとて、實まきを仕立て、山をひらき、不毛の地をしつらひ、植ゑ給へり。されど實の撰びなく接木にあらざれば、三四年して實少々づつ生(な)るといへども少さく、且ならざる木多く、物入に引くらぶれば大ひに損毛なりとて退屈おこり、又其奉行轉役し、其跡役の人は心にそまずなげやりになりて、終に廢する也。或は勝手かた重役先役の仕かけたる事は廻り遠く、かつは物入等も多く別のことを思ひたちたらんがよかるべしとて、櫨の事は再び沙汰もなく廢して、その弊のみをかぞへ、罪をその者と土とに譲りぬる事あり。愚案に是等は利にのみ委しくして、法を知らずとも謂ひつべし。」

 

  • 「・・・対外債務については、いまこの瞬間、ブラッセルでヴァン・ツィーラント氏と交渉で復興のための借り入れ120億を申し出ているようにみえるシャハト博士が新生ドイツには借款の必要性はなにもないと述べているのは当然のことである。すなわち、ドイツはただ数多くの生産物を他国と交換したいだけである。自国の商品に対して同程度の消費したいと望むものを交換したいだけなのだ。

    わがプルードンは1848年にこういっていた。

    「ある国の生産物のある量を他国の生産物の等価な量と交換するためにいかなる貨幣も必要ではない。これは、貨幣がある国の生産物のある量と他国の生産物の等価な量と交換するのに必要ではないことと同様であるし、また、貨幣が二人の当事者の間で商品のある量を他者の商品のある量とバーターするためにも必要がないということだ。『交換券Bond'Echange』があれば十分なのだ。

    我々に事前の貨幣借入れを介入させることを促す銀行という悪質な周旋屋はそこでなにをすることになるのか。なにも種を蒔かなかった場所で刈り入れもせずに、寄生的な先取りをするのだ。

    ところで、この「交換券」こそが、生産者自身が、また彼らだけが確立する根拠こそが生産者の関心をひく。生産物を抵当とするproduitjustifie「交換券」でないものはなんであれ、担保を欠いたsansjustification「アッシニヤ」でしかない。・・・」(ジャン・バラル)

  • 2003-10-04全国的な年金運動が逆風にあっているとき、カリフォルニア州では再び、新たな、より複雑な万能薬、「ハムとタマゴ」計画が生み出された。その1938年版では、「ハムとタマゴ」は50歳以上のすべての失業者に「毎週木曜日に30ドル」の支払いを準備した。そのもっともユニークな性格は、それが模倣したアルバータ州での経験のように、あらゆる支払いが代用貨幣でなされ、流通させる目的で一週に一度スタンプの貼付が必要であるというものであった(Hollywood,CaliforniaPensionPlan,1938)。この計画の発案者はロイ・G・オウエンスとロバート・ノブルのようである。1937年遅く、ハリウッドの広告業者で才能あるプロモーターのウィリス・アレンがキャンペーン・マネージャーとなり、元リーダーのタウンゼントとシンクレアらからなる11人の理事会が組織された。1938年の夏までに、ほぼ80万人のカリフォルニア州民が11月の選挙のさいにハムとタマゴ計画を州民投票にかけるよう憲法修正を求める請願書に署名した。一方では、元リーダーのエピックとタウンゼント、それにシェリダン・ダウニーが、大統領の反対にもかかわらず、新たな人気取りを望んだが、上院議員の再指名の争いで上院議員マクアドーに敗れた。民主党の知事候補クルバート・オルソンはタウンゼント博士がこの計画に反対したにもかかわらず、これに賛成した。選挙でダウニーやオルソン、その他の民主党員は勝利したが、ハムとタマゴ計画は10万票の相対的に小差で否決された。
    僅差の評決はハムとタマゴ計画の推進者に1939年11月の特別選挙で再び挑戦させることになる。このときはより考え抜かれたプランが発表された。欠点ありと言われていたいくつかを取り除き、発行される代用貨幣の使用を促すよう設計されていた。しかし、老人たちは、また落胆を運命づけられた。前年の僅差の記憶が、より徹底した反対を組織させ、辛辣なキャンペーンののち、ほぼ二対一で勝利したからだ。
    (JosephE.Reeve,Monetaryreformmovements,1943)「ハムとタマゴ」計画は人間の経済75号に掲載されています。
  • 2003-10-01「私の見解では(ケインズの)「金利生活者の安楽死」はこれらすべてに対する厳密な回答であり、公正な資本主義に対する批判がもたらしたものである。利子から解放された経済は集合主義に対するオルタナティブではないのか。・・・」(ロイ・ハロッド,Roy Harrod, Dynamische Wirtschaft, 1949)
  • 2003-09-30「上記の諸示唆についての簡潔な議論で示されたのは、誰も満足のいく、確実なゼロバリア及び流動性の罠の問題を低コストで解決しうる「王道」を与えていないということである。
     グッドフレンドやブイター及びバニギルツォグロウが、その実現がゼロ・バリア問題の確実な解決でありうると主張するのはシルビオ・ゲゼルの理念である。本位貨幣並びに帳簿貨幣への課税によって、技術上の諸制限からゼロ・バリアの制約が存在するが、中銀によってマイナスのエリアに切り下げられうるのである。名目利子率の低位バリアは流動性のわなにとって必然的な条件であるが、流動性への課税によって最終的には確実に除去しうる。・・」(Norman Ehrentreich, Geldpolitik angesichts der Nullschranke der Nominalzinsen: Ein UEberblick, Zeitschrift fuer Sozialoekonomie 136/2003)
  • 2003-09-20「科学はすでにその役目を果たした。もし我々が物理的で傷みやすい富のよりよい配分を望むのであれば、これまでその目的のために用いられてきた諸手段よりもよい分配手段を見いださねばならない。別言すれば、貨幣システムをば、生活の物理的諸要因に関する現代の知に対応したものに改革しなければならない。正当化できぬ、全く異質な諸機能に加えて、所得分配に影響を与えているのは貨幣であるからである。富の収入が複雑な現代の諸方法によって生み出されるかぎりは、そしていっぱんに、種の時期から収穫までの、また、ある意図の開始から達成までの長い期間、貨幣ないしなんらかのその完全な等価物がこうした機能を果たさなければならない。必要なことは貨幣が正当な目的以外のどのような目的にも使われないようにすることである。」(Frederick Soddy,The inversion of science,1924.)
  • 2003-08-25住基ネットが本格稼働するようですね。そこでひとつ。

    「理想的な圧制はその犠牲者がそれと分からず自ら管理されるものだ。したがってもっとも完璧な奴隷とはこの上なく幸福に、かつそれと知らずに我が身を隷属させる人たちである。」(ドレスデン・ジェームズ)

  • 2003-07-24「諸国が豊かになるほどに、正貨なしで済ます状態となる。なぜなら誰にとっても正貨が交換券という名の一片の紙券によって表現されうる世界が存在するからだ」(ボアギュベール)
    昔の話ですので、ここで正貨とはespeces、貴金属貨幣の意。
  • 「交換銀行の名の下に知られている諸商業団体の基礎に 役立つ根本理念を定式化した名誉はマルセイユのマゼル 氏に属する。ひとがいやしくも彼に異議を申し立てようとす るのは看板でである。マゼル氏は1818年にその理念を 抱いていたし、1829年から、マルセイユやパリ、ブリュッ セルで交換銀行を設立した。彼はこうした種類の機関の もっとも熱心な推進者であり続けた。」 (Alfred Darimon, De la reforme des banques, 1856)
  • quote_of_the_day230703 Date: Wed, 23 Jul 2003 12:03:03 +0900 From: Morino,Eiichi 数年前にイタリアでSIMECというオルタナティブマネーを始めたGiacinto Auritiの 文章から・・・

    「貨幣価値をそのリザーブを使って正当化しようとの議論には深刻な欠点がある。なぜなら、価値の物質主義的概念に基礎を置いているからである。上記でわれわれが説 明したように、価値は物質の所有ではなく、一時的な関係とみなされるからである。 なぜならそれは常に予測や予見からなっている。ペンが価値を持つ場合、われわれは 書くということを予測する。貨幣もまたわれわれが購入することを予測するがゆえに 価値をもつ。通常、黄金の価値は金属の属性をもつものとして考慮され、従って、そ の「内在的価値」という誤った概念を登場させた。しかしどんな物とも同様に、黄金 はそれが価値をもつであろうとの同意を得てきたから価値をもっているのである。金 属が伝統的に貨幣象徴とみなされてきたために、生みだされた価値が慣習上金属に付 与されてきたのである。」(Giacinto Auriti)

  • quote_of_the_day220703 Date: Tue, 22 Jul 2003 11:29:47 Morino,Eiichi おそらくは地域通貨の淵源の一つである フルクラン・マゼルの宣言の一部を引用 しておきます。 ・・・

    貯蓄は死をもたらし-交換は生命を与える

    宣言

     公衆の理性が真剣に進歩の諸手段の研究に専念しており、 交換のシステムが広範な基礎の上で、有利な諸条件のなか で実践に移されねばならないようにみえる今日、もはや私 には沈黙を守ることは許されない。

     交換の理論の最初の提起者であり、1829年以来、私 はある協会によって我が国の厚生を現実化しようと企て、 その支店は少なくとも6か月のうちに我が国境を越えて広 がり、商業企業の観点からみて驚くべき結果をみた。しか し、その生成が成熟することはなかった。フランスは人間 的な進歩を開始したが、けっして十分な準備ができている わけではなかった。そしてもう一度間違った方向へと向か い、明々白々たる真理の地平を知ることがなかった。私の 理念に広がりや、それに含まれる、さらにいうならその論 理の力やその流れが要求する詳細を与えず、むしろ私はじ ぶんの仕事を中断した、待つためである。

     その後われわれは十分に前進した。誰もが時は来たとい う。交換とその、掲げられた旗幟の最初の擁護者は実践の 場に呼び戻される。私はここにいる!  かつて我が著作で定めた以上の確信をもって、私は我が 周囲にあらゆるその理念の支持者たち、未来の闘士を集め る。かろうじて信仰をもつ人は、これらの人々が加わらな いとあえて告白するであろうか。

     私は真理の理念である交換を宣言する。・・・

    (フルクラン・マゼル、『交換の一般協会約款』、1849年) ・・・

  • 2003-03-24「この世界は厭わしい。愛することも見ることも能わぬ。いつの日か私が所有者であるなら、神と人間たちを作り出すであろう。貧者たちはどこでであれ、私を許すのだ!」(P.J.Proudhon, Theorie de la Propriete.『所有の理論』、これは遺作3部作の一つ)
  • 2003-03-08「それにしても、人々の決定がいかようのものであろうと、我々は事態を憂慮せずにおれる。個人はちっぽけなもので、ある点までは事態の進行を妨げるのは彼らにかかっているが、それをなしながらも彼らは自分たち自身を傷つけるだけである。人類(HUMANITE)のみが偉大であり、間違いを犯すことがない。さて、人類の名において、人類はもはや戦争を望まないということができると思う。」(P.J.プルードン、『戦争と平和』より
  • 2003-02-06 全 定根、「韓国における地域通貨の現状」
    「人間の経済」、第67号、2003年2月6日刊行予定)より
     韓国における地域通貨は、ちょうど1997年のIMF事態の危機を迎えて、全地域での 経済自立及び経済活性化そして失業救済等を目的に始まっており、現在は地域共同体 の再構築やコミュニケーションの活性化 又は相互扶助等の多様な目的をもつ地域通 貨が2002年末現在、研究中のところも含め全国約20ヶ所のところで行っている。そし て現在全国の所々で地域通貨に対する関心が高まり、その運動や導入を始めようと慎 重に研究したり、試みているところも多い。しかし地域通貨が当初の意図通りに行か なく、活性化されていない地域共同体もあちこちある。これはつまり地域通貨を始め る前に十分な対話や討論そして実験等を経ないで急いで手がけたので、結局、開店休 業になったわけである。そして地域通貨の種類もLETS型が多く、又LETS型としても、 通帳を使用することなく取引のすべてを事務局か運営委員会に電話をかけて知らせる 形態を取っていた。つまりサービスを提供したい側とサービスを提供してほしい側、 また事務局のスタッフが互いに大変面倒で繁雑な作業を要求された。唯一、通帳を 使っていて盛んになっているところは、忠淸道にある大田市の「HANBAT LETS」であ る。そして時間を利用したボランティア通貨や教育通貨もある。
  • 2003-01-15: 「われわれの誰にとってもおそらく十分には明らかでないこと は諸個人やとくに個々の消費者にとって 企業の行動との共謀の 程度である。・・・我が国のほとんどの人々、またどうやら 『先進国』であるらしい世界の人々はその衣食住のすべてを生 産し提供することを企業に委任してきた。これにともなう問題 は自然自体やわれわれの自然の利用を懸念することがわれわれ の委任状の保有者によってではなく、われわれ自身によって実 行されねばならないということだ。実行することなしに心の有 り様や価値観を変えることは受動的な消費生活の別な仕方の無 意味なぜいたくにすぎない。実際、『環境の危機』は個人的に かコミュニティにおいてか、人々が配慮もなしに与えてしまっ た委任状の責任を果たす場合にのみ解決されうる。もし人々が その経済的な責任のかなりな部分を自分自身に取り戻す努力を 始めるならば、彼らが見過ごすことなく最初に発見することは 『環境上の危機』がこんなことではなく、われわれの環境や近 隣の危機でもなく、個人や家族のメンバ、コミュニティのメン バ、市民としてのわれわれの生活の危機であるということであ る。われわれが『環境上の危機』をもっているのはわれわれが 食べたり、飲んだり、働いたり、休息したり、旅行したり、ひ とりで楽しんだりすることでわれわれが自然や神が与えた世界 を破壊している経済に同意してきたからである。」 (Wendell Berry)
  • 2003-01-14: ・・自分の意のままになるNPOづくりを行政が仕掛けることは、NPOによる社会監視、新たな社会ニーズの発掘や社会サービスの提供といったNPO本来の機能を失わせることになる。しかも、行政とNPOの協働自体が歪められることにもなる。行政はコントロールできるNPOを作ろうと考えたりしないこと、市民側もそういう『官製NPO』を作ることに荷担しないことが求められている。良かれと思ってやることが、実はNPOが活躍できる市民社会を阻んでいるのである。」(「NPOってナニ? 第11回、官製NPO」、「おうみnet」第33号、2003年1月、P.1)
  • 2003-01-14: 「社会経済における流通はなにに基づいているのか。-貨幣。
    どのような原理がそれを動かすのか-貨幣。
    生産物に市場の門を開けたり閉めたりするのはなにか-貨幣。」
    (ピエール・ジョゼフ・プルードン)
  • 「貨幣はプラスの利子に導く3つの優位性を有している。
    1、貯蓄手段としてきわめて適しており、いかなる保蔵のコストも発生させない(ゲゼル)。
    2,それは貯蓄手段として高度な流動性価値を有してもいる(ゲゼル/ケインズ)
    3、他の交換手段、交換手法よりも格段に優れた取引コストの優位性をもつ(ゲゼル/ズーア)。これらの卓越性は貨幣を『交換の王座』(プルードン)につけ、貨幣に市場におけるジョーカーの地位を授与する(ズーア)。」(Klaus Schmitt, Geldanarche und Anarchofeminismus, 1989.)
  • 2003-01-12 :21世紀になったというのに、人を権威主義的に支配する左右のおぞましい傾向が目に付きます。
    ゲゼルの同志であったハンス・ティム「我々は柵のなかに押し込められたいかなる群衆にもなりたくはないし・・・また人種的ないし民族主義的集団をも望まない。」(H.Timm, "Zur Kritik der Freiwirtschaft", in "Die Freiwirtschaft",1925.)
  • 2003-01-12 アインシュタインで思い出しましたので、彼の文言をひとつ Morino,Eiichi

    「私はシルビオ・ゲゼルの魅力的な文体に熱中した。保有することが許されない貨幣の創設は所有をば別の本質的な形態で作り上げることに導くであろう。」(アルバート・アインシュタイン)[E.H.Schnell, Kapitalismus und Freiwirtschaft,1947, S.146.]

  • 2003-01-11戦争が近づいていますね。 どんな理屈をつけるにしても、戦争が強者による弱者から略奪に 変わりはないのでしょう。 そこで、経済学者、ヴィルフレート・パレートの文言をひとつ。 Morino,Eiichi

    「歴史のどの時期でも・・・われわれはやり口の似た事実に気づく・・・それは一定の人間が他者 の財を領有するために策略を使うことを可能にするものだ。われわれが変わらなさとして主張しうるのは、人間の活動が二つの異なった仕方で行使 されることを歴史がわれわれに明らかにしている ということである。生産ないし経済財の加工にこだわるか、あるいは他人が生産した財をs領有することに執着するか、である。様々な人々の間で、 戦争は、古代ではいたるところで見られたが、強者が弱者の財を領有することを可能にした。そうした人々の間では、弱者から略奪することは法によるものであり、別の時代には革命によるものであった。」 (V. Pareto, Manuel d'economie politique,1909)

  • 2003-01-10 Morino,Eiichi

    「現在、我々は"国家債務"にかかる利子を一日に百万ポンド近く支払っているが、その約三分の二は銀行が保有している。この利子が支払われる"元本"のほとんどは戦争の期間に帳簿記入で創造されたものであり、けっして現金のかたちで存在していたものではない。」(C.F.G.ギャロウェー、『豊穣の中の貧困』におけるペス・ヴィック、『国家債務』からの引用の重引。sans date. 戦前の書物です。)

  • お年玉QUOTE レオン・ワルラスもこう言っていました。 Morino,Eiichi

    「我々が享受している民主的で議会制の国家がこうした活動の水準にあるにしても、しかし経済的なまた社会的な理論の価値がそれが持つ機会には必ずしも依存していないとか、あるいは直接的には実践されないということが真実であると私は考えない。紀元2ないし3世紀のストア学派の何人かの哲学者は奴隷を解放するための道と手段とともに、奴隷制なき社会状態の厳格で正確な定式を与えたが、その計画がローマのあらゆる社会組織と矛盾することを人々に示し、どのような場合にもけっして適用されることはないであろうと主張する見事な役割を果たしたとき、短期的にみて人々が事物の秩序に満足する理由をもったにしても、そのことは彼らが真実と将来をもつのを妨げなかったのである。」(Leon Walras, Economie sociale,1885.)

  • 年始QUOTE 民族とはなにかに、年頭に当たり、思いをいたしておくのもいいかもしれません。 そこで、グスタフ・ランダウアー、「民族問題に関して」、1915年に言及したトマス・ケラーの論文から一節を。 Morino,Eiichi

    「ランダウアーは民族の概念を実体からみる観点から解放した。民族は『ひとつの多様な関係』であるので、それは絶対性でありえず、その個性は一個の文化領域を形成するあらゆる諸民族との関係のなかでのみ決定される。それ自体として民族は存在しない。またひとつの民族の内部では異質な諸要素からなる、連合的な構造による関係性が形成されねばならない。こうした関係はさまざまな信念や確信による内部的な差異化である。人種ではなく、いわゆる関係をもつ個性や『類似性』、『差異における等価性』が民族を形づくる」(ThomasKeller, Die Personalismen der Zwischenkriegszeit und diedeutsch-franzoesischen Beziehungen: Wider die deutscheKontingenzscheu.)

  • 年末QUOTE 02年もそろそろ終わりですね。今年一年も全国各地の 地域通貨の関係者の皆様にはたいへんお世話になり ました。新しい取り組みがぞくぞく登場すると同時に、 そうした取り組みがさして話題にもならぬようなかたちで ごく当たり前に登場してくる時代になりました。 その現場に居合わせていただく喜びのなかで体感 してきたものは、行き詰まったこの国の形式的な「民主 主義」ではなく、現実の多様性を尊重しあうなかで連帯 関係を築き上げる実質的な民主主義の形成が始まって いるのかなというものでした。 地域や地域主義、分散型の社会経済などが語られはじめ ました。19世紀から欧州で始まった人格主義personnalismeや 連合主義の哲学や思想がこれまでのように無視されるのでは なく、現実のなかで消化されてゆく時代がくるのかなという感じ がしています。 そこで、アッティリオ・ダネーゼの論文から・・・ Morino,Eiichi

    「実際、もともとの民主主義システムはどちらかといえば量や 多数性、数字上の平均を偏重するものである。ひとが形式的 な民主主義から実質的な民主主義に向かって進化していき たいと感じるのはそのためである。エティエンヌ・ボルヌはこう 述べていた。『人格主義と民主制は相互に、事前に調和がある わけではないが、弛緩することなく調和を確立し、再確立する ものだ』と。そしてそのなかへと新-人格主義はかけがえのない 貢献をもたらすことができる。 -人格主義的民主制のために- 人柄(personne)を語ることは多元性(pluralite)を語ることと同じ ことである。人格主義は融通の効かない全体を包摂するような 仕方で市民社会を組織しようとは思わない。反対に、ありうべき あらゆる領域を保持することを望んでいる。 ムーニエの意図しているところは民主主義に実質的な中味を 与え直すことである。形式的で量を重んずる民主主義、それは 1789年のイデオロギすなわち個人主義と抽象化の非嫡出の 成果とみなされるが、それは少なくとも間接的な仕方で、貨幣が 支配する王国のなかで、自由と内発的に動き始める力を押しつ ぶしている。・・・」 (Attilio Danese, Critique de la democratie formelle et quelques idees neo-personnalistes pour l'avenir europeen)

このアーカイブについて